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その朝  作者: 三宮新真
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第十六話 その朝  


新しい学校へ転校してきた最初の数日は何度経験しても決して慣れることは無い。

 朝、登校してきて教室へ入る、たとえばそのとき自分の席に別の誰かが座っていて、隣りの子と話をしている時などは最悪である。

「どいてくれ」などとは、もちろん言えず、その子が席を立つまで遠くの方で何かをしているふりをしてウロウロしながら近づいたり離れたりするのだ。時には始業チャイムが鳴ってその子が自分の席へ戻るまでそれを続けることになる。

 そして翌日は、他の子より早く学校へ行き、自分の席が誰かに占領される前にどっかと腰を下ろし自分の席から動かないようにする。だが、机についていても何もすることが無く他の子が楽しそうに話したり遊んだりしているのに加わることも無く、ただじっとしているのも、とても辛いものだ。僕は自分から他の子に話しかけることが出来ず、話題も浮かんでこなかった。

 そのうちに寝たふりをする事を思いついた。朝早く、誰もいない教室へ行き自分の席についてボンヤリしている。誰か他の子が登校してきても決してその子の方を見たりせず、机に突っ伏してひたすら寝ているふりをするのだ。そのうちだんだんと他の生徒も登校してきて教室の中ががやがやと騒がしくなってきたところで、さも、よく寝た、という顔をして顔を上げる。そして何気なくがやがやの中に溶け込んでいく。だいぶ前から隣の席に座っている生徒に対して今気がついたような顔をして

「あっ、おはよう」と言うのだ。

 明るく元気にいつも声をかけてくれる、もっと言えば振り回してくれるような生徒がクラスにいる場合はそんな気を使わないですむ。ボンヤリするまでもなく真っ先に彼が話しかけてくれるからだ。でもそういう子がクラスにいなくて、グループで固まっていて仲良くしているようなクラスの場合、その寝たふりは何日も何週間も続くことになる。そのうち気のいい心配性の子が

「おい、起きろよ、授業はじまるぞ」などと、肩を叩いてくれるようになると、だんだん寝たふりはしなくても済むようになっていくのだった。それから何人か気軽に声をかけられる生徒が出来ていき、だんだんクラスに違和感を感じなくなってくる。

それからやっと、この学校での生活がはじまるのだ。



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