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オカルトクラブと翼の少女  作者: 星村直樹
美代子
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朱雀の寝床

 展望台は、昔、良子さんや紗江子さんが写っていた写真とまったく違わない風景だった。山を下りながら、美代子に宝探しのコツを聞く。


「明日、小学校高学年の宝探しを見ることができるでしょ。みんな走るから、スタートは見ものよ。先頭集団は、中学生のやり方に近いから、みんなも応援しながら見てね」


「ルールはあるの。ライバルを妨害したらいけませんとか」


「ないよ。そうね、暗黙のルールがあるかな。宝は、一チームで、何個取ってもいいの。海賊の宝探しだからね。でも、みんな一つずつしか取らない。その後のリーグ戦の出条権が掛かっているでしょう。取れなかったチームは、女子チームに、交渉してもらったりしているぐらいよ」


「でも、見つからない宝があるんでしょう」


「宝の地図と、制限時間のせいよ。宝1つに対して10枚しか宝の地図はないの。でも取れる地図は5枚までしかない。見つけるのが難しい宝の地図を取ると大変よ。こればかりは、運ね」


「順位は、早い者勝ちだったよな」


「ちょっと違うかな。点数制。宝を見つけてゴールしたチームが30点。後は、一点ずつ点数が少なくなっていく。宝は、小が3点、中が5点、大が10点よ。みんな大は諦めてしまうけど、これを三個全部取ると、30点でしょう、ビリでも、28位から30位の到着点数が加算されるから、3点+2点+1点で6点、全部で、36点。いきなり優勝よ」


「そんなことできるの」


「地図を交換するのよ。持っている地図にない宝を取ってもポイントにならない。だから、難しい地図と交換して、大物を狙えばできる。そんな面倒なこと、する人、いないけど」


「潔は宝探しに参加したことないの」


「いつも、お盆のときに来るからな。綾瀬もそうだろ」


「私も、お盆のときに海賊戦を見に来るぐらいよ」


「今回は、参加するのよ。潔も気合入れて」と、美代子。


「おう」


 そう言う割には、気合が入っていない。だめだこりゃ、と思う。美代子は、桂木のおばあちゃんに「勝て」と、発破を掛けられている。もう、やる気満々なのが伝わってくる。このギャップがすごい。


 桂木家に帰って海賊船を借りた。今日も小島に向かう。今日は、潔も一緒だ。男の癖に掛け声をかけるのが潔の役だ。私とミカは、その声で、オールを漕ぐ。美代子は、また泳いで、小島に向かった。小島の浜辺には、誰も居ない。洞窟をくぐるときに、潔があっけに取られて、掛け声を忘れるので、船が壁にぶつかってしまった。


「もう、潔、しっかりしてよ」


「わるい。しっかし、すごいな此処」


 洞窟を出ると、急に開けて、秘密の砂浜に出る。潔のテンションは、さらに上がった。


「なんだこりゃ。秘密基地か?」

「何言ってんの、こんなきれいな砂浜」

「本当だ、絶壁だ」


 潔は船の上だということを忘れて立ち尽くした。私たちはかまわず舟を漕ぐ。


「うわー」

 潔は、きれいな海にまっさかさまに落ちた。しかしここは、もう砂浜の近くだ。


「潔さん大丈夫ですか」

「心配しないでいいわよ」


 私たちも船を岸に止めて、海に入った。潔は、ぷかぷか浮いているところを美代子に引っ張られていた。


「しっかりして」


「白川、命の恩人だよ」


 美代子に捕まろうとするので怒った。


「バカ、自分で泳げ」

 潔は諦めて自分で泳ぎだした。私たちは、それを横目に持ってきたビーチボールで遊びだした。美代子も参加する。


「潔さんも早く!」


 ミカの声に反応して、潔もやってきた。ここは、周りを崖に囲まれているから、日が陰るのが早い、しかし今は、太陽がたっぷりあたっていた。潔は、ビーチボールで、美代子に負けていた。


「顔で受けないでよ。だらしない」


 美代子に言われて奮起する。しかし、潔の加速は、すぐ止まった。


「白川様、参りました」


「男なんだから、朱雀の巣は、自分で見に行くのよ」


 それは、絶壁の上のほうにある。誰かが道を作っているので、いけないこともない。


「行くよ。朱雀のためだからな」


 落ちても砂の上だと思い、潔が巣を観察する間、泳いだりビーチボールをして待った。


「おーい」

 潔が巣についた。ミカは、ずっと潔を心配して見ていた。


「麻衣さん、美代子さん」

「やっと着いたんだ」



 潔は残念そうに大きな声を出した。

「何もない」


「五百年も留守なのよ。当たり前じゃない」


「でも、奥が、ベッドっぽくなってる。ちょっといい感じ」


「神様の寝床か。いいんじゃない」


「朱雀の雰囲気がちょっと分かったね」


 私たちが腕組みしてニコニコしている中、ミカは気が気でないと潔を見守る。


「もう、降りてきてください。ここは日が陰るので暗くなりまーす」


「わかった」


 朱雀の巣は、南向きで、ずっと太陽があたっている。暖かい。しかし奥が少し深いので、中は、そうでもない。もしかしたら,吹き抜けているのかも知れない。


「ここは、いい寝床だと思うよー」

 そう言って潔は崖を降りだした。


「ハアハア、結構高いな」


「潔でも登れたんだから、島の男たちは、みんな登れるね」


「危害を加える人なんて居なかったんだよ」


「そうね」

 消息不明になる前の朱雀の生活は、悪くなかったと思う。


「でも、ずっと一羽だったんですよね」


「どうだろ、生まれ変わりをするには、親が居るんじゃないか」


「火の鳥みたいに、灰から蘇るのかな」


 朱雀の生態はなぞだらけだ。今日はこれで帰ろうという話になり、美代子が船の船首に立って海賊戦の練習をすることになった。


「潔は、団体戦になると大事な役よ。敵や周りを良く見て状況把握したり、頭の伝令通りに船を動かすの、舟を漕いでいる人の息を合わせたり、船長の補佐をして戦う」


「オレも、戦闘に参加するのか」


「島対抗戦になったらよ。その前に紅白戦で、落とされると思う」


「向こうはぶつかってくるのよね」


「そうよ。だから方向転換が大事なの。船首を相手に向けるのよ。後は、私が勝つ」


 小島の洞窟を抜けると、大海原だ。沖から、また三艘練習している海賊船がやってきた。美代子は、遠目の聞く目で、三艘を見つけて手を振った。


「黒がね三人衆よ。テツよ。おーい」


 黒がね三人衆は、倭人海賊団若手きってのホープだ。青海衆がそれに続く。桂木徹、城山曹洪、石田海士カイジが、主要メンバーで、若手の海賊団を牽引している。


「美代子も練習しとるんか」


「そうよ」


 テツがニコニコしながら、船首を私たちの船首にちょこんとぶつけて来た。


「潔か、父さんにおうたか」


ソウ兄さん。朝行ったよ」


「蔵が大変なことになっとったろう」


「朱雀のことを調べてもらってたんだ」


「そうか、がんばれ」


 美代子も、テツと話し込んでいた。


「美代子、一本かしちゃる」

「いいの」


 竹刀に、スポンジを巻きつけた決闘用の剣を美代子に投げて渡す。


「受け取ったな。勝負じゃ」


 テツは、笑いながら私たちの船に乗り込んできた。美代子は、あっさりテツの足を払って、海に落とした。


「卑怯じゃ」

 海の中で、竹刀を挙げて怒る。


「何言ってるのよ。海に落ちたら負けよ。この剣は、もらっとく」


 黒がねの他のメンバーも驚いている。


「美代子にゃ、かなわんな、ワーハハハハハ」

 テツが笑うとみんな大笑いした。ミカは、私の水着を引っ張らなかった。今度は、怖くなかったのだろう。


「カイジとソウも勝負しとけ。美代子は剣術一段じゃけど、二段の腕前じゃ気をつけろ」


「潔たち、わしの船に船首を回してくれ」


 ソウの船に、私とミカと潔でやっと回せた。


「もっと練習せんとだめじゃ」


 みんなに笑われたが、勇ましく乗り込んできたソウの肩を美代子は、竹刀で一本取った。カイジも胴を抜かれて海に落ちた。


「美代子。わしが頭になったら、頭船に乗れ。頭船の戦場は、全部決闘じゃ」


「うん、テツを守る。その前に青海衆をやっつけてね」


「わかっとる」


 黒がね衆12人は、気合を入れ直して、沖に向かった。私たちは気分よく帰路に着いた。

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