13 欲しがりさん
「今日はじゃんじゃん食べていいよ」
私は友人の誘いで回転寿司に来ていた。
何か良いことでもあったらしい彼は、鼻歌を歌うほどに上機嫌であった。
「そろそろ何があったのか教えて頂戴よ」
「あー聞きたい? 聞きたいか? この欲しガリさんめ!」
酢漬けの紅しょうがをボリボリ食べることで、湧き上がる苛立ちを誤魔化す。
テンションの高い友人は(只管に)鬱陶しかったけど、おごられる立場なので仕方なく乗ってあげた。
「聞きたい聞きたい。それで、何があったのよ?」
「むっふぅー」
友人はいくらの軍艦巻きを食べながら、にやついている。
正直、蹴りの一つでもくらわせてやろうかと考えたが、我慢した。口に大量の納豆巻きでも詰め込んでやろうかとも考えたが、我慢した。私、えろい。
「この前宝くじを買ったんだ」
「どれくらい?」
聴くと、友人は右手の人刺し指と中指を建てて答えた。
「諭吉二人」
「まじっすか」
「まじっす」
日頃からパチンコや競馬に手を出している友人は、けれども小学で楽しむ輩だ。それが今回の宝くじに限って、諭吉を二人も使ったらしい。
「当たる四冠でもあったの? 普段はそんなに使わないじゃん」
「そうなんだけど、あの日は違ったんだ」
あの日? 漏れでも多かったのかしらん? …いや、こいつ男だったわ。
「あれはたしか一億……いや、三週間くらい前、この店でガリを食べまくっていた時のことだ」
「何やってんのよ…」
「店中のガリというガリを食べまくっていた」
「遠慮しろよ」
「手持ちが無かったから」
「だとしてもだよ」
ガリばっかり食べやがって。
「それで、続きは?」
「それで、ガリをがりがり食ってたら、口の中に違和感が生まれたんだ」
ツッコみは姉妹。
「何か遺物でも入ってたの?」
「吐き出して見て見ると、なんとそれは…」
「それは?」
「…まぁ、遺物だったわけだ」
溜め息をつきつつ、形容しがたい顔をする友人。
言い辛いということは相当アレなものだったのか…。
それから彼は、沈んだ顔から無理矢理テンションを上げた後、続きを話しはじめた。
「そこで俺は思ったわけよ。『悪いことがあったから、今度は良いことがあるはずだ』ってね」
だからって宝くじに諭吉を二人も書けるなんて…。しかもそれで本当に当てるなんて…。話の流れから察するに二万以上、それも、大きく設けたのだろう。
「あんた運がいいのね」
「そのおかげで、お前も寿司を食べれるって寸法よ」
「じゃあ今日はお腹一杯食べることにするわ」
「おう、じゃんじゃん食え。俺はもう、ガリだけを食べるから」
もう一度当たりを引きたいのかしら?
星狩りね、意味違う気もするけれど。
それから私たちは、各々のお腹を満たした。
友人はまた宝くじを買ったらしいけど、今度は外れたらしい。まざぁ。
「あれはたしか一億……いや、三週間くらい前、この店でガリを食べまくっていた時のことだ」
→やはり『一億』ではなく『一万』とすべきだろうか。




