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ゆがプリ! 〜目指すしかない、ノーマルエンド!〜  作者: みちはずれ
1.胡桃 宝 編
10/74

2.攻略対象が登場しました 2



 ナナコに文句はあったが、実際ひかりは学級委員にはなりたくなかった。時間があってもきっといいえを選択していただろう。

 それがゲームの世界だとしても、現実世界だとしても。

 ひかりは人をまとめるだとか、チームワークだとかの類に向いている人間ではない。それを自分でも理解していたし、自己紹介一つで緊張している女が、「楽しいクラスにするために精一杯頑張ります!」だなんてゲームでも言えるはずがないのだ。


 そんな自分に言い訳してばかりのひかりが選んだのは、美化委員だった。

 何故かと問われれば、体力のステータスが上がりやすいとナナコが教えてくれたから。ただ、それだけ。


 しかし、後になって学級委員はステータスが全部上がりやすいとナナコに聞かされた。

 決して悔やんでない。ああもちろん悔しくないとも。



 そして今、教師に命じられるままにグラウンドのゴミ拾いをしている。

 爽やかな青空に似つかわしくないゴミ拾い用のトングが恨めしい。妙なリアリティをこのゲームは度々演出してくる。

 これすらもイベントなのか? ひかりが心の中で問えば、ナナコはイエスと言うだろう。


『その通りです』


 そら見たことか。

 ひかりは予想が当たった事に得意げに鼻で笑う。そんな陰気な時間潰しとは対照的にグラウンドに繋がる駐車場エリアからは、女子の甲高い楽しげな声が聞こえた。


 二年生の担当エリアだ。

 首筋に垂れる汗をタオルで拭って声の方向を振り返る。視線の先には懸命にゴミを拾っている男子と、それを囲んでおしゃべりをする女子の集団が見えた。


 ひかりの心臓は自然と高鳴る。ただでさえ暑いのにさらに体温が上がっている気がした。

 集団に囲まれた男子は困ったように首を傾げ、おしゃべりする女子たちを注意している。が、決して怒気は見せずあくまで柔らかく。

 それは彼自身の人の良さを表しているようで、女子たちもそんな彼の人となりに甘え、従うそぶりは見せない。


 ――ひかりは遠くで浮かぶ彼の名前とハートの器を見つめ、先日の委員会の顔合わせを思い浮かべた。


「2-Bの胡桃くるみ たからです。よろしくお願いします」


 委員会決めの翌日にまた運動コマンドの動きはピタリ止まった。

 ひかりは二年の教室に蘭咲と隣同士で座っていた、美化委員会の顔合わせとやらで。


 突然の蘭咲の存在に悩む前に、胡桃は現れた。


 焦げ茶の髪はさっぱりと眉の上で切り揃えられ、襟足は綺麗に刈り上げられている。毛先の暗めピンクのグラデーションと、眠たげな垂れ目が柔らかな雰囲気を感じさせ、威圧的な背丈の大きさをかき消していた。


 好印象、ひかりはその一瞬だけで素直にそう思った。率直に言えばとってもタイプというやつだ。


 

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