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才能に愛されし者  作者: きんめ
第二章 魔法学院編
43/69

ナニカ

 気づいたらブクマ50超えてました。

 ありがとうございます。

「あ、兄貴っ! 兄貴って王子様だったんすか!?」



 棟に返ってくるや否や、ゼノがものすごい形相で詰め寄ってきた。

 


「そうだが……」



 ゼノの迫力に若干気圧されながらも、俺は冷静に答える。



「ま、マジすか! すっげぇ! やっぱ兄貴はすげえっす!」



 すげえすげえと俺の前で連呼するゼノ。

 何がすげえのかはわからないが、ゼノの琴線に触れることがあったのだろう。


 

「ちょっと、ゼノ。先生が困ってるじゃない」



 ゼノの一連の行動を見かねたのか、エルフの少女アリーヤがゼノに注意を促す。

 だがゼノを注意しているアリーヤの腕はアミーの腕に絡まっており、アミーを逃がさないよう固定されているので説得力がない。



「なんだよ、そっちだってアミー先生が困ってるじゃねえか」


「ゼノ君、女の子には聞かねばならぬことがあるのです。そう、どうすれば玉の輿に乗れるのか……」


「たまのこし?」



 アミーのもう一本の腕を掴んでいるキャローナが真剣な表情でゼノに語る。

 だがゼノは玉の輿という言葉を聞いたことがないのか、目を白黒させている。



「そういうことよ。わかったら先生から離れなさい……って先生? 大丈夫?」


「……? 突然どうした?」



 俺の顔を見たアリーヤが心配そうな顔で聞いてきた。

 


「そ、それ……」



 アリーヤが恐る恐るといった感じで俺の髪を指差す。

 

 俺は自分の髪を一房(すく)う。



「……っ!?」


 

 髪の色が違う。

 いや、現在進行形で変色してる。


 俺の髪の色は母さんと同じ銀色だ。

 それなのに……だんだんと紫色に……。



「何が――」


 

 そう呟きかけた瞬間、俺の意識は闇へと沈んだ。




 ◆◇◆




「何で止めたの?」



 その一声で俺は目を覚ます。

 目を開けると、俺は辺り一面『黒』としか表現できない空間にいた。



「止めた?」



 目の前に立っている声の主に、俺はそう返す。

 


「ボクは殺そうとしたんだ。でも、ルナは止めた。何で?」



 ……そうか。

 そういうことか。

 ようやく合点がいった。


 俺はあの時、二キムを害するつもりなんてなかった。

 ましてや腕を切断するつもりなんてなかった。

 だが突然、俺の意志に反して身体が動いたのだ。


 

「お前があいつを殺そうとしたのか?」


「そうだよ。首を飛ばそうとしたんだ。なのにルナが邪魔したから……」



 声の主は心底残念そうに肩を落とす。



「そこまでする必要はあったのか?」


 

 アミーのことを考えれば、確かに二キムにはそれ相応の罰を受けさせなければならい。

 だが命まで取る必要はないはずだ。


 そう思い、俺が声を発した瞬間――。



「――は?」



 声の主から凄まじい殺気が放たれた。

 瞬間、鳥肌が止まらなくなる。



「ねぇ、何言ってるの?」



 紫色の長髪を揺らしながら、声の主は俺に近づいてくる。

 身体の震えが止まらない。



「ルナは自分の記憶を消したから覚えていないかもしれないけど、ボクは今でも鮮明に覚えてるんだよ」


「……?」



 こいつはいったい、何を言っている?

 


「今回は見逃してあげるよ。でも、次はないからね」



 殺気が止む。

 俺と瓜二つの顔をした少年が、(きびず)を返しどこかへと歩いていく。



「お、おい。ちょっと待て……」



 呼びかけると、少年が足を止め振り返った。

 紫色の長髪がさらりと揺れる。



「なに?」


「お前は……自由に()()()()()()()()



 俺の問いに、少年は穏やかに微笑んだ後――。



「心に隙があれば――」


 

 そう言い、再びどこかへと歩きだす。

 俺はその姿が見えなくなるまで、少年の背中をずっと眺めていた。


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