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才能に愛されし者  作者: きんめ
第一章 幼少期編
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魔法談義

 ゆっくりと、セドナの唇が俺の唇から離れていく。 

 

「セドナ……」


 俺がセドナの名前を呼ぶと、セドナが抱き着いてきた。

 母様とカーリーを見ると、顔がとんでもないことになっている。


「セドナちゃん! ルナはまだ私のなのに!」

 

 母様はセドナを恨めしそうに見ている。

 子供か!


 カーリーはというと……。

 

「ルナ……セドナのことをよろしく頼むぞ……」


 母様とは対照的に、俺とセドナのことを慈愛に満ちた目で見ている。

 

「ルナ……」


 セドナが俺を上目遣いでみる。

 これはあかん。

 可愛すぎる。


「私じゃダメ?」

「ダメじゃない……」

「ホント?」

「ホントだ」


 セドナの俺を抱きしめる力が一層強くなる。


「熱々だね~」

「そうだな~」


 なんとも気の抜けた会話が聞こえてくる。


「婚約の件はいいとして……」


 雰囲気に流されてなかなか聞けなかったけれど。


「母様が人魚族だって本当ですか?」

「えーーッ! なんで知ってるの!? まだ言ってないのに……」

「カーリーが教えてくれました」

「カーリー……」


 母様がカーリーをギロリと睨む。


「なんで言っちゃったの!? ルナの驚く顔見たかったのに~」

「うむ……なかなか面白い反応だったぞ」

「カーリーのばかっ!」


 そう言って母様は()ねてしまった。

 本当に子供みたいだ。






「そういえば、ルナはなんで人魚族の言語がわかるの?」


 ふと、セドナが疑問を口にする。


 ……そういえば、セドナがいきなり水の槍をぶっ放してきた時にそんなようなこと言ってたな。

 

「言われてみれば……」


 カーリーも今になって気になってきたようだ。


「……母様ならわかるんじゃないですか?」


 何故かわからないが、母様なら何か知っているという確信がある。


「てへっ? やっぱりわかっちゃう?」

「それで、どうして俺は人魚族の言語が理解できるんですか?」


 てへっ? じゃねえよ! と、ツッコミたい気持ちを抑えて続きを促す。

 まぁ、母様ほどの美女がやると絵になるのだが。


「ルナが人魚族の言葉がわかるのは、時々私が教えてるからだよ」

「えっ?」


 俺の覚えている限りではそんなこと教えてもらった記憶はないのだが……。


「ほら、覚えてない? ルナが二歳の時に私が変な言葉を喋ってたの」

「……ああ!」


 思い出した。

 俺の二歳の誕生日に、いきなり母様が訳のわからない言葉で俺に話しかけてきたことがあった。


「思い出したみたいね」

「はい……あれが人魚族の言語だったんですか?」

「そうよ~。今ではルナもしっかりと人魚族の言語をマスターしてるけどね」


 なるほど。

 知らず知らずのうちに、俺は人魚族の言語を習得していたということか。

 でも、どうしてそんなことを?


「別に、この先人魚族の言語を使えなくてもさして問題ないと思うのですが」

「いやぁ、いつかルナをエルナバス王国に連れていってあげようと思って」


 ……まぁ、損はないし、別にいいか。



「そういえば、カーリー」

 

 カーリーにもいろいろ聞きたいことがある。


「カーリーが俺の探知を逆探知したんだろ?」

「ああ。ここまで追跡するのはなかなか骨が折れたぞ」

「あれ、どうやったんだ?」


 もし俺の探知を逆探知したやつがもしカーリーじゃなかったら……。

 

「そうだな……ルナは魔力感知を使えるか?」

「魔力感知? 知らないな……」

「体の外部に漂っている魔素の存在は知ってるね? 意識を外部に集中させて見ると、薄っすらその魔素が感じ取れるようになる。やってみな」


 俺はカーリーに言われた通りに意識を体の外に集中させる。

 

「……もやもやしてるのがある?」

「それが魔素だ。その魔素を感じることを魔力感知という」


 これが魔力感知……。


「その魔力感知は慣れれば意識しなくても出来るようになる。寝ている時もだ」


 寝ている時もか。

 でもこれが何の役に立つんだ?


「これが何の役に立つのかわからないって顔だね。私が今から『探知』を発動させるから、それを感じ取ってみな」


 カーリーはそう言って探知を発動させる。


「なんか……薄い膜みたいなのがある?」

「それが私の探知の魔力さ。その魔力に自分の魔力を絡めてみな」


 俺はカーリーの魔力に自分の魔力を込めていく。

 すると、俺の魔力がカーリーの魔力と同化していっているのがわかる。

 

「……侵食している?」

「そうやって私はルナの探知を探ってここを見つけたってことさ」


 なるほど。


「でも俺はあの時、探知を解けなかったんだ。あれはどうやるんだ?」

「ん? 今やったじゃないか」


 ……ああ。

 そういうことか。


 俺は絡ませている魔力を(ひね)ってみる。

 そうすると、俺はカーリーの魔力をがっちりと掴めた。


「こういうことか」

「そうそう。ルナはフーリと同じで天才みたいだね」


 拗ねていた母様がカーリーの言葉を聞き、ぴょんっ、と飛び上がる。


「カーリーもわかっちゃった!? ルナは天才なのよ!」


 興奮した母様はなかなか面倒なので、無視してカーリーに質問を続ける。

 

「魔力を絡められた時のどう対処するんだ?」

「ここまで魔力を操作できるルナなら簡単にできるよ。魔力を切ればいいんだ」


 魔力を切る?


「こうやってバサッとね」


 カーリーは俺の絡ませている魔力を()()()

 

「物理的にか」

「如何にこれを早くできるかが課題だね。まぁ、気づかれないのが一番いいんだけど」


 確かに、簡単に相手に気づかれるような探知じゃ使いがってはよくないな。


「魔法で一番重要なのは、魔力の使い方さ。魔力感知も使っていくにつれ、様々なことがわかるようになる。上級者にもなると魔力の動きや変化で相手がどんな魔法を使ってくるかがわかる」


 それは有益な情報だ。

 俺は王子という身分故に、様々なところで監視されているだろう。

 今は何も感じないが、城以外の場所にいれば遠距離から魔法で攻撃される可能性だってある。

 ……全部リーラが防いでいそうだが。


「鍛錬あるのみってことだな」

「まぁルナならすぐに魔力感知やら探知やらをマスターできる気がするどね」

 

 そんなことはないと思うが。


「最後に、どうやってここまで来たんだ? 俺が探知でカーリーを見つけたのは、はるか遠くだぞ。あんなにすぐ来られるなんて……あれも魔法なのか?」

「あれも魔法だけど、ちょっと特殊な魔法だね」


 特殊な魔法?


「ルナは四大元素の以外の魔法があることは知ってるかい?」

「系統外魔法のことか?」

「そう。私の家系は皆、時空間魔法という系統外魔法が使えるんだ」

「なるほど……」

「ルナも使えるはずだぞ」


 俺にも時空間魔法が使える?


「どうしてだ?」

「時空間魔法はエルナバス家の血を受け継いでいる者にしか使えない」

「……そうか! 俺も一応エルナバスの血を継いでいる」

「そういうことだ」


 時空間魔法……便利な魔法だな。

 それにしても……。


「だったら、どうしてセドナは時空間魔法を使って家に帰らなかったんだ?」

「そ、それは……」


 俺に抱き着いてじっとしていたセドナが、もじもじしながら言いよどむ。


「セドナは時空間魔法を使うには魔力が足りないのさ」

「魔力が足りない?」

「時空間魔法には大量の魔力を使うのさ。それこそ、探知と身体強化などの簡単な魔法とは比べ物にならないくらい魔力を消費するからね」


 そんなに魔力を消費するのか。

 どれくらい消費するのかわからないけど、それはちょっとしんどそうだな。


「それに、時空間魔法で転移するときは座標をちゃんと決めないと全く知らないところに転移してしまうんだ。だから私はフーリがちゃんとここに転移できるように、魔力を空に放出させてここにいると知らせた」


 母様も時空間魔法でここに来たのか。


「探知と時空間魔法をうまく使えば大体どこへでも転移できるけどね」


 カーリーが時空間魔法について詳しく教えてくれる。


 

 ふと海に目を向けると、地平線の彼方から朝日が顔を出していた。


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