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才能に愛されし者  作者: きんめ
第三章 人の美しさ、人の醜さ
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迷宮探索

 翌日の朝。

 ミラとイザベラは“安らぎの揺り籠”で朝食をとってから、迷宮の調査を行う為に西方の森に向かっていた。



「ねぇ、本当にあの森に迷宮があるの?」


「えぇ、()()()わよ」



 然も既に迷宮を発見しているかのような発言であった。

 


「あった? イザベラはもう迷宮を見つけたの?」


「見つけるも何も、昨日から迷宮の存在は把握していたわよ」



 実はイザベラは、昨日ミラがゴブリンを斃している最中には既に異変を感じており、こっそりと探知の魔法で森の中を調べていたのだ。 

 

 そんな話をしている間に、二人は森の入口へと辿り着いていた。

 

 森の中に入った二人は、イザベラを前衛、ミラを後衛として迷宮へと向かっていく。

 道中ではゴブリンの集団との戦闘が何度かあったが、すべてミラの矢の餌食となった。


 

「……さっきのゴブリンより速い?」


「そうね……今ミラが射抜いたゴブリンはホブゴブリン。ゴブリンの上位種ね」



 ミラが射抜いたゴブリンの亡骸を観察し、イザベラの口から出た言葉はゴブリンの上位種の名前だった。

 ホブゴブリン。

 ゴブリンの上位種で戦闘能力、知能共にゴブリンよりも優れている。

 通常種のゴブリンの危険度はFなのだが、ホブゴブリンの危険度はDだ。



「迷宮の外にホブゴブリンがいるってことは……」



 その足を止めることなく、イザベラは思考に耽る。

 当然ながら、迷宮の外にいる魔物よりも迷宮の中にいる魔物の方が強い。

 迷宮の外にいる魔物というのは、迷宮の中で生存競争に破れた魔物だからだ。

 早くもゴブリンの上位種のホブゴブリンが現れたということは、迷宮内にはホブゴブリンよりも上位の魔物が巣食っているということになる。

 


「……ベラ! イザベラ!」


「っ? ミラ?」



 不意にミラに声をかけられ、足を止めるイザベラ。

 後ろを向くと、そこには訝しげな視線を前方に向けているミラの姿があった。



「あれが迷宮の入口?」


「そうみたいね」



 ミラが視線を向けている場所には、迷宮の入口と思われる洞窟があった。



「じゃあ行きましょうか」



 まるで散歩へ出かけると言わんばかりの気軽さで、イザベラは洞窟へと歩を進める。

 そんなイザベラの後を、ミラは慌てて追いかけた。




 ◆◇◆




 迷宮の中へと足を踏み入れた二人は現在、迷宮内の太陽の下でホブゴブリンよりも更に上位のゴブリンであるゴブリンナイトと戦っていた。

 ――否、蹂躙していた。


 迷宮の外では戦闘に参加していなかったイザベラが、突然戦闘に参加し出したのだ。

 Sランク冒険者であるイザベラにとって、危険度Cのゴブリンナイトなど路傍の石ころ同然の存在であった。


 

「鞭……」



 ミラがイザベラの武器を見て呟く。

 Sランク冒険者であるイザベラが愛用している武器は鞭だった。

 


「凄い……」



 ミラがイザベラの鞭捌きを見て驚嘆の言葉を漏らす。

 イザベラが鞭を振るう度に、鞭はまるで生き物のように動き、敵を薙ぎ払っていくのだ。

 いくら無知なミラでも、その鞭捌きの凄さは理解できた。



「これで終わりかしら?」



 周囲の状況を確認しているイザベラだったが、イザベラの周囲にはゴブリンナイトだったものが散乱しているだけで、ミラとイザベラ以外の生き物は存在していなかった。

 

 

「本当に迷宮の中って外の世界と変わらないのね……」



 ミラが青い空を見上げながら呟く。

 青い空にしっかりとした大地、頬を撫でるそよ風。

 どれをとっても外の世界と同じ環境であった。


 

 ―――ゴガァァァァァアアアアッッ!!!



 突如として、魔物の叫び声が迷宮内に響き渡った。



「なっ、なにっ!?」


「シッ……」



 慌てふためくミラの口をイザベラが塞ぐ。

 ミラの口を塞いだまま、イザベラは先程叫び声がした方向に向かっていく。


 気配を殺しながら叫び声がした場所に近づいていくイザベラ。

 数分後、そこに辿り着いたイザベラが目にしたモノは―――



「ッ……アレはいったい……」



 ―――山のような大きさのゴブリンの死体を喰らっている異形の魔物だった。






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