事後処理
お久しぶりです。毎度のことですが、投稿が遅くなってしまい申し訳ありません。
応援メッセージが届きましたので、気合を入れて書かせていただきました。
応援メッセージ……モチベめっちゃ上がりました。ありがとうございます。
P.S.文章の書き方を少し変えてみました。
良し悪しをコメントなどで教えていただけると嬉しいです。
「えっ?」
宙に浮かぶ鮮血を見て誰かが声を漏らす。
そしてその声は、すぐさま悲鳴に変わった。
「キャァァァア!!」
Aクラスの女子生徒が悲鳴をあげる。
だが俺は柳に風と悲鳴を聞き流し、Aクラスの担任に問うた。
「お前、何様だ? たかが子爵の分際で何をほざいている。アミーは俺のものだ。にもかかわらず、ペラペラペラペラと……殺されたいのか?」
胸の内から何かがあふれ出てくる。
怒り、憎しみ、殺意、それらの感情がとめどなく……。
「き、貴様! 私がこの国の子爵と知っての狼藉か!」
Aクラスの担任が肘から先のない左腕を押さえながら叫ぶ。
「お前は耳が悪いのか? たかが子爵の分際で何をほざいている、と俺は言ったんだ」
子爵というものは、国は違えど位としては同じものだろう。
王子と子爵。
どちらの位が高いかと問われれば、当然王子の方が位は高い。
「名乗れ」
俺はAクラスの担任の腕を風魔法で浮かせながら言った。
「ッ……私は二キム子爵……」
「俺はルナ・ウィンデール。ウィンデール王国の王子だ」
二キムとかいう子爵の名乗りに、俺はわざと言葉を被せる。
そうすることで、お前より俺の方が位が高いということを強調しているのだ。
「アミーは俺のものだ。将来、側室になることも決まっている。そんな相手にお前は何と言った?」
「そ、それは……」
言えないだろう。
声をかけるだけならまだしも、こいつは将来ウィンデール王国の王族の一員になるアミーに対して側室にしてやると言い放ち、か細い腕を強引に掴んだのだ。
二キムは今更事態の重さに気づいたのか、顔面蒼白になっている。
「アミー」
俺はアミーを呼び寄せる。
「は、はい……」
アミーはおずおずといった感じで近寄ってきた。
俺はそんなアミーを強く抱きしめる。
「あ、あの……」
「すまなかった」
俺は謝った。
二キムに腕を掴まれた時、アミーの瞳には一瞬、強い恐怖の色が浮かんだのだ。
怖かったのだろう。
アミーは上手く隠していると思っているのかもしれないが、俺は知っている。
アミーは高圧的な態度で接してくる人間が苦手なのだ。
これは恐らく、タミーシャの街での出来事が起因している。
タミーシャの街で奴隷同然の生活をしていたアミーは恫喝、暴力、こういったものを日常的に受けてきたのだ。
腕を掴まれた瞬間、その時の光景が脳裏をよぎったのかもしれない。
「はい……」
俺の胸に顔をうずめたアミーは静かに泣きだした。
周囲には聞こえないように、小さな声で。
◆◇◆
「さて……」
アミーが泣き止んだあと、俺は肘から先のない腕を抑えている二キムに意識を向ける。
切断した二キムの腕は、未だに俺が風魔法で浮かせたままだ。
「何か言いたいことはあるか?」
「……私がこのことを国王様にお伝えすれば、ウィンデール王国の王子であるあなたと言えどもただではすまない」
「このこと……とは?」
「この腕のことだ。今回の件、いくら私に非があろうとも腕を切断するのは度が過ぎている」
なんだ、そんなことか。
俺は風魔法で浮かせている腕を二キムに返すや否や、治癒魔法を発動させた。
『パーフェクトヒール』
俺が治癒魔法を発動させると同時に、周囲を神々しい光が包む。
そして光が収まった時には、二キムの腕は元通りになっていた。
「なっ!?」
二キムは心底驚いたようで、驚嘆の声をあげる。
二キムの受け持っているAクラスの生徒達は事態が呑み込めていないようで唖然としている。
「帰るぞ」
俺はアミーをお姫様抱っこしたあと、Aクラスの生徒達同様に唖然としているCクラス生徒達に声をかけ、Aクラスの生徒達がいる入口兼出口に向かって歩き出す。
俺が近づいていくと、まるで海が割れるかのようにAクラスの生徒達が道を開けた。
「ちょっ、先生、待ってください」
「……兄貴! 俺はあんたにいつまでも付いていくぜ!」
「せんせー!」
「あ、あんた……とんでもないわね……」
騒がしい声、そして足音とともに、自慢の生徒達が駆け寄ってくる。
あぁ、そういえばAクラスの奴らに言わなければならない言葉があるんだった。
俺は白いローブのフードを外し、Aクラスの生徒達を一瞥する。
「Cクラスの生徒達は落ちこぼれじゃない。わかったか?」
殺気を放ちながら問うと、Aクラスの生徒達は皆首がちぎれるくらいの勢いで何回も頷いた。
俺は瞬時に魔力を開放し、『転移』を発動させる。
一気に巨大な魔法陣が俺達を飲み込み、訓練場の景色は見えなくなった。




