2.言霊の力
「どうじゃ似合うかの?」
服を試着した少女の姿をした神様はテンションマックスでとても楽しそうだ。
「……いいんじゃないですか?
もうどれでも……」
かなり長いこと買い物に付き合わされて俺はヘトヘトだ。
「そうかそうか
ではこれも買っておこう
ふむ……あとこれも良いな」
恐らくこの後、家にこの大量に買い物した服やら家具が届くだろう。
「何を悩んでおるのじゃ?」
とエアリスは心配して声を掛けてくる。
「いやまぁ仕事とは関係ないんですけどね?
何かを忘れてる様な気がして……」
こうして買い物をしているとまた何かを忘れた気がして不安になる。
「そうか……よし!!これくらいで良いじゃろ
帰るぞ神無!!」
「……へいへい了解です」
俺は何かを思い出しそうだったが気にせず帰ることにした。
「これがお主の家か?」
街から少し離れた山の麓にある小屋に入る。
「ずいぶんとボロくて小さいのじゃな」
中に入り戸棚を横に動かして壁に埋め込まれた板を外すと液晶パネルがあり、顔認証とコードを入力すると小屋の中央の地面がスライドして地下へと続く階段が現れた。
「なんなのじゃこれは……」
地下に入るとその先にエレベーターがあり、そこからまた上に上がると俺の家に到着する。
「おぉ〜広いぞ!!
神無!!お主の家は妙な作りをしておるな」
とエアリスは大喜びしている。
「エアリス様の部屋は一番奥の部屋です。
荷物は届き次第そこに入っていきますから」
そう言って俺はエアリスを部屋まで案内する。
「アリスで良い。
人の姿である時は灰崎 有栖と言う名で通しておるからの
あと敬語もなしで良い。」
と言うので俺はお言葉に甘えることにした。
「わかった
これからはアリスと呼ばせてもらうよ」
と言った瞬間、玄関のベルが鳴る。
この家を知っているのは数えるほどしかいない筈だ。
恐る恐る小屋に仕掛けられた監視カメラで外を覗くと、ニコニコした顔で凛が立っていた。
「……そうか
忘れていたのは買い物のことだったのか」
仕事のことですっかり忘れてしまっていた。
あるいは無意識に忘れようとしていたのかもしれない。
「神無?早く開けて?」
と優しい声が聞こえてくる。
それが逆に怖い。
スマホの方にも中に入れろと言うメッセージが山ほど来ていた。
「アリス……少し部屋の中に隠れていてくれないか?」
「何故じゃ?
まぁ別に構わんが」
と言ってアリスは部屋の中に入る。
俺はとりあえず凛を家の中に入れて土下座した。
その後1時間ほど凛に説教された。
そしてこれで許してもらえるという所でアリスが部屋から出てきてしまった。
「まだか神無?我はお腹が空いたぞ?」
最悪だ……
「神無……この子は誰なの?」
何故かさっきより怒っている凛。
「仕事で預かっている子供……かな?」
嘘は言ってない。
まぁ言ったところで凛に嘘は通用しないので意味はないが。
「へぇ……この子と一緒に住むんだ?
二人きりで」
するとそんな様子を見ていたアリスが歩いて凛に向かって話しかけた。
「仕方ないの……子娘よ
もう夕暮れ時じゃ……そろそろ『帰れ』」
俺は凛がアリスに怒って手を出すのでは無いかと警戒したが、凛はアリスに何もしなかった。
「わかった……」
ただそれだけ言って帰って行った。
「全く……騒がしい娘じゃったの……」
と言ってリビングのソファーに座るアリス。
「……それがアリスの力か」
アリスは恐らくなんらかの力で強制的に凛を帰らせたのだろう。
「そうじゃよく気がついたな!!
我の言葉は意思をも捻じ曲げる
故に我の命令は絶対なのじゃ!!」
フフンッと自慢げな顔をするアリス。
「なるほど……
言葉で相手の意思を捻じ曲げるのか
とんでもない力だな」
と言いながら俺はキッチンで料理を始める。
「我はデザートにプリンを所望するぞ」
とアリスは晩御飯の買い物でついでに買ったプリンを楽しみにしている様だった。
こうして見ると本当に12歳くらいのただの少女に見える。
中身は神だけど……
「わかってるよ
そんじゃ晩御飯にしようか」
とりあえずアリスと俺は晩御飯を食べ、腹を満たした。
「んーんまい!!
お主の料理もこのプリンとか言う食べ物も絶品じゃ
もう一個プリンを持ってきてくれぬか?」
「プリンは1日一個だ
それと食べ終わったら歯磨きをきちんと済ませて置いてくれ」
そう言うとアリスはムッとした顔をする。
「まったく仕方ないの……
『プリンを持ってこい』!!」
その瞬間俺がキッチンの買い物袋に向かったことでアリスはニヤニヤしている。
「ほら歯ブラシと歯磨き粉だ
これを持って洗面所に行ってきな」
と俺はアリスの目の前にプリンではなく、歯磨きセットを置いた。
するとアリスは今まで見せたことのない真剣な表情を見せる。
「……お主何者じゃ
我の神言はその者の存在に語りかけるゆえ耳を塞ごうと命令は絶対の筈じゃ……」
「……本当に何者なんだろうな」
とだけ言って俺は食器を片付け始める。
その後、アリスは何か考え込んだ顔をしながら部屋に戻って行き俺達はそのまま就寝した。




