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ゆがプリ! 〜目指すしかない、ノーマルエンド!〜  作者: みちはずれ
1.胡桃 宝 編
11/74

3.お待ちかねの接触イベントです



『攻略対象の一人です』


 胡桃が自己紹介を終えて着席すれば、ナナコの一声で案の定スクリーンが浮かび出す。


 【プロフィール】


 ・胡桃くるみ たから

 

 ヒロインの一学年上の先輩。

 おっとりとした優しい性格でお人好し。

 シャルンでバイトしている。



 立ち絵と共に浮かぶプロフィール文は、ひかりの興味をさらに引いた。

 おっとりとして、優しくて、お人好し。自分で言いたかないが、ひかりとは真逆だ。真逆だからこそいい、人は自分にないものに惹かれるのだ。

 

 もちろんまだ全員と出会ったわけではない。だが、第一の有力候補だ。

 ひかりは控えめに彼の方へと視線を向ける。ハートの器はもちろん空だし、視線は交わることはない。

 これから頑張って行こう、私がヒロインなのだから。その事実がひかりの活力となる、はずだったのだが。


(〜〜っ、接触イベントがない!)

『まだ一年目の五月ですよ』

(……それでも出会ってからすぐに接触とかあるものじゃないの? それで自己紹介とかしてさ)

『蘭咲黒とはなかったはずですが』

(たしかに……)


 すぐ論破された。なんだこのナビゲーターは。

 日光に照らされて、今にも溶けそうな蘭咲を肩越しに盗み見る。さすがにマスクは外していたが、真っ白な頬に垂れる汗があまりにも似合わず、違和感があった。


「相良さん、さっきから手が止まってる!」

「は、はい! ごめんなさい!」


 耳につんざくおばさんの声にひかりは肩を跳ねさせる。一年生エリア担当の佐原先生は、ふくよかで丸々としているが誰よりもキビキビと動いていた。


「……蘭咲くん、ある程度溜まったらここ入れていいからね」

「……」


 ひかりが大きな家庭用ゴミ袋を広げ、蘭咲に声をかける。こちらを見る蘭咲の瞳の焦点はどこか定まっていない。

 長い脚を伸ばして近づいてくる蘭咲の片手に握られたスーパー袋の中には、うっすらタバコの吸殻の形が見えた。教師にしろ生徒にしろ、ろくでもない。


「あの、さがらさ、ん……」


 ひかりの身体に細長い蘭咲の影が重なる。か弱い声に呼ばれ見上げると、そこには顔面蒼白の蘭咲の顔があった。

 彼もまた幸薄な美少年だ、なんて鬱陶しそうなくらい長い睫毛と桃色の唇に感心してる場合ではない。


 スローモーションかのように蘭咲は、ひかりの視界から横倒れにフェードアウトしていってしまったのだ。


「ら、蘭咲くん!? 大丈夫!? せ、先生!」

「きゃーっ! 大変!」


 砂埃を立てて豪快に倒れる蘭咲。それを見て騒然とする周りの生徒たち。頼りの先生が発狂して飛び跳ねば、バタバタと助けを呼ぶために走り出した。

 一人置いていかれたひかりは、不安で口をへの字に曲げた。


「蘭咲くん、声は聞こえる? 声は出さなくてもいいから聞こえたらこの指握って」


 ひかりはなるべく優しく、倒れた蘭咲の手のひらに指をくっつけてみた。ぴとりと蘭咲の親指と人差し指の間にそれが握られる。意識はあるようだ。


「あの、誰か涼しい場所まで運ぶの手伝ってくれませんか?」

「俺が手伝うよ」


 またひかりに影が重なる。

 見上げた先には、かがんで蘭咲を心配そうに見つめる胡桃宝の姿があった。


 

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