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才能に愛されし者  作者: きんめ
第二章 魔法学院編
37/69

一年Cクラス

 おかげさまで、十万字突破です。

 

 

流星群(メテオ)』とは、俺のオリジナル魔法の一つだ。

 この魔法は、はるか上空に数個の巨大な星を作り出して落とすという()()()()()魔法である。


「ちょっとやりすぎ……」


 壇上からマリリエルの声が聞こえてきたが、俺はあえてその声を無視する。

 面倒ごとを押し付けてきたマリリエルの言うことを聞く道理はない。


 星が轟轟と音を立て、地上に迫ってくる。

 流石にこの魔法が広場に落ちたら死人が出てしまう。

 なので、俺は魔力を操作して――星を粉々に砕いた。


 砕けた星の欠片が、キラキラと広場に舞い落ちる。


「「「「「わああぁぁぁああああ!!!」」」」」


 直後、周囲の観戦者達の大歓声が俺を包み込んだ。 


「す、すげぇ!」

「きれい……」

「私、あんなすごい人に教えてもらえるんだ!」


 様々な声が飛び交う。

 どうやら、観戦者達は俺の実力を認めてくれたようだ。

 

 そして、俺に言いがかりをつけてきた男はというと……

 

「格が……いや、次元が違う」


 両膝を付き、ぶつぶつと独り言を呟いている。


 ……なにあれ。

 近づきたくない。


 内心でそう思っていると、両膝を付いていた男が飛び上がり、俺の方に走ってきた。

 この男の名前は確か……ナックルだったな。

 ナックルは俺の目の前で立ち止まり――土下座した。 

 

「申し訳ございませんでしたァッ!!」


 一瞬、思考が停止した。


「えっ? ……あ、頭を上げてくれ!」


 こんな大勢の前で土下座されるなんて……俺が悪者みたいじゃないか。

 だがナックルは俺の言葉を無視し、土下座をしながら俺へ謝罪をし始めた。


「見た目だけで貴方様の実力を疑い、結果ここまで力の差を見せつけられる始末。このような未熟者相手にお手を煩わせてしまい、申し訳ございませんでした!」

 

 ……なんとなくだが、ナックルの言いたいことはわかった。

 先ず、見た目で俺が弱いと疑ったこと。

 だが俺とナックルの間には圧倒的なまでの実力差があった。

 にもかかわらず、わざわざ自分のような未熟者の相手をさせてしまい申し訳ない。

 こう言っているのだろう。


「気にしないでくれ。ただ、見た目だけで相手の実力を決めつけているようじゃいつまでたっても三流だぞ」

「はっ! 肝に銘じておきます!」


 立ち上がったナックルが、ビュンッ! と空気を切る音を出しながら敬礼をする。

 ……ウィンデールの騎士達に似ているな。


「もしよろしければ貴方様の名前をお教えいただけないでしょうか?」


 ナックルに名前を聞かれ、俺は一瞬言葉に詰まった。

 フルネームは……まずいよな。


「……ルナだ」

「ルナ様……」


 名前を聞いたナックルは、崇拝の目で俺のことを見つめていた。






 デモンストレーションを終えた俺は、再び壇上へと上がり入学式の進行を眺めていた。


『次は、いよいよ一年生のクラス担当の教師の発表に移りたいと思います』


 進行担当の教師の言葉に、新入生達がざわつき始める。

 進行担当の教師も風属性に適性があるようで、声を風に乗せて拡散させていた。


『静粛に! では学院長、よろしくお願いします』


 マリリエルが壇上の中央に立つ。


『では、Sクラスの担任を発表する。Sクラスの担任は……ナックル先生!」


 名前を呼ばれたナックルは生徒達が並んでいる列の目の前に移動する。

 あの列にいる生徒がSクラスの生徒なのだろう。


『次に……』


 Aクラス、Bクラスの担任が発表された。

 次はCクラスの担任発表だ。


『Cクラスの担任は――ルナ先生!』


 俺の担当するクラスはCクラスか……。

 端っこの列がCクラスなのだろう。

 列と言っても七人しかいないが。

 壇上から降りた俺は、端っこの列に向かって歩いていく。

 俺の後に続いて、アミーも壇上から降りる。


 端っこの列の前に立つ。

 目の前には俺と同じくらいか少し上くらいの年齢の子供がいる。


『以上でクラス担当の教師の発表を終了する。では、クラスを受け持った先生方は生徒達を引率して各棟へ移動してくれ』


 マリリエルの指示に従い、各クラス担任達は棟へと向かっていく。


「行くぞ」


 先頭の子に声をかけ、俺はCクラスの棟に向けて歩を進める。

 後ろの列もちゃんとついてきてくれているみたいだ。



 十分ほど歩き、俺は重大なミスをしていることに気が付いた。

 俺……棟がどこにあるのか知らない……。

 焦りを面に出さないように、ゆっくりと周りを見渡す。

 

 どこを見ても、同じような巨大な建物が建っている。

 少し離れたところには噴水があり、その周りには露店のようなものが立ち並んでいる。

 まるでこの学院自体が一つの街のようだ。


「アミー……Cクラスの棟ってどこにある?」


 生徒達に聞かれないように、アミーに小さな声で聞く。

 アミーにジト目で見られたが……仕方ないだろう。


「あの正面に見える巨大な建物がCクラスの棟です」


 運がいいのか、俺は目的地に近づいていたようだ。






 棟の中に入り、教室っぽい部屋に入室した。

 管理者っぽい人が、この棟は一年Cクラス専用の棟だとか言っていたが……聞き間違いだろうか?

 七人でこの棟は大きすぎる。

 

 生徒達はこの棟で生活し、この棟で授業を受けるらしい。

 身支度や移動などの時間を考えると、なかなかに効率的だ。


 教室の中では、すでに生徒が席についている。

 教師が初めにやることと言えば……自己紹介だろうな。


「Cクラスの担任を務めることになったルナだ。こっちは俺の従者兼サポート役のアミー」

「アミーと申します。以後お見知りおきを」


 俺の横に控えているアミーが、スカートの裾をつまみ一礼する。

 

「俺達からの自己紹介は以上だ。何か質問はあるか?」

「はい!」


 教室を見渡しながら聞くと、一人の獣人の少女が手を上げた。

 

「君の名前は?」

「みんです!」

 

 ミンと名乗った少女は、帽子からたれ耳を覗かせ興味津々といった感じで俺に視線を送っている。


「それで……質問とは?」

「るなせんせーはなんさいですか!」


 ……めっちゃ元気だ。

 あまりの声の大きさに、ミンの隣にいる生徒は両手で耳を塞いでいる。


「十歳だ」

「じゅっさい! いっしょだね!」

「あ、ああ……」


 なんて言えばいいのかわからないが……初めてのタイプだ。

 

「はぁ? なんで同い年の男が私の担任なのよ」


 ミンとは反対側の席に座っている女の子が声を上げた。


「君の名前は?」

「君……? 教師風情が私に君なんて言葉使っていいと思ってんの?」


 ……こっちも初めてのタイプだ。

 金髪の縦ロールで気の強そうなツリ目。

 見た感じ、典型的なお嬢様だ。


「……あなたのお名前は?」

「ふんっ。仕方ないわね、教えてあげるわ! 私の名前はテミス・ライギアよ」

「っ!?」


 テミス・ライギア……ライギア帝国の第九皇女。

 テミスと名乗った少女は、かつて俺が絶対に関わりたくないと願った少女だった。

 

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