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その朝  作者: 三宮新真
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第三話 笑い続けろ

第三話 笑い続けろ


安藤は特にとりえのない、勉強も運動も中の下くらいで、受けない冗談を言っては馬鹿にされている目立ちたがっているが目立たない、俺としてはあまり興味の無い奴だった。

いつだったか、

「親友だろ?」と急になれなれしくそばに寄られ、当惑したことを覚えている。結局、ただクラスの一員というだけの関係、一緒にいるとつまらなくて苦痛を感じる奴だった。妙にべたべたした感じで、そんなところが嫌で別の世界の住人という感じだった。

ある昼休み時間に、気の合う友人たちといろんな奴の悪口、批評を言い合っていた。人の悪口はいつも楽しい。

「林の奴は頭もいいし運動もできる何でも一流だ」

「バカあいつはたいしたこと無いぜ、そう見えるだけだ、本当は久村の方がすごいんだ。あいつこそ何でもできる。林は久村にくっついているだけだ。」

順番にその場にいない奴の話になっていった。

「志田は本当にいい奴だな」

「俺もそう思う、あいつ怒らないよな。本当は空手やってて強いんだぜ。」

「宮坂はいやらしいよな。女みたいな顔と体つきしている。」

「俺ああいうタイプ好きなんだけどな」

「本当かよ!ハッハ。」

そのうちに安藤の話が出た。俺は安藤に興味が無かった。

「あ、あいつね別にいいじゃない、どうでも。ああいうこと好きでやってのんかね?」

そのとき、突然、後ろから誰かに腕を引っぱられた。

「こっちこっち、こっちだ」

俺は訳も訳も判らず、引っぱられてそいつについて行った。下駄箱の棚が並んでいる一番奥まで行った。そいつは安藤だった。

向き直った安藤は不思議な高揚したような顔をしていた。そして慣れない手つきで俺の胸ぐらを掴んだ。

「俺の悪口を言っただろ、一発殴るからな。」

いつものおどけた安藤とは全く別人の顔つきだった。俺は驚いて

「お前の悪口なんか言ってないじゃないか」と力いっぱい笑いながらその手を振りほどき、安藤から距離をとった。安藤は震える声で

「俺をバカにしたな」といい続けた。

「バカになんかしてないさ。何でそう思うんだ、悪口なんか誰も言っていないさ」

俺は笑いながら自分の顔がだんだん引きつっていくのを感じていた。それでも心の中で(こんな奴に殴られてたまるか)と思っていた。一瞬かっとなりそうになったが、思い直して又、笑顔作戦に切り替えた。

俺はこんなにも自由自在に笑顔を作る能力が自分にはあったんだなあ、と思いながら笑い続けていた。


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