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才能に愛されし者  作者: きんめ
第一章 幼少期編
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馬車の中で

 アミ―の言質を取った俺は、アミ―を連れて父様のいる部屋へ向かっていた。 


「ルナ……どこ行くの?」


 アミ―は俺が王子だと知らないので、俺のことを呼び捨てで呼んでいる。

 最初に話したときは敬語だったので少し距離感があったが今はない。


 俺は同年代の子供と会ったことはもちろん、話したこともなかった。

 王族が同年代の人間に姿を見せることができるのは、お披露目会の後からという決まりがあるのだ。

 なので、こういう風に同年代の子と話すのは初めてだ。

 

「アミ―、これから行くのは俺の父様の部屋だ」


 俺は父様が国王だということも伝えず、そのまま歩いていく。

 

 昨日、父様と話していた部屋の扉をノックする。


「誰だ」

「ルナです。昨日のことで話したいことがあります」

「うむ、入れ」


 父様の許可が出たので俺は扉を開けてアミ―とともに入室する。

 部屋に入ると、昨日と全く同じ位置に父様は座っていた。

 俺とアミ―は父様の正面のソファーに座る。


「その子が例の……」

「は、はい! アミ―っていいます! 五歳です!」


 アミ―はめちゃくちゃ緊張しているようだ。

 でも俺がアミ―と同じ立場だったら間違いなく同じようになうだろう。


 父様は無意識なんだろうが、その身からは圧倒的な品位が溢れ出ている。

 俺はもう慣れたが、初めて父様に会う人物は大体アガってしまう。

 それも王となる者に必要な資質なのだろうが。


「アミ―ちゃんか。まだ五歳なのに丁寧な言葉遣いだね。ルナは優しくしてくれるかい?」

「うん! すっごく優しくて、かっこいいよ!」

「そうかそうか! かっこいいか!」


 この光景を見ていると、父様は全く国王に見えないな。

 寧ろ近所の子供と話すおじさんみたいだ。


「父様……」


 このまま放っておくと止まらなくなりそうなのでこの辺で止めておく。


「おっと、すまない。アミ―ちゃん、その話はまた今度聞かせてくれ」


 いったい何の話をしていたんだか……。


「それで、アミ―は城で働いてくれるそうです」

「ふむ……アミ―ちゃんはそれでいいのかい?」

「えっと……はい! お城で働きたいです!」

「そうか。私は君を歓迎するよ」


 こうしてアミ―は正式に城仕えのメイドとなった。


 アミ―が俺と父様の正体に気づくのはまだ少し先のことである。




 あの後、また父様とアミ―が話始めたが、リーラがアミ―を連れて行ったことにより会話は終了した。


 部屋に俺と父様しかいなくなったので俺はアミ―から聞いたことをそのまま父様に伝える。



「……以上のことから、この事件には第三者が存在します」

「正体不明の女か……」


 父様も心当たりはないようだ。


「裏組織はどうなりましたか?」


 俺は踏み込んで聞いてみる。

 父様は少し難しい顔をしてから教えてくれた。


「この街の裏組織はテロムクと一緒に()()したからもう存在しないよ」


 つまり、潰したということだ。

 さすが父様、仕事が早い。


「お早いですね」

「なに、ルナのおかげさ」


 父様はそう言って俺の隣に来てまた頭を撫でてくれた。

 父様に頭を撫でられるのと、心が温かくなる。

 癖になりそうだ。


 俺はしばらく父様に頭を撫でられた後、部屋に入ってきたテロムク伯爵にも同じ内容を話し、ものすごく感心された。






 俺は今、タミーシャから王都に帰る馬車の中でリーラの授業を受けている。

 いつもは俺とリーラの二人だけなのだが、今日は俺の隣にアミ―がいる。

 しかもなぜか俺にぴったりくっついて離れない。

 これからのことがいろいろ不安なのだろう思い、俺は口を出さないことにした。


「今日は魔法についてです。魔力を変換して起こした事象のことを魔法といいます。魔法を発動させるにはイメージが非常に重要で、そのイメージが定まらないと魔法は発動しません」


 イメージが大事なのか。

 ……ん?


「その理論だったら、しっかりとイメージさえ出来れば詠唱なんていらないんじゃないのか?」


 普通、魔法を発動させるには詠唱が必要だ。

 だが今の話を聞いてみて、イメージだけでも魔法は発動させれるのではないのかと思った。


「“出来れば”の問題です。魔法が得意な者でも完全に詠唱を省くことはできません。詠唱破棄ができる魔法使いはほんのひと握りの魔法使いのみです」


 うーん……。

 よくわからないな。

 

「ちなみに、そのほんの一部の魔法使いの中にはフーリ様も入っていますよ」


 か、母様……?

 母様っていったい何者なんだ?


「リーラさん、魔法ってどうすれば使えるようになるんですか?」


 ここまで静かだったアミ―がリーラに質問する。


「今すぐにでも使えますよ」」


 ……えっ?

 そうなの?

 鑑定の水晶とやらで自分の使える属性を知らないと使えないのかと思っていた。


「使えるといっても馬車の中ではあまり魔法は使えないので、無属性魔法の『身体強化』と『探知』くらいですが」


 身体強化は多分、文字通り身体能力が強化される魔法。

 探知は周りの状況を確認するとかかな?


「どうすれば使えるようになるんですか!?」


 アミ―は魔法に興味津々なようだ。

 

「そうですね……先ずは、体の内側に気を集中させてください。そうすると、何か自分の中に流れているものがわかると思います」


 リーラの指示に従い、俺は体の内側に気を集中させる。

 すると、何やら体内で渦巻いているものを感知できた。

 これが魔力か……。


「うーん? このグルグルしてるやつですか?」


 アミ―も魔力を感知できたようだ。


「魔力を感知できたら、その魔力を体全体に広げていくようイメージします」


 俺は体の中で渦巻く魔力をゆっくりと、全身に広げていく。

 魔力が全身に広がっていくにつれ、だんだん体が軽くなってきた。


「難しいです……」


 アミ―は魔力の操作が上手くいかず、苦労しているようだ。


「最初はそんなものです。ルナ様はセンスがおありですね。上手いこと全身に魔力が広がっています」


 センスがある……。

 俺はその言葉に感動を覚えた。


 前世では何をやっても上手くいかなかった。

 センスがなかったのだ。


 駄女神はもう大丈夫だと言っていたけど、実際に体感すると込み上げてくるものがある。


「ルナ様は少し難しい()()にも挑戦していただきましょうか。探知は身体強化とは違い、体の外に魔力を放出する魔法です。目を閉じて少しずつ魔力を外に放出してみてください」


 俺は目を閉じ、魔力をコントロールして少しずつ魔力を体外に放出していく。

 すると、ぼんやりとだが目を閉じていても周囲の状況がわかるようになってきた。


「お見事です。では……ルナ様?」


 俺はさらに魔力を広げていく。

 薄く、薄く、さらに薄く。

 そうすることにより鮮明に周囲の状況が確認できるようになる。

 人の表情、呼吸のタイミング。


 さらに探知の範囲を広げようとして――俺は意識を失った。

 

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