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よくわかんない短編とか

黒猫とボクと夢現

作者: シオン

1000文字チャレンジとして書いたもの

黒猫が目の前を過ぎると不幸が起こる。こんなことを言い出したのはどこの誰なんだろう。でも確かに、いい気分がしないというのも事実。昔からそういう話を聞いていると長い時間覚えていてしまう、と何かの本で読んだのを覚えている。インプリンティングと言うんだったか。要するに、迷信というヤツらは小さい頃に体のいい言い訳として親に言い聞かせられてきたものの名残りに過ぎない。心の奥底でソレがあるから「なんとなく」で迷信だとわかっている物であっても信じてしまうのだ。迷信は所詮迷信なのである。結局のところ、黒猫が不吉の象徴であり前を通ると不幸が訪れる、なんてものを証明することは不可能だ。


それでも。アレは確かに不吉だった。


一人、留守番をしていた時の話だったと思う。家に両親はおろか、兄さえもいなかったような気がする。もう何年も前の話で事細かに覚えてなどいないが。ボクはひとりぼっちの時を悠々自適に、それはもう快適で自堕落で。その様な具合に過ごしていた。炬燵が出ていた時期だったから、体を半分ほど突っ込んでぬくぬくしていたのかもしれない。そこから少し時間が経って、外は明るいとも暗いとも言い難いぐらいになっていた頃だったと思われる。少し寝てしまっていたのか記憶が曖昧で、ぼんやりとした感覚のまま、炬燵の向こうに感じた気配の様子を伺っていた。なんとなく見ない方がいいものの気がして炬燵に自分の背が隠れるぐらい縮こまって気配の方を見る。親や兄であれば炬燵に腰まで入っていたボクを注意していたであろうし、何より入っていた瞬間まで、足も何もなかった筈だ。であればソレは人ではない。ああ怖い。一体どんなバケモノが炬燵を隔ててボクを取って食おうとしているのだろう。やっとの思いで横から覗き見ると、黒くて艶のあるふわふわした毛が──。


結局、親が帰ってきたのであろう音でボクは目を覚ました。恐らくあれは明晰夢とかなんとかなんだろう、目を擦って見たらそこには何もいなかった。もう何年も前の話と言った通り、ボクはあの頃の話をよく覚えていない。でも、あの夢現の世界に黒猫がいて、尻尾を優雅に揺らしながら炬燵越しに睨み合っていたことだけはよく覚えている。アレがこの世のものだったのかは分からないが、言い様のない恐怖を覚えたのも事実だった。揺らめいていた尻尾が時折二本に見えていたのもきっと、ボクが疲れていただけか幻覚の類なのだろう。

実体験のようなそうでないようなものかもしれない

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