*7*
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気がつくと、二人は道端に倒れこんでいた。ゆっくり起き上がって辺りを見渡す。そこは最初にウサギと出会った並木道の前だった。立ち上がりながら、春美が言った。
「元の世界に戻ってきたのかな?」
「わからない。何か確かめるものないかな」
陽介がきょろきょろとしていると
「あれ? 陽介くん?」
「優莉ちゃん!」
セーラー服姿の女子中学生ーー優莉が横断歩道を渡ってやってきた。肩から中学のスクールバッグをさげた、ポニーテールの優莉は、学校帰りのようだった。
「久しぶりー今帰り? あ、春美ちゃんも!」
「ひ、久しぶり、優莉ちゃん」
「春美ちゃん、大丈夫。ここは僕たちの世界だよ」
陽介が春美の耳元で囁いた。春美はどうして分かるのと聞いた。
「だって、優莉ちゃんは僕らの名前を言ったんだよ」
「あっ」
「何二人でこそこそ話してるの~」
「何でもないよ~春美ちゃん行こ!」
陽介は春美の手を握って走りだした。そんな二人にニヤニヤしながら、優莉は二人の後を追う。
走っている途中、春美は陽介に言った。
「ありがとう」
「ん? 何が?」
「なんでもないよー」
こうして、二人の連休前の冒険は幕を閉じた。二人が行ったあべこべ世界は何だったのか、夢だったのか、現実だったのか。
それ以来、二人はウサギに会うことも、あべこべ世界に行くこともなかった。
*おしまい*




