ハーブ園
夏の日差しの中、白川家にメンバーが全員集合した。出発時に綾瀬家の車に誰も乗りたがらないので、私が、美代子の車に乗るといったら、隆さんにごねられて、親子水いらずの旅になる。
それで、私が、真理子の研究に興味があるというと、隆さんが、一人で盛り上がっちゃって、「だったら大学に行かないとな」と、発破を掛けられた。だからと言って私は、期末テストも終わり、開放感に浸っていたので、何を言われても、全然堪えない。
「びわ狩りのときよりメンバーが増えたな」
「安子のこと。洋介君の幼馴染なんだ」
「そろそろ、イチジクの季節だぞ。正香院に行くか、それとも、龍頭山の春参道にいってみろ、野性のイチジクがなってる」
「秋参道は、行った事あるんだけど、春参道は、龍の祠までしか行った事ない」
「なんだ、そこをちょっと下るだけだぞ」
「隆さんと、光さんは、正香院のイチジクを盗り損なって、楠木に縛り付けられた事があるのよ」
「ちゃんと、紗江子を逃がしただろ」
「私が居なかったら、紗江子だって危なかったわよ。だから、イチジクは、春参道にしなさい」
「なくなったニコニコ和尚さんって、怖い人だったの」
「そんなことはないわ。隆さんが、イチジクの木を折っちゃったのよ。欲を出した罰ね」
「ワハハハハハ、紗江子とお前が、イチジクを持って逃げたから、オレ達の勝ちだったじゃないか」
「捕まって、よく言うわ。城山神社にイチジクあるでしょう。あれは、その時のイチジクを育てたの」
「やっぱり、春参道にする」
「人数増えたから、そっちの方が気兼ねないか。イチジク、期待しているからな」
「まかせて」
家族で、イチジク泥棒の話しをしているのは、珍しい。良子さんは、今の悪ガキトリオで言うと、ミカ的な立場だった。まじめで、大人しかった良子さんをひっぱっり廻したのが、隆さんだ。中学の写真に三人プラス良子さんの写真がある。隆さんに無理やり肩を抱かれて、真っ赤になっている良子さんはかわいい。紗江子さんも豪快に笑っていて、冷静そうな光さんも、ニコニコしている。
「四人で映ってる写真って、何処で撮ったの。あれって、海よね。どう見ても、お母さん、巻き込まれているように見えるんだけど」
「この間見せた写真か。上島だったか」
「ちがうわ、白門島よ。ほら、宝探しの」
「そうだ、山に登って撮ったんだ」
「中学生だけで、島に行ったの」
「紗江子のお母さんの実家があるんだ。もうすぐ夏休みだろ、紗江子に頼んでみろ。魚がうまいぞ」
「紗江子にしても、男だけ引き連れて、親戚の家に泊まるのは気が引けたのよ。今度は、女の子の方が多いじゃない。あそこの家は、広いからすぐOKになると思うわ」
夏休みの予定も決まりそうで、なかなかのドライブになった。
ハーブ園は、内陸の山の中にある。入り口は、大きなビニールハウスになっていて、ハーブを使ったレストランが、入っている。お土産屋さんも、ここにあり、時価なのだろうが、町の半額以下で売っているので、洋介、安子、幸子の植物大好き組みは、その場を離れようとしない。自分でハーブを摘んで買ったほうがお得なのよと紗江子さんに言われてやっとその場を離れる事が出来た。ハーブ園には、公園もあって、そこでお弁当を広げることになる。ハーブ摘みで、急接近している安子と洋介を見て私達は、安心した。
「お母さんやったね」
「私の狙い通りでしょう。もっと誉めていいわよ」
美代子が、紗江子さんに抱きついた。私は、感心した。
「おばさん、ここに来た事あるの」
「良子ったら、話さなかったの。高校の時だけど、隆と二人で来ている筈よ」
「そうなんだ。白門島の話で盛り上がっていたから、聞きそびれた」
「そうね、その辺りから、良子が、私達と遊び出したのよ」
「夏休みに行きたいんだけど。お父さんが、おばさんに聞けって言うの」
「いいわよ。去年は、行っていないから、来いって言われてたのよ。ねっ、美代子」
「去年、何で行かなかったんだっけ。麻衣が来るんなら、潔とミカも誘おうよ。島の青年団主催の宝捜しが、七月の終わりにあるんだ。優勝したら、真珠がもらえるのよ。参加できるのは、中学生の部までだから、後三回あるけどね」
「もしかして、おばさん達、優勝した事あるんじゃない」
「当たり前じゃない。山の上で、写真撮ったわよ。光がトレッキングできたのが勝因ね。行くんなら、潔君にその話しをした方がいいわ」
「写真見たわ。でも、なんで、うちのお母さん、隆さんに肩を抱かれているの」
「良子が、宝を発見したのよ。優勝の決め手だったの」
「すごい、やるときはやるんだ」
「お弁当食べ終わったら、二時間ぐらい自由にしていいわよ。私達は、ハーブティー飲みに行くけど」
「わたしもー」
「夏休みの打ち合わせしたいな」
こうして、公園に残りたいという安子と洋介を置いて私達は、レストランで、ハーブティーを楽しんだ。そこに、幸子が泣きながら飛び込んできたときは、本当に驚いた。




