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才能に愛されし者  作者: きんめ
第三章 人の美しさ、人の醜さ
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白い光

 ミラが安全な場所まで逃げられる時間を稼いでいたイザベラだが、既に満身創痍の状態であった。

 異形の魔物も多少は傷を負っているが、イザベラが異形の魔物から受けたダメージはそれを遥かに上回っていた。

 

 

(強い……)

 


 異形の魔物から視線を外すことなく、イザベラは胸中で呟く。

 対人戦、対魔物戦共に圧倒的な実力を誇るイザベラだが、異形の魔物はそんなイザベラを上回っていた。

 

 達人のような身のこなしに加え、人外の膂力。

 人型でありながら、尻尾などの部位を巧みに使った戦闘方法。

 そして何より、イザベラの行動を予測して動く知能。


 百戦錬磨のイザベラでも、これほど滅茶苦茶な生物との戦いは初めてだった。



 ―――グルァァァァ!!



 異形の魔物が咆える。

 それを聞いたイザベラは瞬時に後退する。

 次の瞬間、地面が陥没するほどの力を込めて、異形の魔物がイザベラの居た場所を殴りつけていた。



「速い……」



 そう漏らしたイザベラは、苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべていた。

 直感で攻撃こそ回避できたが、イザベラは異形の魔物の姿が目で追えなかったのだ。


 

「ハッ!」



 気合の声と共に、イザベラが鞭を振るう。

 鞭の先端は音速を超えており、更にイザベラ自身も魔力を循環させ身体を強化させている為、普通ならばその攻撃を回避することなど不可能である。


 そう―――()()()()()



「本当に滅茶苦茶ね……」



 イザベラの口から出た言葉は、心底悔しそうなものであった。

 先程異形の魔物が居た場所には何も存在せず、その異形の魔物は恐るべき速さでイザベラの背後に移動していた。

 

 最早、勝敗は決した。

 この異形の魔物は、明らかに生物としての域を超えている。

 


「ミラ……」



 今は亡き娘によく似た幼女の顔を思い浮かべながら、イザベラは“その時”を待ったのだが―――いつまで経ってもイザベラの意識が途絶えることはなかった。




 ◆◇◆




 パチ、パチと、この場には場違いな拍手がイザベラの耳に届いた。



「うん、素晴らしい」



 中性的な声で、拍手をしている人物がイザベラの目の前に現れた。

 だが、その人物は全身から“白い光”が放たれている為、容姿を確認することはできない。



 ―――ガアァァァァ!!



 咆えながら、異形の魔物が“白い光”に襲い掛かる。

 その速度は、イザベラの背後を取った時よりも数段上だった。

 異形の魔物はイザベラよりも“白い光”に大きな脅威を感じているのだ。



「醜いね」



 呟くとともに、“白い光”が何もない空間へ右手の人差し指を突き出す。

 何気ない動作だったのだが、次の瞬間――そこには、異形の魔物が胸を貫かれた状態で立っていた。


 

「斃れた神の残骸よ、無に帰すがいい」



 “白い光”が紡ぐ口上とともに、異形の魔物が塵となって消えていく。

 やがて異形の魔物は、完全に消滅した。




 

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