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学園、青春

雨の日はラッキー

作者: 山岡希代美



 突然降り始めた雨に傘を広げた途端、身を屈めて隣に滑り込んできた奴がいる。


「お、ラッキー」


 隣の席の調子のいい男子。いつも横から「ラッキー」と言いながら、私のお弁当をつまんだり消しゴムを勝手に使ったりする。呼び名はラッキー。私が呼んでるだけだけど。


 当たり前のように私の手から傘を奪って、当たり前のようにひとつの傘に一緒に入って、ラッキーは有無も言わさず歩き始めた。


 左手に持ってるそれは、折りたたみ傘では?


「ねぇ、ラッキー」

「ラッキーって呼ぶなっつってるだろ。犬じゃねーんだし」

「それはいいけど」

「よくねーだろ」

「どうして自分の傘ささないの?」

「スルーかよ」


 探るように見つめる私をじとりと見下ろして、ラッキーは吐き捨てるように言った。


「おまえに近づくために決まってるだろ。気づけよ」

「へ?」

「だーっ! つべこべ言わずに俺の女になれ!」

「はぁ!?」


 なに、こいつ。まとわりついてくる子犬かと思ってたら横暴な俺様?

 あまりの落差に呆然としていると、ラッキーは目を逸らしてふてくされたようにつぶやいた。


「いやならいいけど」


 そのしょんぼりした様子が、主人に叱られた犬みたいで、私は思わずクスリと笑う。


「いやじゃないよ」

「ほんとか?」


 途端にラッキーは嬉しそうな笑顔で私をのぞき込んだ。こんなストレートな感情表現はやっぱり犬だ。


「じゃあ、今日からおまえ、俺の女な」

「調子に乗るな。あんたこそ今日から私の犬だからね」

「犬じゃねーっつってんだろ!」


 ひとつの傘に肩寄せ合って、互いに小突きあいながら私たちは家路をたどった。




Copyright (c) 2015 - CurrentYear Kiyomi Yamaoka All rights reserved.



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