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才能に愛されし者  作者: きんめ
第一章 幼少期編
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銀の糸

 目の前にある鑑定の水晶が銀色の輝きを放っている。

 

 光、闇、治癒、時空間などの系統外属性とは違う。

 これがユニークやつなのか?


「ユニーク……だな」


 静まり返っている部屋の中に、父様の声が響く。


「ユニークを持っている者はその存在を自覚した瞬間に、そのユニーク魔法が何の能力を持っているかわかると聞くが、どうだ?」


 父様に聞かれ、俺は驚愕に目を見開いた。

 父様の言った通り、俺はユニーク魔法の能力を理解しているのだ。


「……わかります」

「そうか! どんな能力だ?」


 俺のユニーク魔法は……。


「召喚……という能力です……」

「召喚だと!?」


 今度は俺の言葉に、父様が目を見開いた。


「父様、召喚というのは何なのでしょうか?」


 俺はこの世界では召喚という言葉を聞いたことがない。

 前世のラノベではよく見た言葉だが。


「召喚か……。私がまだ幼かった頃、母上が夜に御伽噺(おとぎばなし)を聞かせてくれていたんだが……その中の一つに召喚魔法を使う神の話があった」


 もう亡くなっていて会ったことはないが、俺の祖母に(あた)る人だな。

 その御伽噺の中に登場する神が持つユニーク魔法が召喚だっていうのか?


「その御伽噺は太古の神々が争いあう話で、その争いを終わらせた神こそが、その召喚魔法を使う神だった。その神は銀の魔力を纏い、龍達を従いて争いを終わらせたという……」


 龍……最強の生物と呼ばれるドラゴンより上位の存在。

 ドラゴンが長き月日を経て進化したものだと考えられている。

 龍は知性を持ち、人間の言葉も理解できるという。


「その龍も、神と同じく銀の魔力を纏っていたそうだ」

 

 今の話を聞いている限りでは、その神が召喚した生物が龍ということになる。

 それも複数。

 その龍が召喚者である神と同じ銀の魔力を纏っていたということは、召喚された生物は召喚者の魔力を糧として行動するのだろうか?


「取り敢えず、やってみるか」


 俺はずっと固まっている父様以外に声をかける。

 その時――。


「ルナー!」

「ぐふっ」


 母様が俺の名前を呼びながらいきなりタックルをかましてきた。

 突然の出来事だったので、すごく痛い。


「凄いわ! クアトロで、系統外の属性にもに適性があって、しかも御伽噺の神様が持ってた召喚魔法が使えるなんて!」


 母様が俺に抱き着いたままぴょんぴょん跳ねる。

 まだ俺が御伽噺に出てくる神様の召喚魔法を使えると決まったわけじゃないんだけど……。


「ここは少し狭いだろう。召喚魔法を使うなら大広間に行こう」


 父様が執務室は少し狭いと言い、大広間で召喚魔法を使うことになった。

 俺からすれば父様の執務室は十分大きいのだが、父様が話していた御伽噺に出てくる龍などの生物になるとさすがに入らないだろう。






 執務室にいた全員で大広間に移動した。

 大広間は城の中で一番広い場所だ。


 ここはパーティーなどを行うための場所で、俺は初めて大広間に入る。

 大広間はその名の通り、とにかく広く、とにかく天井が高い場所だった。

 奥行だけで百メートルはありそうだ。


 

 いつの間にか同伴していた使用人達が大広間にテーブルやソファーなどを運び込んでくる。

 大広間の中心あたりに用意されたソファーに、俺とリーラ以外の全員が腰を下ろす。



「では……」


 俺が父様の顔をちらりと見ると、父様がコクリと頷く。

 今のは、召喚魔法を使いますよ? という合図だ。

 それに対して、父様は頷いた。

 召喚魔法を使ってもいいということだ。




 俺は召喚魔法を使うために、魔力を高めていく。

 魔力が高まっていくにつれ、俺を中心に風が吹き荒れていく。


「全員、魔力障壁を」


 父様が言うと、大広間にいる俺以外の者の前に薄い膜のようなものが展開された。

 俺の魔壁を薄くしたような感じのものだ。



 魔力を高め、高め、高めていく。

 そして俺が今練られる最大の魔力を練り終わり――。


「綺麗……」


 セドナがポカンと口を開く。

 セドナだけじゃない。

 大広間の中にいる全員が口をポカンと開けたまま固まった。


 一本、一本、また一本と、俺を中心に銀色に輝く糸のようなものが現れたのだ。

 幾千もの銀の糸は、まるで万物を虜にするような美しさである。


「…………」


 時が止まったかのような静寂が大広間を包み込む。

 そんな中、俺は必死に()()()押さえつけていた。


 俺が魔力を練り終わった瞬間、俺の魔力じゃない新しい魔力が溢れ出てきたのだ。

 害意はないのだが、()()は俺の魔力を浸食していく。


 これはやばい。

 一瞬でも気を抜いたら喰われる。


 ……こうなったら一か八かだ。


「――召喚」


 呟くと、俺を中心に大広間を覆いつくすほどの巨大な魔法陣が現れた。

 その魔法陣は、俺の魔力と何かの魔力を吸収していく。

 魔力を吸収する巨大な魔法陣が、次第に銀色の輝きを放ち始めた。

 魔法陣はグングンと魔力を吸い込んでいく。



 しばらくして、巨大な魔法陣は俺の魔力と何かの魔力をほとんど吸収しきった。

 そして、膨大な魔力を吸収した魔法陣が俺を中心に収縮していく。

 魔法陣が収縮を始めた時には、俺の周りに銀色の糸のようなものはなくなっていた。



 大広間を覆いつくすほどの魔法陣がどんどんコンパクトになっていく。

 そして、魔法陣が俺と一体になった時――閃光が走った。






 銀色の強烈な輝きを放ちながら、それが形を成していく。

 魔力が底をつきかけ、意識が朦朧(もうろう)とするなか、俺はそれに触れた。


 小さい。

 俺の手に収まるくらいの大きさだ。


「主様」


 凛とした声が聞こえる。

 完全に輝きが収まり、俺はそれを視界に入れる。


 俺の手の上には、銀色の体毛に澄んだ銀色の瞳の小さな可愛らしい小鳥がいた。

 

「主様……?」

「……」


 ()()()

 俺の手の上で小鳥が喋った。

 なんかうまく表現できないが、変な気分だ。


「これは成功……なのか?」


 不安になるが、おそらく成功だのだろう。

 どうして小鳥なのかはわからないが、この小鳥からは俺の魔力が感じられる。


 

 ……それにしても、あれは何だったのだろうか。

 あの尋常じゃないほどの澄んだ魔力。

 あの銀色の糸。


「……疲れた」


 俺は考えるのをやめた。

 先ほどの召喚で大量の魔力を使ってしまった。

 魔力が切れる寸前なので、体がだるい。


「終わりまし……」


 小鳥から視線を外し、みんなの座っているソファーに顔を向ける。


 

 そこには、俺のことを直視したまま目を見開いて固まっている、父様達の姿があった。


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