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カオスエンドワールド  作者: 真名瀬 照
序章
3/20

桜吹雪の転校生


 時刻は7:57AM。

校舎内を全力疾走し二階教室のドアを開け放った勇輝は、間にあったと遺言のような(うめ)きを残してその場に崩れた。


 勢い良く開け放たれた教室の扉に最初は何事かと顔をむけていたクラスメイト達も今はあぁ、あいつかと興味をなくしてそれぞれの日常へと意識を戻していく。そんな中、一人の少年が倒れて虫の息になっている勇輝に大丈夫かと手を差し伸べた。


 鋭く射貫くような黒い眼に(うるし)のように艶やかな黒髪、凛とした端麗(たんれい)な顔立ちから知性を漂わせるその少年は美しく、異性ならば誰もが見惚れ同性ならば嫉妬するのも馬鹿らしくなるほど完成された美少年。その存在感はどこか浮世離れしていて近寄り(がた)くもある。しかし、


「立てるか?」


 それを鼻にも掛けず何の嫌味もなく彼の肩を担いで起き上がらせた少年はまさしく好青年と言うに相応しい彼の友人だった。


 眉目秀麗(びもくしゅうれい)金甌無欠(きんおうむけつ)、完璧という言葉の擬人化のような人間――――それが國津伊吹(くについぶき)という少年だった。


「ありがとう・・・・・・でも死にそう・・・・・・」


「何を来て早々に死にかけてるんだお前は。まだ授業が始まってすらいないぞ」


 やれやれと呆れながらも勇輝を介抱して席に座らせる辺りに伊吹の人柄の良さがうかがい知れる。そしてそんな場面を目にした彼のファンである所の女子生徒(じょしせいと)達がひそひそと黄色い声をあげた。


 しかしそれとは対照的に嫉妬やら敵意やらが机に突っ伏す勇輝の背に注がれる。それは完全に逆切れに等しいもので要約すると《何お前ごときが伊吹様に迷惑かけてんだぶっ〇すぞ!》という意味の視線であり、彼はこれを毎日のように受けていた。


 もちろん彼にとっては日課のように続いてきたことなので当然ながら多少なりとも慣れはしていた。が、何分数が数なので圧倒的人数から放たれる敵意の圧力は凄まじくあった。


 背中に穴が空くか胃に穴が空くかどっちが早いかな? などと胃痛を感じながら現実逃避気味に考えていると、伊吹とは逆――――勇輝を挟んで反対側の席に行儀がいいとは言えない女子生徒が「相変わらずだな」と呆れ気味に声をかけてきた。


「あぁ、うん・・・・・・おはよう、ダリエラ」


 グロッキー状態の勇輝がダリエラと呼んだ少女がおはようさんと投げやりに苦笑う。


 桃色の長髪に今紫(いまむらさき)の眼。

目付きの悪さなら伊吹より上の鋭さで近寄り難い一種の不良のような雰囲気を放つ同級生は、そのしなやかな美脚を机上にほっぽりだして恥ずかしげもなく周囲に魅せつけていた。


 ガラの悪い彼女の名はダリエラ・フォーエン・カインバルド・セレーネ・ヴィスター。

長ったらしい名前からはどんな人物なのか想像がつかないその少女は、片や伊吹が完成された芸術品ならば彼女のそれは野性的な美と言える。日々自然界で生きていく為に無駄を極限まで削ぎ落としたような肉体美を誇る少女は無自覚に晒した脚線美でクラスの男共の視線を一身に集める。


 いくら彼女が素行不良で近寄り(がた)いとはいえ特出した美少女であることに変わりはなく、その為密かに好意を抱く者も少なくはなかった。


 そんな二人は当然ながら学校中に人気者でありお互いにファンクラブが出来るほどである。片や圧倒的な女子人気を誇り中には好意を寄せる余り彼を神聖視する過激派も存在する非公式ファンクラブ《伊吹親衛隊》。片や圧倒的な男子人気を誇り彼女の素行不良や口の悪さに魅せられ寄り集まった非公式変態集団《迷える子豚の会》。発足理由や集まる人間の傾向に違いはあれど彼らのカリスマ性が成せる業だった。


 そしてそれ故に、そんな人気者二人の友人である勇輝には彼らとは真逆の視線が注がれるのは明白で・・・・・・、


(あー・・・・・・今日も胃が痛いなぁ・・・・・・!)


 周囲から浴びせられる嫉妬と殺意のマシンガンに耐えながら勇輝は爽やかに現実逃避した。


「おーい、戻って来ーい。本当に大丈夫か?」


 ここではないどこか遠くを見つめる彼の目の前でひらひらと手を振ってダリエラが呼び戻す。


「いや・・・・・・ある意味であなたのせいでもあるからねダリエラさん」


「あ? 何の話だよ?」


 間接的な原因で胃を痛めつけられている友人として皮肉の(こも)った軽口を叩いてみるが、本当に分かっていないような反応のダリエラに冗談めかしてこれだからと勇輝は肩を(すく)めてみせる。


 もちろんこの友人間での他愛のないやり取りの間もずっと見られている訳で、彼のダリエラを小馬鹿にするような態度に周囲から殺意という名の無言の非難が殺到する。


 これくらいの冗談さえ許されないのか・・・・・・ちょっと狭量が過ぎないかな君達!?


 などと彼は内心で言葉を返した。もちろん口には出さない。出せば間違いなく血祭りにあげられるからである。


「ところで毎度のことでギリギリだったが、今日は何でそうなったんだ?」


 会話に割って入るように伊吹が尋ねる。


「それがOASMの調子が悪くてさ。目覚ましかけたのに起こしてくれなかったんだよね」


「OASMが? ウィルスか?」


「いや感染するようなことは何もしてないし多分ウィルスではないと思う。ちょっとした不具合が発生したーとかそんな感じの情報何か知らない?」


  勇輝の問いに数秒ほど思案する二人。

こと情報収集などに関しては彼よりも頭の良い伊吹やダリエラの方が間違いなく上手(うわて)だった。だからこの二人に聞けば大体解決するし最悪どちらかが答えてくれるだろうと。しかし、


「俺の方は何ともなかったし周りでOASMの不具合云々の話も聞かなかったな」


「今公式いって見てみたけど不具合報告もそれっぽいのはないしSNSなんかでも騒ぎになってる様子はねえな」


 伊吹、ダリエラ共に返答はNO。知らないし聞いた覚えもまいと首を横に振った。


「やっぱエロいサイトでも開いたんじゃねーの?」


「違うってば! 本当に身に覚えがないんだって! というか仮にも女の子がエロいサイトとか言わない!」


 にやにやとするダリエラにあらぬ疑いを掛けられた勇輝が冤罪(えんざい)だと声を荒げた。そんな二人に構わず伊吹は一人おかしいなと思考を巡らせる。


「本来不具合が出るような設計ではなかったはず・・・・・・。それが発生して、しかも特定の一人だけ・・・・・・」


「まぁOASMは99%不具合は起きないってだけで100%ではないし、今回は運悪くそれに当たっちゃっただけでしょ」


 ぶつぶつと呟き熟考する伊吹に苦笑いを浮かべながらまあまあと勇輝がなだめる。

実際OASMの登場以来、不具合報告は滅多にされていない。それも報告される殆どは悪質なクレームの類で正真正銘の不具合が起きて報告されたものはないに等しかった。しかしそれでも不具合が起きたことが一度もなかった訳ではない。だから博識かつ頭の良い伊吹が気にかかるのも無理はないことではあるが、今回は偶然運悪く自分が当たってしまっただけだから気にしすぎないでと。


「ま、何にせよそれでギリギリのご登校だった訳だ」


「そういうこと。おまけに夢見まで悪くて最悪だったよ・・・・・・」


 再度疲れたと机に突っ伏した彼に夢見? とダリエラは首を傾げた。

あぁ、そういえば言ってなかったなと説明の為に気怠(けだる)いながらも彼は口を動かす。


「何か気が付いたら荒廃した街の中に立っててさ、伊吹とダリエラ、後もう一人どう見たって人間じゃない化け物が戦ってて。で、俺はそれを見て助けなきゃってむかってくんだけど、三人に囲まれて終いには殺されたよ。そういう悪夢だった」


「ふーん、何か現実感なさそうな夢だな」


「それが妙にリアルでさー。心臓の鼓動とか五感とかが現実かって錯覚するほど再現されてて・・・・・・いや本当参ったよ」


「そりゃ災難だったな。・・・・・・でどうだった、ダチに殺されたご感想は?」


 冗談めかして友人に殺害された気持ちを問うてきちゃう系女子のダリエラに良い訳ないでしょ・・・・・・! と勇輝は眉間に皺を寄せた。


「殺される夢は縁起が良いとも言うし、友人に気遣い一つ出来ない阿婆擦(あばず)れの戯言など、余り気にするなよ」


 友人を気遣いながら一つ隣の少女に対してさらりと、そよ風でも吹いたかのような気軽さで伊吹の口から吐き出された悪罵(あくば)に、和やかだった空気が一瞬で凍る。


 そして次に聞こえたのは罵られた本人の口から漏れた侮蔑の嘲笑だった。


「ッハ! これだから頭の固い優等生は・・・・・・! ジョークと悪口の区別も出来ねぇのかよ? てめぇみたいなのを無粋って言うんだろJap」


 売り言葉に買い言葉。禁句中の禁句で返したダリエラに、伊吹の目付きが格下を見下す凍てついたものへと変わっていく。


(あい)の子風情が。浅知恵を披露したところで底が知れているな」


「――――ア?」

「フン――――」


 額に青筋を浮かべるダリエラと絶対零度以下で冷眼する伊吹。


 やばい――――。


 クラス中の誰もがそう思った。そして誰よりもそれを肌で感じ取っていた勇輝が止めに入ろうと――――、


「――――んだゴラァ!! てめぇのそ○○切り落としてミンチにした後○○穴に豚○○〇ぶち込んでF○○〇してやろーかッ!!」


 したが、時既に遅かった。

女の子が絶対にしてはいけない形相でダリエラが怒号を飛ばす。


 彼女の口の悪さを知らぬ者は校内に一人としていなかったが、それでも少女の口から飛び出したとは思えない罵詈雑言にクラスメイト達は引いていた。もうお分かりだと思うが伊吹とダリエラは物凄く仲が悪い。喧嘩するほど仲が良いとか嫌よ嫌よも好きの内とかよく言うが、この二人を見ているとその言葉が全く事実とは異なるということを身を()って実感させられる。


 本人達(いわ)く、初めて会った時の第一印象から気に入らないと思っていたらしくその直感通り爪先から頭のてっぺんまで何もかもが生理的に嫌いという徹底ぶりだった。


 それだけ嫌いならお互い近づかなければいいのに。そんな風に皆思うことだろう。しかしそれこそが彼らを語る上での一番の問題点だった。


 何故なら二人はこれだけ嫌い合っているにも関わらずどういう訳か巡り合ってしまうのだ。まるで出会うことを運命付けられているかのように。


 顔を合わす度に問題を起こす二人を教師達が職権を使って別々のクラスにしたりもしたのだが、必ず何かしらの偶然が重なり二人は出会ってしまう。そして同じ場所にいれば100%の確立で喧嘩になる。これはもはやOASMの支援精度を超えていると言えるだろう。


 もちろん頻繁に問題を起こす二人は退学処分にされてもおかしくはないのだが、片や国のお偉いさんの子息、片や貴族のご令嬢という身分であり密かに資金的な支援を受けている学校側はおいそれと退学には出来ないのだった。


 犬猿の仲、水と油、排他的関係。

それらの言葉がしっくりくる二人はもはや誰にも止められない。この教室にいるただ一人を除いて――――。


 クラス中の視線が勇輝へとむけられる。

はっとなって彼が振りむくとクラスメイト達が一斉に視線を外した。


(止めろと!? 俺一人であれを止めろと!? 毎度のことだけどこういう時ばかり俺に頼るの卑怯じゃないかな!?)


 頑ななまでに目を合わせない同級生達に、渋々と絶賛喧嘩中の二人に勇輝はむき直る。


「あのー・・・・・・二人とも・・・・・・?」


 弱々しく喧嘩は止めようと言いたげに顔色をうかがう少年に、しかし彼らは邪魔をするなと火花を散らしたまま収まる素振りを見せない。


「ふん・・・・・・品性の欠片もないな。本当に人間かどうか疑うレベルだ。まともな言葉遣いが出来ないのならいっそ今からでも園児からやり直したらどうだ?」


「品性? 言葉遣い? ッハ! 笑わせるね! そんなちゃちなもんで着飾らねえとまともに人とお喋りも出来ねーのかよ! お外が怖いならさっさと家帰ってママのおっぱいでもしゃぶってオ〇ってろよこの糞童貞イ○○野郎ッ!!」


 ダリエラの“童貞”という罵倒に教室内の思春期達がざわつく。


(いやどこに反応してるの!? そんなとこに食いついてる余裕あるなら止めるの手伝って欲しいな!?)


 などと勇輝が苦言を(てい)するも誰も聞いてはいない。何たって心の中でだから。


「ちょっ・・・・・・本当にストップ! ストップだってば! というか俺を挟んで喧嘩するの止めない!? ねぇ聞いてる!? 聞いてます!?」


「貴様がいると周りに迷惑が掛かる。いい加減方を付けるべきだと思うが?」


「迷惑掛けてんのはてめぇだろ。けどケリつけるってのは良い提案だ。貴重な残りの二年間をてめぇの面見て過ごさなくて済むしなァ・・・・・・!」


 勇輝の説得も耳に入っていない二人は何やら物騒なことを言い始め、ついにはお互いにカッターやハサミを握りしめ臨戦態勢に入ってしまい、もう駄目だと誰もが思った時――――、


「おら席つけーお前ら――――――――あ」


 がらがらと古くなり建付けの悪くなった扉を開けて気怠そうに入って来たクラス担任の男性教師が、闘争開始3秒前の現場を目にして小さく呻き、固まって――――、


「・・・・・・今日体調悪いから帰るわ、お疲れー」


 適当な言い訳を残して教室の扉を閉めて逃げようとした。


「待って!! 帰らないで先生っ!!」


 厄介ごとから目を背けて逃げようとした大の大人を全力で引き留め「ほらもうホームルーム始まるから二人共席に座って!! ねっ!?」と上手く理由を付けて勇輝は今も武器を構えたままの友人達を言い含める。


 致し方なしと判断した二人は互いに命拾いしたなだの次は殺すだの殺意増々の捨て台詞を吐き捨てて不機嫌そうに席に着いた。そして何とか丸め込むことに成功した勇輝は魂が口から抜けてしまいそうな程の溜め息と共に脱力し、机に崩れ落ちた。


(本当・・・・・・勘弁して・・・・・・・・・・・・!)


 登校して数分しか経っていないにも関わらず勇輝の胃と心は既にずたぼろだった。




 ホームルームが始まると先程の喧騒は遠くに過ぎ去り静穏(せいおん)な教室に点呼の声だけが響く。


 教師が名前を呼び、生徒が短く返事をする。ただそれだけの何でもない日常が勇輝は不思議と好きだった。


 本当に何でもない日常の一幕。しかし一度しかない三年間の一幕。

そのささやかで何気ない、けれど何ものにも代え難い淡い輝きに満ちた日々が彼はとても気に入っていた。


 そんな日常に耳を傾け心地良さに揺蕩(たゆた)っていると一枚の桜の花びらが彼の机の上にひらりと着地した。流れてきた花びらの足跡をたどると換気の為に開けられた窓の外から満開の桜がこちらを覗き込んでいた。


 綺麗だなーなどと呑気(のんき)に咲き誇る桜に見とれていると教壇に立っていた教師がもう知っているやつもいると思うがという前置きをし、何だろうと彼は窓の外から意識を引き戻した。


「今日このクラスに転校生が来る」


 その一言に教室内がざわついた。

男ですか女ですか? 可愛いですか? イケメンですか? などなど矢継ぎ早に教師に質問が飛ぶ。が、鬱陶しい自分の目で確かめろと(まと)めて一蹴した。


 当然勇輝も転校生には興味はあった。しかしそれよりも入学式も終わってすぐの時期に転校してくることの方が気になっていた。周りが新たな学友の到来に過熱する中勇輝の両隣の二人は興味がない訳ではないが関心は薄いようで、ふーん、まぁ余程変なやつじゃない限りクラスメイトとして一様は歓迎してやろう、といった感じだった。


 勇輝がふと教室のドアの方に目をやると磨りガラス越しに転校生のシルエットが映っていた。線が細くどう見たって男の体格ではない。どうやら転校生は女の子のようだと勇輝は思った。そしてどうやら彼と同じことをしていたらしいクラスメイト達が女子であることに歓喜し、あるいは男子(イケメン)でないことに肩を落とした。


 とにかく温かく迎え入れてあげよう。そして出来るだけ胃に穴が空かないようフォローしてあげよう。そう心に決めて新たな学友が入ってくるのを勇輝は待った。


 まず誰の耳にも入っていないだろう担任のフォローを含んだ前説が終わり「じゃあ入ってきて」という軽い呼びかけのすぐ後、扉がゆっくりと開く。


 開ききるまで数秒も掛からないだろう時間に皆じれったさを感じながら衆人環視の前に晒される転校生の全貌を目に焼きつけようとしていた。丁度その時だった。


 ――――突風。

突然吹いた強風と共に桜の大群が窓から押し寄せ教室中を埋め尽くした。


 なんだ、どうした、と皆パニックになる中、一人桜色の幕をものともせず転校生が教壇へとのぼる。


 大量の桜の花びらに邪魔されて全く姿を拝めない転校生に見えねえー! と叫ぶ男子達。


 花びらが舞うこと数十秒やっとある程度床に落ちて視界が見えるようになってきて――――急に教室内が静まり返った。


「――――――――初めまして――――――――」


 澄んだ声が響いた。

それは決して不快感を与えるようなものではなく、耳元を優しく風に撫でるような声だった。しかし皆が押し黙ったのは突然の声に驚いた訳でも期待を裏切られたからでもない。


 桜色の花吹雪。斜光が抱きしめるように淡く微笑みの少女を照らし出す。


 風になびく山吹色の長髪、淀みない白群(びゃくぐん)の瞳、大人と子供の間を行き来するあどけなさが残りつつも完成された彫像めいた美貌。それら全てが背景に彩られ美しい絵画から飛び出して来たかのような少女に、誰もが魅入られていた。


 その姿は彼女の周囲ごと切り取って額縁に収めてしまえば美術館に展示されていても違和感などない、一種の神々しささえ覚えるほどのものだった。


「今日からこの学校で学ぶことになったカルディア・E・アリスです。よろしくお願いします」


 そう簡潔に自己紹介をして丁寧にお辞儀をした。そして頭をあげて、


「仲良くしてね」


 と少女らしく微笑んだ。

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