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朱音選手

「大丈夫?」

「ああ、大丈夫だ」


叶美はボロボロになった男に肩を貸しながら修練エリアへとむかっていた。


「クソ、女に肩を貸されるなんて一生の不覚だ」

「あなた名前は?」

「彰人、旗本彰人(はたもとあきと)だ」

「私は叶美よ、神原叶美、彰人さん大丈夫?」

「大丈夫だ、それより朱音だったか、そっちを心配しやがれ」


彰人が言う、朱音は今どうしているのだろうか。


そう思いながら歩いていると修練エリアの闘技場に着いた。


「ここが闘技場」

「俺も初めて見た」

「そうだ、朱音ちゃんはどこ」


探しに行こうと歩くと誰かにぶつかって転んでしまった。


「きゃっ、す、すいません前を見ていなくて」


顔を上げると目の前には多目的ホールであった青年が立っていた。


「おっと大丈夫ですか」


転んでしまった私に青年が手を差し出す。


「ありがとうございます、貴方もここに来ていたんですね」


手を取りながらそう言うと青年はおやと首を傾け考えている。


「えっと、どこかでお会いしましたっけ」

「え、覚えてないんですか、あんな事があったのに」


すると青年が顔を赤らめて慌て出す。


「あ、あんな事?!えっと女性の方とするあんな事は身に覚えがないのですが」

「い、いえ違うんです、そうじゃなくて」


青年と同じように慌ててしまった私を見て可笑しそうにクスクス笑っていた。


「冗談ですよ、多目的ホールでお会いした方ですよね、覚えています。」


どうやらからかわれたようだ。


「ちょっと、辞めてくださいよ」

「すみません、それより朱音様がお待ちです、こちらへどうぞ」


緩んでしまった気が引き締まる。


「そうだ、朱音はどこに」

「選手控え室です、案内します」


先を行く青年の後に続き、やがて闘技場に着き、東口に入り、関係者入口から選手控え室へと入っていく。


「朱音様、お連れいました。」


そこには膝を抱えて顔をうずめている朱音が座っていた。


「朱音大丈夫?」

「ああ叶美か、ええ、ちょっとビビっちゃって」

「朱音……」


誰が見てもわかるほどに朱音は憔悴していた。


「朱音辞めよう、朱音には無理だよ」

「そうだ辞めとけ、今のお前は戦う前から負けている、こんな状態だと何も出来ねぇぞ」


彰人が朱音を説得する。


「あんたは、さっきのか」

「さっきのってなんだよ、俺は彰人、旗本彰人だ」

「そうか、彰人って言うのか、覚えとく」


そう言いつつ朱音は彰人の方を見ていない、何とか会話になっているような感じだ。


「朱音様、そろそろお時間です」


青年が声を発する、朱音はそうかと短く応えた。


「お二人とも、そろそろ一般の方は出なければなりません」

「な、何でですか」

「試合の最終調整の時間なので選手の邪魔にならないよう退場して頂きます」


どうやらここまでらしい。


「朱音……」


結局何か言おうとしたが何も言えない。


「試合はあと3時間後なのでどこかで暇を潰してはどうでしょうか」

「貴方はどうするんですか」

「何がですか」

「朱音のそばに居るのでしょう、であれば伝えて欲しいことが」

「いえ、私は無関係の一般人ですよ、決して朱音様のお手伝いではありません」

「……はい?」


状況が飲み込めない、無関係?一般人?朱音様とか言っててお手伝いする人じゃないの?


「え、じゃあ貴方はなんで私達をここに連れてきたんですか」

「朱音様はこちらに走ってきた所私とぶつかってしまいそのまま流れであなた達を連れてくるよう言われただけです」

「は、じゃあ俺らをここに案内したのって」

「ああ、たまたまあの人にあって頼まれたからだよ」


青年が急に口調を戻した。


「要するに、俺はあの人に頼まれたから連れてきただけでそういう仕事をしてる訳じゃないですよ」


私と彰人はポカンとしている、話が理解できない訳では無いけれどついていけないようだ。


「じゃあ、本当になんでもない人だったのかよ」

「ま、紛らわしい」


本当にこの青年は分からない。

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