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オカルトクラブと翼の少女  作者: 星村直樹
美代子
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小島の洞窟

 美代子は、どうしても行きたいという小島に向かって泳ぎだした。


桂木で、海賊船を借りた私とミカは、先に出発してオールを一生懸命漕いで美代子を沖で待った。潔は、砂浜から動こうとしなかったので、サンオイルを渡して置いてきた。美代子のクロールは、私たちの船を軽快に追いかけてくる。追いつかれて、美代子が、船に手をかけた。


「二人とも、漕ぎ方は悪くないけど、呼吸が合ってない。掛け声掛けてみたらどう。1、2、1、2。で、いいんじゃない」


「みっちゃんが速すぎるのよ」


「オールを持つ長さも合わせた方がいいわね。同じ力みたいだから」


 私たちは、オールの持ち手の長さを確かめ合った。


「これでいいですか」


「いいよ。私の後に、しっかり付いてきて」


 沖で待っていた私たちを追い抜き、美代子は小島に向かって泳ぎだした。先導するつもりでいたが、逆転だ。小島は、おにぎりのような形をしている。浜から見たときは、魚の頭のような形をしていた。


「1、2、1、2。何で、泳いでいる方が速いの」


 海上には、波もあるのに、プールより気持ちよさそうに泳ぐ。半分は離されなかったが、美代子は、島に到着して手を振っていた。島に近づくと、三艘の小船が、島影から現れた。最初、沖に向かおうとしていたが、急に進路を変えて、こちらに向かってくる。私たちが小島の近くに着く頃には、この三艘に囲まれていた。彼らは、青海三人衆だった。


「なんじゃ、お前ら、島の者んじゃあなかろ」

「何で、海賊船に、乗っとるんじゃ」

「女ばっかじゃ」


 リーダー格らしい男の子が、不思議そうに私たちを見る。方言のせいで、脅されているように感じる。海賊船は、船首の幅か広く角ばった船だ。


「桂木で、借りたのよ」

「麻衣さん」

 ミカが、怖がって私にくっついてくる。


「こいつ、どっかで見たことないか」

「そうじゃ、見たことある」


 ザバーン

 美代子が、船首から船に乗り込んできた。


「うちのクルーになんか用事」


 美代子は、三艘の船の前に堂々と立ちはだかった。


「お嬢!」

「お嬢じゃ」


「桂木・・そうか、お前ら、悪がきトリオじゃ」

「女ばっかじゃ」

「お嬢、お前、まだ一年生じゃろ。わしら、負けんで」


「分からないわよ。船長が勝てばいいのよ」


「なんじゃ、お嬢の船か」

「黒がね三人衆にも負けん。テツによろしゅう、言うてくれ。今年は、わしら青海衆がもらう」


「シンちゃんは?」

「店の手伝いじゃ、夏休みじゃけえ」


 シンちゃんは、加藤信一。青海衆のリーダー。家が、ダイバー店をやっているので、この時期、たまに駆り出される。メンバーにとっては、頭の痛い話。


 三艘の船は、また沖を目指していった。




「怖かったです」

 私の水着は、スクール水着だ。ミカに引っ張られて、へろへろになっている。


「あいつらが、ライバルの青海三人衆よ。いきなり宣戦布告ができてラッキーね」


「ミカを見て真っ赤な顔してた子もいたね。そのセパレート、かわいいわ」


「麻衣さん、それどころじゃあなかったです」


「ミカは怖がりね。島同士の団体戦だと、あいつら、頼もしい味方なのよ。怖がる必要なんかない。みんな気のいいやつなんだから」


「盆踊りで、仲良くなれるんじゃない」


「そうね、とりあえず、ライバルよ。二人とも、特訓するからそのつもりでいてね」


「手に肉刺ができそうです」


「ぼやかない、紅白戦は参加賞だけど、トーナメントに勝ったら、金一封よ。みんなで山分けなんだから」


「山分け」(いい響き)私はちょっと嬉しくなる。


「なんだか本当に海賊みたいですね」


「それより、小島に洞窟見つけたんだ。行ってみない」


 美代子が、イチニ、イチニと、掛け声をかけてくれたので、私とミカの息も合って来た。


 瀬戸内の海は穏やかだ。船は、沖側にすべるように進んだ。


 小島の入り口は、まるで洞窟のようだ。中には、くりぬかれたような内湾かあり、プライベートビーチのようになっている。



「さあ、ここをくぐるわよ」


 入り口は、この海賊船に合わせたような幅で、一艘ずつしか通れない。岩の隙間を抜けると、別天地が広がっていた。切り立った岩壁に囲まれた内湾の砂浜は白く、ちょっと黒い海水浴場の砂浜と一線を画していた。海は、青というより緑色で、小魚もよく見える。まだ日が高いので、太陽の日差しが眩しかった。


「ここは、別天地ね」

 美代子が、海に手を入れながら呟く。


「すてきね」

「鳥の鳴き声が聞こえますね」

「ほら、あそこ、岩壁の中腹」


 美代子が指差す方を見るとひばりぐらいの大きさの鳥が飛んでいた。


「巣があるのよ」


 ザシュ

 船が砂浜に到着した。美代子が、アンカーを降ろし、私達は、はしゃいで、砂浜に飛び出した。


「あんまり走り回ると、こけるわよ」

「みっちゃんじゃ、ないわよ」

「いったな」

「アハハハハハ」

「こらまてー」


 三人で走り回って、みんなでこけた。


「空、青いね」

「当たり前じゃない」

「なんだか落ち着きます」

「うん」


「あの海賊の皆さん、美代子さんのことを お嬢って言ってませんでした」

「みっちゃんは、島では、お嬢なのよ」


「そうなのよ。お母さんが倭人海賊団の船長やってたから。その船長のお嬢さんってこと。お母さんは、去年引退したから、今年は新しい船長が決まる年よ。翔太のデビューの年なんだけど、私たちも参加するなんて思わなかった」


「ミカと私で、悪ガキトリオって言ってなかった」


「どうせ潔は役に立たないし、女三人の海賊団なんてかっこいいじゃない」

「いいかも」

「私は、怖かったです」


「面白くなってきたー」


 美代子は、ガバッと起き上がり両手を上げた。小鳥たちがちょっとざわつく。


「あっ、きれい」

 ミカが、桜貝を見つけた。


「麻衣さん、これ」


「どれどれ、赤孔雀みたいね」

「えへ、もうけ」


「あー私も」美代子がうらやましがる。


 今度は、三人で、貝殻拾いだ。いっぱい集めて船に乗せた。船に行って見ると、サンオイルがおいてある。三人とも、ちゃんとオイルを塗っていないことに気づき、あわててみんなで塗りあった。


「たぶん、今晩は、痛いかも」


「私は泳いでいたもん、ひりひりしてない。ミカは真っ赤だよ」


 ぺちょ

 美代子がちょっとたたいてみたが、ミカはどうって事なさそうな顔をしていた。


「麻衣さんは、地黒ですか」

「そんなに黒い」


「うそです。あまり日焼けしていないから驚いただけです」

「もう」


 そう、私は、あまり日に焼けない。真っ赤なミカを追い掛け回した。美代子は、改めてこの浜辺を見回した。


「ここ、いいわね。ここと桂木の家を往復しているうちに、麻衣たちの腕も上がるかも」

 ちょっと離れた所にいる二人が、美代子の呟きを聞いた。


「えー、なんてー」

「今度から、毎日ここに来ない」

「賛成」

「潔も連れて来ようよ」

「賛成です」



 潔は、海水浴場で、寝転がって、自分が書きとめた手記を読み返していた。せっかく海に来たのに、もったいない。明日は、ビーチボールを持ってきて、ちょっと遊んでやろうと思う。目の前の美女三人より夢中になれることがあるのだから、潔は幸せ者だ。白門島は、見えない光のほうも穏やかで、異質なものは感じない。ただ、赤いオーラをまとった人が多いのには、驚かされる。赤いオーラは海賊たちの属性なのかと思ってしまう。ミカが、岩壁に何かを見つけた。


「麻衣さん、ほら、あそこ。道じゃないですか」

「ほんとね。あのちょっと洞窟になっているところに通じてる」


 美代子が冒険のにおいを嗅いでやってきた。


「天辺にも抜けているんじゃない」

「明日にしない。ここは、もう日陰だよ」

「岩壁は明るいよ。うーん分かった、明日ね。その代わり、しっかり漕いで帰るのよ」

「分かりました船長」


 私たちは帰路に着いた。

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