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才能に愛されし者  作者: きんめ
第二章 魔法学院編
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虚偽の報告

「―――以上が私の目撃した全てです」


「……そうか。龍……か」


 

 ピランジェ城の謁見の間で、マリリエルは今回起きた出来事の説明を行っていた。

 今回起きた出来事とは、太陽を思わせるような強大な火の玉の出現、及び世界を揺らすほどの謎の咆哮―――龍の出現についてである。


 マリリエルの報告を聞いた国王は、眉間を押さえながら天を仰いだ。

 


 龍―――それは天災と同義である。

 地震や噴火、嵐や津波などといった自然災害と同様のもの。

 人の手には余る存在だ。



「仕方がない、で済ませたくはないが……この件に関しては仕方がないな」



 仕方がない。

 そう判断した国王を見て、マリリエルは胸を撫で下ろした。


 何故マリリエルが胸を撫で下ろしたのか。

 それは、マリリエルが虚偽の報告をしたからだ。

 勿論、全てが虚偽の報告というわけではない。

 少なくとも龍が現れたという報告は本当だ。


 だが、マリリエルはその一点の報告しかしていない。

 ルナ、そしてルナの姿をしたナニカに関しては何一つとして報告していないのだ。

 それはつまり、ルナの姿をしたナニカが“龍を()()した”ということを報告していないということである。


 

「して、マリリエル。龍は何故この地に現れたと思う?」



 国王がマリリエルに問う。

 この問いを予想していたマリリエルは、()()()()()()()()()()を国王に返した。



「私の推察ですが……二キム・ミンジェがすべての始まりかと」


「二キム……どうして奴がここで出てくる?」


「陛下、今回龍が出現した場所をご存知でしょうか?」


「それは……まさかッ!」


「はい。二キム・ミンジェの屋敷のあった場所です。二キム・ミンジェには黒い噂がありました。それはご存知でしょうか?」


「……知らんな」


「二キム・ミンジェは裏ルートで希少な()()を収集しておりました。例えば……そう、竜の卵など」


「何ッ……まさかそれで……」


「あくまでも私の推察です。ですが、龍が言っていたのです。『コレは我の大切なものを盗んだ。許さぬ』と」


「あの阿呆がッ! 余が直々の首を刎ねてくれるわ!」


「それには及びません。二キム・ミンジェは既に龍によって()()しております」


「……そうか」



 国王が再び眉間を押さえ、天を仰ぐ。

 マリリエルはそんな国王の姿を見て、小さく息を吐いた。


 今の国王の様子を見るに、国王はマリリエルの噓を信じ込んでいる。

 龍という天災の出現で視野が狭くなっているということもあるだろう。

 

 何はともあれ、すべてがマリリエルの思い描いていた通りの展開だ。



()()()()()()()陛下、私は龍がどのようにあの場所へ出現したのかが気になります」


「どのように出現したのか?」



 無礼とも取れるマリリエルの呼びかけに国王が応える。

 


「はい。あの龍は、突然あの場所に姿を現しました。飛来したのではなく、突然あの場所に現れたのです」



 マリリエルが論点をずらしていく。

 だが国王はその事実に気づいた様子もなく、マリリエルの話に食いついた。



「未知の魔法、ということか?」


「そうです。私の予想が正しければ……時空間魔法ではないかと」


「何ッ!? 時空間魔法……余の知らない魔法か。相分かった、マリリエル、下がってよいぞ」


「失礼します」



 マリリエルは何食わぬ顔をして謁見の間から退出する。

 謁見の間から退出したマリリエルは足早に城を後にし、すぐに自分の屋敷へと戻った。




 ◇◆◇




「カウディ、しばらく空けるから。後はよろしくね」


「かしこまりました」



 急いで旅支度をするマリリエルは、準備を手伝っているカウディに告げた。

 カウディは何の動揺もなく、マリリエルの言葉を受け止める。

 他の屋敷の執事達ならば動揺することなのだろうが、カウディにとっては慣れたことであった。



「――そうだ。アミーを呼んできて頂戴」


「かしこまりました」



 一礼してカウディが部屋から出ていく。

 数分後、涙を流し過ぎて目が腫れているアミーがカウディに連れられて部屋に入ってきた。


 

「アミー、ウィンデールに行くわよ」



 マリリエルは覇気のないアミーに告げた。

 

 

 

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