東海岸(四)
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【ハーイ、ダニエル。ナンシーよ。久しぶりね。例の件だけど、アルバート・ポーターの出身地はまだ調査中よ。ただ、情報が少ないから難しいかもしれないわ。今度は黒人運動家だったレベッカ・モーリスのことを調べてみようと思うの。彼女は白人男性と結婚しママや私たちがその子孫にあたるけど、多少知られているから役に立つ資料も色々残っているはずよ。これからボストンに行ってくるわ。何かわかったら連絡するわね。じゃあまた。】
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「エイミー、行ってくるわね」
「行ってらっしゃいナミ。気を付けてね」
ナミ・ジョンストンは長年の夢が叶い教師として小学校で子供たちに教えている。
彼女は小さい頃から、子供たちの指導、育成に熱心な養母のエイミーのような教師になることが
理想であった。
その願いは、世の中が旧来からの男性社会であったことと、ナミがまだ年若いこともあって、難しいことではあったが、知名度のあるエイミーのバックアップにより可能となった。
ナミはニューヨーク市中心部の小学校に配属になり、大いに張り切って教職に臨んだが、生易しい仕事ではなかった。
ナミがまだ駆け出しということもあったが、この時期、世界各地からの移民で人種が多様化しており、貧富の差ができて治安が悪化していることが子供たちにも影響し、いさかいが絶えなかったからである。
それでもナミは生来の辛抱強い性格で子供たちと接し、またエイミーのアドバイスを受けながらなんとか勤めを果たすことが出来たが、仕事を終えると心身ともに疲れの感じる日々が続いた。
そのような時に親友のジェシカから朗報が届いた。
彼女はボストン在住時、小中学校の同級生で最も親しい間柄であった。
そのジェシカが職場で休みが取れ、一週間ほどニューヨークに滞在するので泊めてほしいとのこと。
ナミはエイミーとともに喜んだ。
エイミーにとってもジェシカは可愛い教え子であった。
ジェシカが来る日は、小学校がちょうど夏季休暇に入っているため、駅まで迎えにいくつもりでいたが、二度目の手紙で到着時間が変更になるかもしれず、住所を頼りにバードハウスに行くから気を遣わないでとの返事があった。
けれどもこのことが後々まで悔いを残し、ナミの人生にも大きく係わってくるのである。
当日、二人はジェシカの到着を心待ちにし、部屋の場所がわかるように1階入り口に貼り紙をしていた。ナミは久しぶりの再会で話すことは山ほどあった。
マンチェスターでの高校生活、ニューヨークに来てからのエピソード、様々な人々との出会い、等々。
逆にボストン時代の友人の近況を聞きたいと思った。
この日は玄関扉がノックされる度に、大急ぎで開けたがいずれも別人であった。
初めのうちはまだ早すぎるとエイミーからからかわれたが、午後も押し詰まって二人とも心配になりだした。
恐らく場所が分からないのではと憶測し、ナミは表に出て駅の方向の途中までジェシカを探しに足を運んだ。けれども一向に姿を見ることができなかった。
近所の知り合いにも声を掛け、見かけたら知らせてくれるよう頼んだ。
その内、あたりが暗くなり待つ以外方法がなくなった。
もしかしたら何かの理由で来る日が変わったのかもしれないと、二人で話し合っていると、扉を叩く音がした。
今度こそ間違いないのではと、思いながら急ぎ扉を開くと、全く知らない年配の男性であった。
「ここはジョンストンさんのお宅ですか?」
「はい、そうですが、なにかご用でしょうか」
「パトロール隊の者ですが、実は黒人女性がしゃがみ込んでいて、動けない状態で」
「なんですって!」
ナミは動転してしまった。
「どうしたのか聞いてみると、ここのことを教えられて。どうやら事故に巻き込まれたみたいで」
「行きます!」
と言いながら、後に立っていたエイミーが心配そうに頷くのを見届けた後、すぐに外に飛び出した。
男性に従いながら聞いてみると、二人でパトロール中に彼女を見かけたそうで、怪我はしていないようだが、かなりショックを受けており、どうやら乱暴された様子とのこと。
場所は港に近い倉庫エリアの一角で、普段女性一人で近づくところではなかった。
現場まで来ると、付き添いのパトロール隊の男性の横に女性が屈み込んで座っていた。
どうやらジェシカに間違いなさそうだったが、髪がほつれ着衣も乱れた変わり果てた姿で、何があったか一目瞭然であった。
ナミが声を掛けると、顔を見上げて、
「ナ、ナミ。私、私」
と言ってしゃくりあげた。
ナミも泣きながら、
「酷い!酷い!」
と言ってジェシカを抱いた。
その様子を男性二人はただ見守るしかなかった。
しばらくしてナミが、「帰ろ」と一言いうと、ジェシカはうなずき立ち上がった。
そして、パトロール隊の二人に守られて帰路についた。
バードハウスに戻るとエイミーが表に出て待っていた。
そして、ナミと一緒に抱きかかえてジェシカを部屋に誘った。
エイミーも事情を察していて多くを語らずに、とりあえず体を清めて服を着替えさせた。
荷物を手にしていなかったため、ナミの衣服を着用することになった。
かなり混乱している様子で、軽く飲食をさせた後、無理に問うことは控え落ち着くのを待った。
が、ジェシカの方からポツリポツリしゃべりはじめた。
この日ジェシカは駅に到着した後、住所を手にしながら何人か親切そうな人に、バードハウスに行く道を尋ねた。
ところがある場所まで来て、女の人に聞いたが知らないとのことだったが、たまたま横で耳にした男性が、自分もそこに行くので一緒に行こうということになった。
その男性は若い白人であったが、外見が優しそうであったため、全く不審を感じなかった。
また、道行く途中で愉快な話を聞かせてくれるため、申し出を信じて疑うことはなかった。
ところが、徐々に人通りの少ない港の方向に進んで行くため不安になった。
何度か間違いないか問い掛けたが大丈夫だと言う。
ところが、周りを見渡して無人の建屋ばかりの場所まで来て、ようやく騙されたと悟った。
ジェシカは戻ると言って振り返ると、別の二人の白人が近づいて来た。
彼らは示し合わせ後を付けてきたのだ。
逃げようと走ったものの、簡単に捉まり、助けを呼ぼうとしたがすぐに口を塞がれてしまった。
抵抗するにも男三人が相手では如何ともし難く、空いている建物に連れ込まれた。
そして、三人から乱暴を受けてしまったのだ。
ジェシカは虚脱状態に陥り、彼らが去った後もしばらく動くことができなかった。
なんとか外に出てパトロール隊に見つけられたが、ショックのあまり、エイミーやナミの名前を伝えるのが精いっぱいであった。
そして、ナミの顔を見てようやく悲しみが襲ったのである。
その話を聞き、ナミは自分のことのように嘆くと同時に憤ったが、もっとも怒りを表したのはエイミーであった。
彼女はジェシカに同情しつつも、男たちを激しく非難した。
そして彼らの悪質な行為を暴き責任を取らせると言った。
そのためには、ジェシカの協力が不可欠であった。
思い出すのも嫌なようであったが、エイミーは辛抱強く説得し、男たちの特徴をジェシカの記憶から引き出した。
とはいっても名前を確かめるには、彼らを見つけ出し面通しする必要があった。
次の日、パトロール隊がジェシカの手荷物を見つけ立ち寄ってくれたが、金目のものは抜かれていた。
さすがにジェシカも決心し、ナミと二人で目立たない恰好をして男たちを探し出そうと駅前に向かった。すると、途中の通り道で彼ら三人が一緒にいるのを見つけることができた。
ジェシカは彼らに間違いないと断言した。
とりあえずその日はバードハウスに戻り、後はナミが彼らの身元を調べることになった。
次の日、ジェシカは滞在を早めに切上げ、ボストンに帰ることになった。
この街にいるのが辛いと言う。楽しいはずであった久しぶりの再会も、台無しになってしまった。
ナミとエイミーはジェシカを励ましながら駅まで見送った。
男たちの名前は知り合いに調べてもらっていたが、程なく明らかになった。
彼らは街中で色々と問題を起こし評判が悪いとのことであった。
ゆすり等で被害にあって泣き寝入りしている者も多いそうである。
早速、エイミーは警察署に行き三人を逮捕して取り調べするよう直談判した。
ニューヨーク警察にもエイミーや亡夫フランクの知り合いがおり、調査することになった。
ところがしばらくして逮捕することは難しいとの返事が返ってきた。
表向きは証拠に乏しいという理由であったが、内一人の父親が街の有力者であったことが影響していた。更に、直接の被害者であるジェシカが黒人であったことも気乗りしない要因であった。
エイミーは憤慨した。
もはや警察は頼りにならないと判断した。
別の方法で彼らを断罪することを考えた。
それは、彼らが犯した悪行を公にして、当局で裁かざるを得ない状況にするか、少なくともこの街に居られないようにするかであった。
さっそく二人は街中に配布するチラシの文章を作り、親しい知人に印刷を依頼した。
もともとが、亡夫とともに著述の仕事をしていたこともあって、慣れた作業であった。文面は、三人の男たちがニューヨークに来た女性を、道案内を口実に全く別の場所に連れて行き乱暴を働いたという事実。また弱い者に対してゆすり、たかりを繰り返しているという内容で、とりあえず彼らの名前はイニシャルで書かれていた。
ただ、彼らの年齢、容貌等が詳しく記されており、この地の住人であれば、どこの誰であるかは一目瞭然であった。
この街を住み良くするためには、犯罪者を罰することが必要で私たちは彼らを決して許さないと結んであった。
ナミは現役の小学校教師で差しさわりがあるため、告発はエイミーの名前で行うことになった。
ただ、市内の知人や協力者へのチラシの配布、目立った場所への貼り付けはナミが積極的に動いた。
初めてのことなので効果は全くの未知数であったが、反響は予想以上に大きかった。
直接の被害者が黒人女性ということで黒人や女性の賛同が目立ったが、近年の人口増加に伴い治安の悪化を危惧する人々や、やはり、旧来からのジョンストン夫妻の知己朋友が前向きに協力したことも強い影響を及ぼした。
この社会問題になりかねない成り行きに慌てた警察は、加害者の父親である有力者と連絡を取り急遽対応を相談した。
そして、仲介者を立てて告発者のエイミーと協議を行うことになった。
そして何度かの話し合いの結果、加害者である三人の男たちを、この地域から追放処分とし、被害者に対し見舞金を支払うことで合意した。
有力者も問題の絶えない息子たちを持て余していたこともあり、ニューヨーク近隣から遠ざけることで解決することを望んだのだった。
エイミーとナミはこの取り決めを手放しで喜んだわけではなかった。
彼らの犯した罪を考えると追放処分が妥当かどうか判断はつかなかった。
ましてや、ジェシカの心に受けた傷は一生消えないのだから。
とはいえ、ジェシカには行動内容と結果を報せ、見舞金を送ることになった。
ところが数日の後、ジェシカから思いもよらない返事があった。冒頭から二人の親身な行為に対して感謝の気持ちが書かれていたが、読み進むに従って驚くべき文字を目にすることになった。
ジェシカは妊娠したという。もちろん父親は憎むべき三人の中の一人であり、周章狼狽したが、あくまで自分だけの子であると自分自身に言い聞かせ、神から授かったと思うようになったと書かれていた。
最近は家族からも祝福されるようになり、送ってもらった見舞金は生まれてくる子供のために使いたいと記載されていた。
読み終わった二人は感激してしまった。
更にジェシカの意志の強さに心を打たれた。
早速エイミーは返信し、その気構えを大いに褒めたたえ、お祝いを述べるとともに、くれぐれも体を労わるようにとの言葉を添えた。
ナミももちろん喜んだが、エイミーの愛情あふれる気持ちが心にしみた。
ナミは知っていた。エイミーの身の上に起こった過去の不幸な出来事を。
エイミーがまだ独身の若い頃、街のならず者に乱暴された。
騒ぎを耳にして駆け付けた人によって助けられたが、体中殴られ重い傷を負ってしまった。
しばらく静養していたが、数か月後妊娠していることがわかった。
彼女は暴漢の子を産む意志は全くなかった。
むしろ汚らわしい気持ちを自らに抱いた。
そして、流産しようとして、わざと腹部を痛めつけた。
その結果、思い通りにいったものの、身体を壊してしまい二度と子を産めない体になってしまった。
彼女は絶望のあまり死を考えた。
それを救ったのが最も親しい男友達のフランクだった。
彼はエイミーを慰めると同時に求婚した。
もちろんエイミーは一旦拒絶したが、自身の子が出来なくても、自らの手で子供たちを育てることは出来るとのフランクの言葉に心を動かされ最終的に受け入れたのだった。
フランクは教育者を目指していたが、エイミーも子供向けの教師になることを志し、そのための教養を身につけることに専念した。
それ以来二人はお互い励まし合いながら各地の学校や教育機関に在職し、数多くの若者を育成した。
又、中年になってから海外にも赴任し活動の場を広げた。
常に二人は行動を共にし、日本の長崎に来てナミと出会いエイミーが教育を施したのも天職として至極当然であった。
そのエイミーがジェシカの身に降りかかった災難に、我が事のように怒り心頭し出来る限りのことをしようと決意したこと、また、妊娠した彼女がなによりも無事に出産出来るように願っていることはナミにも理解できた。もちろんナミ自身も親友のジェシカが幸せになるよう心から祈った。
*
『親愛なるジェシカ。あなたがママになったと知ってとても嬉しいわ。おめでとう。お手紙を見て、エイミーと手を取り合って喜んだわ。祝杯も挙げたのよ。あなた抜きでごめんなさい。それにレベッカという名前。なんて素敵なんでしょう。おそらくあなたに似て玉のように可愛い女の子なんでしょうね。早く会ってみたいわ。でもレベッカは幸せね。私にはフランクとエイミーがいたけど、何といってもレベッカにはあなたという本当のママがいるんですもの。昔、私が初めてこの国に来た時、とても不安だったのだけれど、誰よりも温かく迎え入れてくれて、友情を分かち合ってくれたジェシカ、あなたがいてくれて、私にはどれほど心強かったことか。レベッカもあなたの愛情に包まれてすくすくと育つことに違いないわ。もう私の次の休暇予定は決まっているの。二人に会いに行くことよ。そして、あなたの許しを得てレベッカを抱くことよ。それともう一つ、私にも幸を分け与えてくれるかしら。私の大好きなジェシカと、そしてレベッカから。
ナミより』
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【忙しそうねダニエル。ナンシーよ。早速だけど、レベッカ・モーリスを調べていくうちに意外なことがわかったの。彼女の母親はジェシカという名前だけど、シングルマザーだったようなの。つまり、レベッカには父親と呼べる人がいなかったのよ。何か事情があったようだけど、レベッカの残っている写真をよく見ると、白人の血が混ざっているような気がするの。もう少し調べてみるわ。それともう一つ驚いたことは、アルバート・ポーターが残していた手紙とジェシカ宛の手紙の送り主が同じ名前で、ナミ・ジョンストンという女性なの。この時点で両方の家系につながりはなさそうだけど、文面から察すると、いずれもこの女性とはかなり親密だったようだわ。情深くてとても魅力的な人のようね。この女性についても並行して調べてみようと思うの。新たな発見があるかもしれないわよ。また、何かわかったら連絡するわ。じゃあね。】
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南北戦争の終結によって、奴隷制度は廃止され黒人男性に参政権が与えられたが、女性全般の権利が向上することはなかった。
けれども一八四〇年代から始まっていた権利獲得の組織的な運動は、その後も参政権を含むさまざまな社会改革が訴えられていく。
売春や離婚、既婚女性の権利、女性労働者の問題。更には禁酒運動、社会的弱者の救済、消費者運動、黒人反リンチ運動、産児制限運動、公娼制反対等々。
そして、穏健な権利要求活動とは別にデモやパレードも繰り広げられ、女性の社会進出も加わって、ついに、一九二〇年憲法の修正で女性参政権が成立することになる。
*
ナミは小学校での教職を終えて、帰路に就いていた。夕刻近くではあったが、まだ街中は明るかった。
最近は仕事にもようやく慣れて、気持ちに余裕が見られるようになっていた。
通りに沿って立ち並ぶ住居や点在する食料品、雑貨、衣料等の店舗に加え、ところどころ普請中の建物を目にする。
人々の流入に伴い、空いている土地の造成、新築が活発になっていて、この街の景観も著しく変貌している。
ナミは、時の経つのは速いものだと思いながらいつもの道を歩いていく。
レンガ塀が続く通りに差しかかった時、一人の男の子が路地から現れ近寄ってきた。
そして、来た方向を指さしながら声を掛けてきた。
「お姉さん、お姉さん、ちっちゃい子が大変な目にあってるよ!」
「どうしたの、いったい?」
「ちっちゃい子が怪我して泣いてるよ」
「わかったわ。すぐに行くから」
ナミは子供が辛い目に遭っているのを放っておけなかった。案内してくれるように言った。
「こっち、こっち」
男の子の後をついて行く。
男の子は脇道を何度も振り返りながら進んで行くが、ナミも速足で後を追う。
建物の間の路地を通り、抜けたところは人気のない草地であった。
両側は樹木が茂っていてまだ手が付けられていないが、正面に古びた家屋があった。
男の子がその前で立ちどまると、中から見るからに荒んだ風貌の男性が二人現れた。
「連れて来たよ」
男の子が言うと、男性の一人が小銭を手渡してうなづいた。
「ああ、ありがとよ。これをやるからさっさと消えな」
男の子は受け取るや、来た道を一目散に戻って行った。
ナミには彼らの顔に見覚えがあった。
直接に接触したことはないものの、ジェシカに乱暴を働いた男たちに間違いなかった。
「なあ、なかなかのもんだろ」
一人が言うともう一人も口笛を吹きながら答えた。
「これはこれは上玉だな。黒んぼ相手よりはるかにいいぜ」
ナミの全身を見回して嘲笑った。
ナミは男たちの罠に嵌ったと悟った。
「あなたたちはここで何をしているの。ここにはおられないはずよ」
「そう、あんたと婆さんのおかげで、俺たちは南部に行くことになってな。だがその前に婆さんはともかく、あんたに礼をしなくちゃならないと思って来てもらったわけさ」
「私をどうするつもり。少しでも近寄ったら大声で人を呼ぶわよ」
ナミは後ずさりしながら、この場から逃げ出そうとした。
けれども次の瞬間、背後から肩越しに体を押さえられ、手で口を塞がれた。
もう一人男がいて、力が強く逃れようともがきはしたものの、びくともしなかった。
「呼べるもんなら呼んでみな。これから可愛がってやるよ」
ナミは声も上げられず、必死に抵抗したが、もう一人の男にも捉えられ、家屋の方に引きずられていく。
入り口の扉近くまで来た、その時、ナミを掴んでいた男二人の後頭部に拳くらいの石ころが直撃した。
二人はあまりの痛みに手を放し、頭を抱え込んだ。
「な、なに!」
男一人が振り返る。
ナミも拘束から逃れ、すぐさまその場から離れた。
前方を見ると一人の男性が立っていた。
彼はスーツ姿で片手にバックを持っており、顔を見ると白人でも黒人でもなかった。
「なんだお前は。どこから来やがったんだ」
その男性は困った表情で口を開いた。
『なんてことだ。この国に着いた途端、妙な場面に出くわしてしまったな。通り過ぎようと思ったんだが、男三人でか弱い女性に乱暴しているところを見ると放っておけなくてね』
「お前は東洋人か。言ってることがわからねえ。ここから出ていくんだ。痛い目に遭わないうちに」
『さて、どうしたものかな。その女性も助けを求めている様子。経緯は知らないが君たちも自制してくれないかね』
「なにをごちゃごちゃ言ってる。早く消えるんだ、このヤロー」
と言いながらその男性に近づき腕を振り上げた。ところがその威嚇を簡単にかわし、軽く背中を手で押した。
男は勢いがついて地面に転んでしまった。
「俺たちとやるつもりか覚悟しやがれ」
「へへへ、イエローも黒人と同じで痛めつけてもお咎めはないんだぜ」
そう言いながら、石をぶつけられた男二人は懐からナイフを取り出した。
これを見て、少し離れた場所に移動したナミは思わず悲鳴を上げた。
『ほう、どすを取り出すとはな。ちょうどいい。私も西洋人がどれほどの腕を持っているのか一度試したかったんだ。じゃあ、私も何か適当な武器を使わしてもらうよ』
男性は平然とした顔で、周囲を見渡し地面に転がっている木枝を手に取った。
「ふざけんな、このヤロー」
と言いながら男二人がナイフを手に襲い掛かる。
ところが決着はすぐについた。
男性はナイフをかわしながら、狙い違わず男たちの腕に木先を次々と振り下ろした。
鈍い音がしてナイフが手から離れ宙を舞う。
それを見ていたもう一人の男はあまりの速さに驚愕した。
「痛い!骨が折れた!」
その側で二人の男は撃たれた腕を一方の手で押さえ地面に倒れ込んでいる。
『まだやるか!』
と男性が大声を上げ、枝を振り上げると、とても敵わないと思った男が二人の男を立たせ、走り去って行く。
『なんだもう終わりか。もう少し免許皆伝の技をみせたかったんだが、少し物足りんな』
と言いながらナミのいる方を見た。
ナミはこの様子を固唾を呑んで見守っていた。
そして何か必死に思い出そうとしていた。
『ああ、女性には眼に毒だったかな。これでも手加減したんだよ。と言っても言葉が通じんか』
ナミが目を見張って佇んでいる姿を見て、怖がっていると思い笑顔を見せ木枝を捨てた。
『いや、決して怪しい者ではないよ。私はこの街に着いたばかりで泊まるところを探しているんだ。どうやら道に迷ったようだ。私は行くよ。君も早く帰った方がいい』
と言いながら男は来た道を戻ろうと歩き出す。
その時ようやくナミは思い出し声を張り上げた。
『待ってください』
その言葉に男性は立ち止まる。
『助けてもらってありがとう』
今度は聞き違いではなかった。男性は振り返った。
『き、君は日本語を話せるのか?』
男性が問うとナミは微笑みながら答えた。
『少しだけ覚えています。私は日本の長崎の生まれです』
奇妙な様子で見られているのを意識してナミは続ける。
『母は日本人ですが、父親はオランダの方のようです。私の名前はナミ・ジョンストン。子供の時、養子でこの国に来ました』
『なるほど。だが、それにしても奇遇だな。このようなところで日本人、いや、日本語を話せる女性に会うとはな』
『お礼をしたいです。家にはエイミー、養母がいます。日本にいたことがあり喜ぶと思います』
誘っていると知って男性は考え込んだ。
『それと、泊まる部屋もあります』
とナミが言うと、男性は首を縦に振った。
『それじゃあお言葉に甘えるとしようか。迷惑にならなければいいんだが』
『とんでもないです。ぜひ来てください』
とナミは喜んで案内するため歩き始めた。
そして道中、男性は自己紹介しながらナミに従った。
彼は宮田賢一と名乗った。
日本の留学生で外国の文化や諸制度を学ぶために派遣されたが、ヨーロッパ各国を回った後、アメリカに渡って来たと言う。
出身が同じ国の実力者と面識があり、政府の役人をしていたのを抜擢されたとのこと。
今日、船でニューヨークに到着したが、取りあえずの宿泊場所を探すために、街の見物も兼ねて歩き回っていたそうだ。
ヨーロッパでは野宿の経験もあり、雨露がしのげる場所があればいいと言う。
英語も他国で人々と接してきたおかげで、少しは理解できるようになったとのこと。
ナミは宮田の率直な言葉に良い印象をもった。
長崎にいた時に、武士同士が剣を持って戦った話を聞いたことがあったが、実際に見たことはなかった。
先ほどその圧倒的な力を見せつけられたが少しも鼻にかけるようなところはなかった。
むしろ、年上にもかかわらず謙虚な態度であった。
バードハウスに着いて宮田をエイミーに紹介した。
エイミーにとっては、長崎滞在中に親切で真面目な人々と接していたこともあって、日本人男性の印象は極めて良かった。
従って宮田の訪問を大いに歓迎した。
ただ、ナミが三人組に襲われ、宮田に助けられたと聞き、感謝する一方で、彼らを野放にしている警察を罵った。
早速、明日警察に抗議に行くと言い張った。
しかしながら一人で行かせることは心配だった。
最近エイミーの老いが目立ち足腰が弱ってきており、4階から1階の空き部屋に移ったばかりであったし、しかも、ナミは仕事の都合で同行することは無理であった。
色々と話し合った結果、初対面ではあったが宮田がエイミーと一緒に行くことになった。
宮田にとっても、アメリカの警察機構を観察することができて好都合であったのである。
その日、宮田はエイミーとナミが今まで暮らしていた4階の部屋に泊まることになった。
エイミーの口利きで管理人から了承を得るのは容易かった。
別れ際に宮田は言った。
『その三人のことを事前に知っておれば、徹底的に叩きのめしていたんですがね』
と。
次の日、エイミーと宮田は警察署に出かけた。
そして、責任者を呼び出し、前日に起こった罪人である三人の不法行為を訴え、厳重に抗議した。
責任者は大いに恐縮し、すぐに署員を三人の元に走らせた。
そして、事実だと判明すると、エイミー達に謝罪した上で、即三人を拘束し監視をつけて南部の施設に移送する。そして追放期間は無期限とし、当局が許可しないでこの地域に現れた場合は、即逮捕しより厳しい罰則を科すことを約束した。
一応エイミーは納得しバードハウスに引き上げたが、今回の件で宮田はエイミーからも信頼されるようになった。
彼は警察署でも出しゃばることはなく、エイミーの付き添いに徹した。
エイミーにとって宮田は彼女が知っている控えめで誠実な日本人である。
その思いはナミにとっても同様であった。
幼少の頃、極悪な環境から彼女を救い出してくれた長崎伝習所で学ぶ留学生と、顔がダブった。
結局、宮田はその後も引き続きバードハウスに泊まることになったが、ナミは仕事から戻ると、宮田の部屋の扉を叩くことが日課になった。
さすがに二人だけで部屋にいることは避けて、エイミーも含めて語り合うか外に出て最寄りのカフェで談笑した。
お互いがそれぞれの生い立ちを説明したが、宮田は維新の原動力になった薩摩藩の一員で、幕末に功績のあった人物に可愛がられ、新政府になってからは役所勤めになったが、その人が亡くなったため、代わりに海外派遣の一員に選ばれたのだという。
もともと両親もいない独身の一人っ子で身軽な立場であったこともあり、長期留学に適任だと判断されたようだ。
期限は決められておらず、出来るだけ多くの国を回りこれからの日本に役に立つ情報を集めることが任務だという。
更に、日本の状況、今まで回って来たヨーロッパの国々の文化、風習等の宮田の話はナミにとっては大変新鮮に思えた。
もちろんナミ自身もこの国に住む経緯についても話したが、二人の会話は日本語で行った。
ナミにとっては、忘れかけていた日本語を思い返したいという希望があった。
ナミが休日の日は、宮田をニューヨーク近郊の名所や街並みを案内した。
ナミはガイドとして有能で、宮田が知りたいと思っている事柄や質問にも正確に応えることができた。
一方で飲食や散策をしながら会話を楽しみ、充実した日々となっていった。
その二人がお互い惹かれ合うようになるのはそう時間は掛からなかった。
エイミーは宮田が現れてからのナミの変化に驚いていた。
今までナミは同世代の男性と交際することがあっても友達止まりであった。
また、その場合でも必ずエイミーやフランクに付き合うことになった事情や印象を詳しく話し、親密な関係に発展することはなかった。
もちろん、ナミは性格も容姿も人並み以上で、周囲の男性から注目されることが多かったが、彼女の関心は自分を育ててくれた養父母と喜びを分かち合うことにあった。
フランクが亡くなってからは、エイミーには一層甘えるようになっていった。
エイミーにとってナミはお腹を痛めた子ではなかったが、親思いの娘であることに違いはなかった。
そのナミが今、宮田賢一という日本人留学生に夢中になっている。
生まれて初めての恋愛をしているようだ。
窮地から救ってくれた恩人で、確か長崎の病的な境遇から助け出してくれたのも留学生だったはず。
ナミ自身も半分は日本人の血が流れており、通じ合う面があるのかもしれない。
しかも、礼儀正しく好感が持てる男性であった。
しかしながら、宮田は自ら課せられた指命により、いずれこの街から去って行くのに違いなかったし、一時的な開放気分による交際と言えなくはなかった。
普通の親であれば、深入りしないほうがいいと忠告するかもしれない。
恐らくナミはその性格から、エイミーの意見に耳を貸すであろう。
けれども、エイミーはナミを信じ、初めて自分の意志で掴んだ幸福感を遮りたくなかった。
確かに宮田との出会いは偶然で日も浅く将来は白紙であったが、エイミーとナミの初対面も思いがけないもので、その後、深い縁を築いたのであった。
それを思うと、今は二人を黙って見守るべきだと決心するに至った。
その後も二人だけで過ごす日は続いたし、かなり親密な関係になっていく様子がみられたが、ナミは今まで通り、その日の出来事をエイミーには必ず話して、隠し立てはしなかった。
ただ、エイミーにはナミの心に潜む思いを読み取っていた。
そして、ある日の深夜に、ナミが部屋から出て行くのに気がついて、とうとうこの日が来たのだと悟った。
しかしながら、その幸せな日々は長くは続かなかった。
ある日、二人が市内で行われた催しの見学から戻って来ると、一人の日本人男性が待っていた。
宮田の知人で、エイミーが自分の部屋で相手をしていたのである。
お互い紹介しあった後、彼はぜひ二人だけで話をしたいと言う。
それも急ぎの用件らしい。
宮田が自分の部屋に誘うと、男性は丁重に礼を言って4階に上って行った。
「どのような用事かしら?」
ナミはエイミーに問い掛ける。
「彼は今まで英国にいたらしいわ。これからアメリカで何か所か立ち寄るらしいけど、宮田さんがここにいると知って尋ねて来たって。用件は何も話してくれなかった」
「そう。でも宮田さん、ときどき留学生どうしで情報を交換し合っているって。逆にこの国のことを知りたいのかもしれないわね」
「そうだといいけど」
二人とも突然の訪問に動揺していた。
悪い報せがあるのかもしれないと勘ぐった。
宮田は当分の間、ニューヨークを足場にして色々見て回りたいと言っていた。
その予定に変更がないことを願った。
一時間ほどして、ドアを叩く音を耳にした。
すぐにナミが玄関に移り、扉を開ける。
宮田が真剣な表情で佇んでいた。どうやら一人のようである。
「彼は次の訪問地に行ったよ」
「何があったの?」
ナミは宮田の身に何か起こったのだと感じ取った。
「ああ、そのことなんだが、エイミーさんにも聞いてほしいんだ」
ナミは宮田をすぐに招じ入れた。
いつもの椅子に腰かけているエイミーもナミと同様、幾分硬い表情をしている。
宮田はナミとともに定位置に座るといきなり切り出した。
「日本に帰らなければいけないことになった」
ナミが息を呑む音が部屋に響く。
「日本で政変があったんです。私を留学生の一員に推薦してくれた人も含め多くの有力者や官僚が政府から去ることになって、今や日本は分裂の危機に陥っているそうです」
いわゆる明治六年の政変である。
征韓論に端を発し、今回の岩倉使節団の外遊組と残留組が対立し、意見が通らなかった政府首脳の半数、更に軍人、官僚約六百人が職を辞することになったのである。
宮田も先ほど聞いたばかりであったが、二人には包み隠さず分かり易く説明した。
「その人は政府組織のある首都東京から離れて、国元に帰ったそうです。大変人望の厚い人で多くの人たちが同調し行動を共にしたそうです。それに右に並ぶ者もいないほどの実力者でもあり、もしその人が号令を掛ければ、日本は内乱状態になると言うんです」
宮田の日本語をナミは英語に訳してエイミーに聞かせている。
「今日訪れた留学仲間から私は頼まれたんです。私とその人は面識があり同じ出身藩であることから、早期に帰国して今まで見て来た世界の実情を説明してほしいと。そして、今は日本の近代化を計ることが最優先で、内輪もめをしている時ではないと説得してほしいとも言われてね」
「その役目はあなたでないといけないの?他にも幹部の方も大勢回っていたんじゃあ?」
「使節団の要人や他藩出身者はお互い利害関係があってだめらしい。その点、私はこれといった主義主張もなく、直接その人から名指しされて団員に選ばれたのだから、最もふさわしいと。それに、世界を回って知り得た諸国の実情を、まっさきにその人に報告すると約束したのは事実です」
二人は宮田の決心が固いと知って気落ちした。
「そこで、エイミーさんにお願いがあります」
宮田は二人を交互に見ながら姿勢を正して言った。
「私はこの街に来て私の人生で最も大切な人に巡り合いました。毎日がとても楽しく充実したものでした。そして、顔を合わせるたびに彼女に惹かれ愛している自分に気づきました。このような言い方をすると、理想の日本人男性らしくないと、たしなめられるかもしれませんが、私のまぎれもない正直な気持ちです」
その言葉をナミは涙を浮かべながらエイミーに伝えた。
「このような時にお願いするのは大変心苦しいのですが、私はナミと結婚したいのです。これからの人生で私にとって彼女はなくてはならない必要な人だと思っています。いや、今回の件で余計に彼女への愛を確信したと言っていいでしょう」
宮田はエイミーに伝える一方で、ナミに告白していた。
ナミは頬に涙を伝わせながら途切れ途切れ訳している。
「もちろん日本で役目を果たしたらすぐにこの街に戻ってきます。今度は私と彼女の新たな生活を築くために。ですから、ぜひ私の願いを聞き届けてほしいのです」
話し終わった宮田は涙しているナミの手をそっと握った。
エイミーは笑顔を見せて言った。
「私はナミがいいのなら構わないわ。どうナミ」
ナミは涙を拭いながら首を縦に振った。
既に二人の関係を知っているエイミーは宮田の申し出にむしろ安堵した。
「それじゃあ、お目出度いことなのでお祝いしなくちゃね」
と、飲み物を出すためにエイミーは席を立った。
宮田とナミも笑顔見せて喜び合った。
その後、婚約したとはいえ今後のことを話し合う必要があった。
宮田は早めに日本に向けて出発しなければならなかったため、すぐにでも式を挙げたいようだったが、まだ出会って日も浅く、とりあえず三人だけの祝言で充分ということになり、正式には宮田が戻ってからということになった。
その日三人で語り合い、お互い励まし合った後、それぞれの部屋に戻ったが、夜遅くナミが部屋から出ていくのをエイミーは可哀想な思いで見送った。
数日後、宮田は日本に向けて出発した。
もちろんナミは駅まで見送ったが、その際愛用の帽子を形見として手渡した。
宮田は大いに喜び、常に身に付けて決して手放さないと誓った。
そして、二人は何度も再会を約束し合いながら涙の別れとなった。
それから、三か月後、ナミは宮田の子を身ごもったことを知る。
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「それじゃあナンシー、レベッカは母親が白人から性暴力を受けた結果、生まれたというの?」
「まだ結論は出ていないわママ。ナミ・ジョンストンから母親宛てに送られた手紙のニュアンスや、レベッカが活動する女性の地位向上運動の主張から判断したんだけど、あくまで推測にすぎないわ」
「それが事実であれば必ずしも幸せでなかった出生が、その後のレベッカの人生観に影響を与えたようだが、結果として女性参政権の獲得につながったのだから意味があったことになるな」
「パパの言う通りよ。彼女の主張も黒人というより、女性としての立場で改善を目指した一面が強かったの。もしかしたら、母親のジェシカが抱いていた心の傷を、受け継いだのかもしれないわ」
「でもそんなことを、孫たちには話せないわね」
「もちろん、今のところパパとママにしか話していないわ」
「確か、アルバート・ポーターも孤児だった可能性があると言っていたな。彼の出自は分かったかい?」
「それが駄目なのよ。ナミ・ジョンストンと一緒にバードハウスに住んでいたようだけど、その前のことや両親は分からずじまいよ」
「やれやれ、私たちの祖先はいずれも辛い体験をしていた様子だな。じゃあ、そのジョンストンという手紙の送り主については?」
「ところが、私が今勤めている大学で、思いがけない発見があったの。昔の教官の名簿にフランク・ジョンストンの名前があったわ。理学が専門で教鞭をとっていたようだけど、南北戦争以前に在籍したようね。ナミという女性は異国から来た人のようだけど、彼が何かの事情で海外に出て連れ帰ったと想像できるの。それと、ニューヨークの当時の住民録や手紙に出てくるバードハウスという建物はもう存在しないけど、市の港側に古い教会があって、昔の資料が残っていたの。そこにエイミー・ジョンストンという名前が出ていたわ。葬儀人名としてね。それと同じ教会でもっと後のことなんだけど、なんとアルバート・ポーターの名前もあったの。今度は結婚式でね」
「つまり、このニューヨークが彼らの生活拠点だったようだな」
「そのようだわ。でもその後ナミ・ジョンストンの名前が出てこないの」
「結婚して名前が変わったのかも。もしかしたら他の土地に移り住んだのかもしれないわよ。でも彼女は私たちのルーツとは関係なさそうよ」
「かもしれないけどなんとなく気になるの。私の直感よ。今度はネットを使って広く問い合わせてみようと思うの。あまり期待しないで待っていてくれる」
「ああ、そうするよ。何かわかったら連絡くれるかい」
「わかったわ」
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