登校
空が明るくなり、どこからか犬の鳴く声の後、配達バイクの音が近づいてくる、とある家の郵便ポストになにか入れたのか、カタンと音を聞いて目を覚ます。
神原叶美の新しい朝の始まりである、上体を起こし辺りを見回すと机に椅子、クローゼットや絨毯までこの春新生活に向けて全て買い揃えたものだ。白を基調としたのは綺麗好きの叶美の趣味である。
純白のクローゼットを開け学園の制服を取り出す、初めて袖を通した制服姿を姿見にうつして頬が緩んでしまう、小さな興奮を胸にしまい、朝食を食べるために足取りを軽くして階段を降りていった。
「おはよう、あれ、居ないのかなぁ」
キッチンには片方6人の12人掛けのテーブルに純白のクロス、均等に並んだ3つの燭台、天井にはシャンデリアが吊り下がっているゴージャスな空間。しかし、そこに母の姿は無く、簡単な朝食と少し家を開けますという置き手紙が残されていた。
「ふーん、私も早く支度しなくちゃ」
そう言うとまず5分ほど前には湯気を立てていたであろうトーストに手を伸ばす、大好きなイチゴジャムを塗り咀嚼する、口いっぱいにトーストの香ばしさとジャムの甘酸っぱさが広がる。
食事を済ませると前日から用意していた鞄を持ち家を出る、そしてその道中は一つのことで頭がいっぱいだった。
私が入学する予定の学校、修練学園である。
修練学園、過去100年間でグランドバトル優勝者を3人排出している有数のエリート校、珍しいのは定員数が無制限で、受験したらもれなく全員合格するという百発百中もいいとこの激甘学園だ。
それでいて学園の卒業生のほとんどが研究職か軍人になるという成長。
「私もいつか立派な大人になってこの国の役に立てるんだろうなぁ」
そんな期待に胸を膨らませ、家から徒歩15分の学園を目指し、より一層膨らむ期待に胸を躍らせていた。