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才能に愛されし者  作者: きんめ
第三章 人の美しさ、人の醜さ
63/69

悪戯心

 加筆修正しました。

 矢がドスッという音を立ててゴブリンの頭部に突き刺さる。

 頭部に矢が突き刺さったゴブリンは、断末魔を上げることなく息絶えた。



「まっ、こんなもんよ」



 薄い胸を張りながら、ミラがイザベラにドヤ顔を向ける。

 ()()()()で、無傷でゴブリンを倒せたのだ。

 ミラとしては上出来の結果だった。

 

 一方、ミラにドヤ顔を向けられたイザベラは、表情にこそ出さないが非常に落胆していた。

 


(まさかこの程度なの? ゴブリンの頭部も吹き飛ばせないなんて……)



 イザベラの知り合いのエルフは、()()()()()()()している。

 だから同じエルフであるミラの実力も相当なものだと思っていたのだが、実際は大したことはなかったのだ。

 期待外れだった、というのがイザベラの偽らざる本音だった。


 

 現在、ミラとイザベラはシュララマの街から然程離れていない所にある森にやってきていた。

 何故二人がこの森にやってきたか――時は少し遡る。




 ◆◇◆




「――この依頼とかどう?」


「サイクロプスって危険度Bの魔物でしょ? 冗談じゃないわ」



 イザベラが手に持っていたサイクロプス討伐の依頼書をミラが元にあった場所に戻す。

 サイクロプスという一つ目巨人の魔物の危険度はBランク。

 ()()()()()()()のイザベラからすれば鎧袖一触の相手なのだが、ミラからすれば何故いきなり危険な魔物の討伐依頼を受けなければならないのか理解できなかった。



「――これとかが丁度いいんじゃない?」



 そう言いながらミラが手に取った依頼書は、街の近くの森に巣食うゴブリン討伐依頼。

 依頼書に記載されている冒険者ランクの適正はF。

 初心者でも問題なく討伐できるという判断をされている魔物の討伐依頼である。



「さっ、行きましょ」



 依頼を受注したミラが、冒険者ギルドの入口兼出口に向かって歩いていく。

 イザベラは不承不承にミラを追いかけ、冒険者ギルドを後にした。




 ◇◆◇

 


 

 また一体のゴブリンがミラの矢に頭部を貫かれて息絶える。

 既にミラが討伐したゴブリンの数は五十を超えており、イザベラはその様子を欠伸(あくび)をしながら見守っていた。



(へぇ……)



 先程はミラの実力が自分の予想より遥かに下だった為に落胆していたイザベラだが、今はミラの評価を改めていた。

 五十ものゴブリンを討伐してもミラの息は上がっておらず、今もまた現れたゴブリンを斃したところだ。

 その姿に疲れは感じられず、見た目以上にタフということが窺える。

 


「多い~」



 ミラはぼやきながらも矢を番え、ゴブリンに向かって放つ。

 一射一射の威力も一定であり、ミラの余裕が感じられる。



(センスは十分ね)



 知り合いのエルフ程ではないにせよ、ミラの戦闘センスには光るモノがあるとイザベラは感じていた。

 鍛えればSランク冒険者には及ばずとも、それこそ本当にBランク冒険者と同じような実力を得ることができるかもしれない、と。



(でも、ちょっと油断しすぎじゃないかしら……)



 ミラは背後にはイザベラが居るからか、後方への警戒を行っていなかった。

 仮に今、もしイザベラがミラを襲ったとしたら、ミラは何の抵抗もできずにイザベラに殺されてしまうだろう。



(……ちょっと脅かしてみようかしら)



 イザベラの悪戯心が(そそ)って、その美顔に笑みが浮かんでいく。

 男がその笑みを向けられた暁には、イザベラが自分に惚れていると勘違いしてしまうだろう。


 イザベラがミラの背を見つめ、殺気を放とうとした――まさにその時だった。



「―――ッ!?」



 イザベラはその場から瞬時に飛び退()いた。

 

 一体何が起こったのか。

 イザベラにもそれは分からなかったが、身体が――本能が勝手に反応したのだ。

 

 イザベラは幻視した。

 ミラの背中から“黒い珠”が飛んでくる光景を。



「んっ? どうかした?」



 イザベラの異変に気が付いたミラが振り返り、イザベラに声をかける。

 だがイザベラは、振り返えったミラの姿を見て絶句した。


 ミラの本来の瞳の色は髪の色と同じで薄い紫色なのだが、今のミラの瞳の色は――白と黒のオッドアイだった。

 

 


 

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