ミカ朱雀の名付け親になりなさい
「じゃあ、オズチ様の所に行こう」
「寝てると思う」
幸子は、毎日コンに会いに行くので、オズチ様がいるのを知っていた。幸子がいると、昼間でも、オズチ様と話せる。オズチ様は、昼間は、笠置神社の狛犬の中で寝ていることが多い。
神社に行ってみると、狛犬が青く光っていたので、みんなで、オズチ様を呼んだ。オズチ様は、相当大きなイノシシだ。狛犬から、ずいぶん離れて大声を出した。
「せーの、オズチ様」
4人で声を合わせたから、大声×4。オズチ様は、飛び起きた。
「ブフォ、おいしいもん食っとったのに」
何かおいしいものを食べている夢を見ていたらしい。寝ぼけて、どおーんと、出てきた。 オズチ様は、眉間に三日月の傷がある猪だ。まだちょっと寝ぼけていた。
「なんじゃ、ミカに、麻衣子か。久しぶりじゃな。おっ、いい匂いがすると思ったら、安子もか」
安子は、いつも幸子がお世話になっていますと言う感じで頭を下げた。
「オズチ様ー 幸子は?」
「オマエは、毎日来とろうが。ん、なんじゃ、みんなそろって」
幸子が、オズチ様のホローをしてくれる。
「美代子さんと、潔さんがいないです」
「ぶふぉ、そうじゃな。二人は?」
「白門島よ。朱雀が見つかったの」
「何じゃと。ずさ神社を見つけたんか」
オズチ様は、ブルルンと震えて、毛並みを整えた。やっと目が覚めたらしい。
「オズチ様、知ってたの」
「あ奴、わしの説得に応じんのじゃ」
「疾風(青龍)が成長しだしたでしょう。出てきてもらいたいの」
「そうか、そうじゃな」
オズチ様が、うんうん、頷いた。
「今度紹介するけど、従妹の真理子が、朱雀の状態を教えてくれたわ。結晶化しているんですって」
オズチ様は、上を向いた後、座って、私たちの目線に合わせてくれた。
「あれは、わしでも破れん。真理子さんか、どんな子じゃ」
「光の世界が分かる人」
「私が、真理子さんに、光の世界のことを話すことになったんです」
「安子の友達なら歓迎じゃ」
オズチ様は、いい匂いがするオーラを持つ安子に甘い。
「コンだと、どうかな?」
「ふーむ、ぶふぉ、実力を出したら行けるじゃろ。でものー」
「子供だから無理ですか」
「相当、エネルギーがいるのは、真理子さんから聞いた。それも、心当たりがあるの。オズチ様は、ポポワさんを知ってます?」
「東のクジラじゃろ」
「東って何ですか」と、ミカが聞く。
「しもうた。内緒じゃ」
「そうなの、でも、西の空ばっかり見ているわ。今度、聞かせてくださいね」
「麻衣子にゃかなわんの」
もう、阪本のおじいちゃんみたいなこと言って。
「ポポワさんの潮吹きを浴びたときに、ミカの光色が急に強くなったんです」
「気持ちよかったです」
「そうか、瑞光か。一時的にコンを昇格させれるかもしれん。ぶふぉ、ぶふぉ、わしも手伝うぞ。コン、コーン」
コンは、神社の軒下にある狐の祠に住んでいる。嬉しそうに出てきた。私やミカを見つけて走ってくるが、幸子が前に出た。コンは、幸子に飛びついた。
「コンがこっちに来たのね。でも、さっちゃんが、コンに突っ込んだわ。コン、嬉しそう」
私が、安子とミカに説明する。安子は、くすっと笑った。安子には、コンも幸子もオズチ様も見えない。私とミカは、幸子は、見えるし触れるし声も聞こえる。だけど私は、コンとオズチ様は、見えるが、声が聞こえないし、触れない。でも、私たちは、連携がとれていて、情報を共有できるようになっている。ミカは、オズチ様と、コンは、見えないし聞こえないが、夢では、話もできるし触ることもできる。多分、真理子の研究が進んだら、もっと、精霊とコミュニケーションが取れるようになるだろう。
「コン、朱雀を徳利から、追い出すぞ。麻依たちがいればできる」
「コォーン!」
「今度こそ、じゃ」
「クゥン、くぅん」
「大丈夫じゃ。そうじゃ、ミカ、朱雀と話したんじゃろ。なんて言っとった。わしゃあ話もできんかった」
夢の話を忘れるミカが、残念な顔をした。
「それが、言葉で話していません。羽の話しをしたら、空を飛ぶイメージを送ってくれたのは覚えています」
「同族じゃからな。ぶふぉ、他には?」
「今度、龍神様に頭を撫でられた4人で来るから、出てきてくださいって言ったら、炎のオーラが膨らみました」
「そうなんか、それで」
ミカは、忘れているので、「麻依さんが話してください」と、話を振る。
「ポポワさんの名前を出したら、オーラが、穏やかになったんですって」
「それは、いい傾向じゃ」
「もしかしたら、結晶化したのはいいけど、自分で、抜け出せないんじゃないかな」
みんな麻衣子を見た。そうかもしれないと思う。
「ぶふぁ、ぶふぁ。麻依子が言うと、そうかもしれんと思えるから、不思議じゃ。もしそうなら、朱雀にも協力させるか」
「どうやってですか」
ミカが不思議そうに聞く。
「ばふー」
オズチ様は、ちょっとリラックスして体の力を抜いた。麻衣子の言う通りなら、いろいろ納得するし、とっくりから出るのを嫌がっていないのなら、気兼ねがないと、思ったのだろう。
「朱雀も成長させる。徳利から出てくださいと、話したのは、ミカじゃろ」
「はい」
「朱雀の名付け親になりなさい」
そうか、そういえば、潔が、青龍に疾風と名付けてから、あまり時を経ないで、昇龍になった。
「私ですか」
「同じ光翼族のよしみじゃ。それに、羽の話をしたら、喜んどったのじゃろ」
「そんな感じです」
「決まりね」
私は、ミカの肩をたたいた。
「分かりました。任せてください」
朱雀は、後に鳳凰になる精霊だ。
安子が気になることを言ってきた。
「それで、朱雀は、オスなの、メスなの」
大事な問題だった。
「ブフォワ」
その詰まり様、オズチ様も知らないと見た。でも、ミカは、きっぱりと言った。
「女の子です。根拠はないんですが、間違いないです」
直接会った人しか言えない言葉だ。オズチ様もあったはずだけど。でも、後で、よくよく聞いたら、潔が言っていた、女の洗濯場で、機嫌よく歌っていたと言うのが、根拠だった。「間違いないです」と、言う、ミカの勘を信じるしかなかった。




