勝負の行方
力王山が大剣を振り下ろす、悠人は盾で防ぐ。
「その盾、ちょこざいな」
悠人の盾はカーブが大きい、よって正面から受けても容易に衝撃を受け流してやすくなっている。
「どうですか、僕の盾は、言ったでしょう、貴方にはこれくらいで十分だって」
悠人が言っていたことをようやく理解する、見たらわかるとはそういう事だったのだと。
「なるほどな、だが、それでは攻撃出来ないぞ」
「そこで相談なんですが、このまま引き分けにして貰えませんか」
「なに」
悠人が力王山にドローを申し出る。
「ふん、勝てないからって引き分けか、よっぽど負けたくないらしいな」
「勘違いするな、このまま負けるのはお前だ」
「話は終わりだ次で決める」
何度目かの打ち合いの末、力王山は距離をとる。
「この剣、刀身が黄色く光っているだろう、これは魔力が溜まってる証だ」
「……」
「これを一気に解放する、いくらその盾が受け流しやすくても壊れるかもなぁ」
力王山が勝利を確信した笑みを浮かべる。
「〈悪魔の代弁者〉荒波汰悠人、死ねぇぇぇぇぇ」
力王山の大剣が大量の雷を纏って盾に振り下ろされる、あれが当たれば死は免れない、しかし、悠人は避けようとする気配もない、このままでは1秒と経たないうちに悠人の血で戦場は紅く染まるだろう、そんなものは見たくなかったが叶美は目が離せなかった。
ドォォォォォォォォォンと、大きい音とともに砂煙が舞う、徐々に薄れていく煙に2人のシルエットを捉える。
「え……」
そこには大剣を振り下ろした力王山、足元に落ちた真っ二つの鉄の塊、力王山の首にナイフを突き立てている悠人が立っていた。
歓声はひとつも起こらなない、力王山は膝をつき腕をだらんと落とし大剣が手から離れる、叶美も何が起こったか分からず呆然としていた。
「何をした」
力王山がポツリと声を発する。
「一体お前は何をしたんだ、あれだけの威力だぞ、当たった感触は確かにあった、なのにどうしてお前は立っているんだ」
力王山が大きな声で捲し立てる。
「見えてたんだろ、だったらもう一度言う必要は無い」
ナイフを外し、這いつくばった力王山を高くから見下ろし静かに言う。
「あーあ、負けた……」
直立不動だった悠人はそのまま後ろに倒れ込んだ。