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オカルトクラブと翼の少女  作者: 星村直樹
守り神
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城山

 友達のミカと美代子は、どちらも最初に“み”が付くから、どっちも、みっちゃんだ。だけど、それだと分かりにくい。前から呼んでいる美代子をみっちゃんと呼び、ミカは、リカちゃん人形みたいにミカちゃんとは呼ばないで、ミカと呼んでもいいかって断った。ミカは、結構自分の名前が気に入っているんですと、了承してくれた。


 城山は、自分の家から10分ぐらいの所にある。天辺に登るには、神社を抜けるコースとスイッチバックのような車が通る道とがある。ジグザグに登る道は、海側で景色も良く、穏やかな海を一望できる。


 そうそう、神社は、うちの町だけで4つ有る。山の中に2つ、町に1つ、城山に一つ。さっき私達が話題にしていたのは、町中の神社のことだ。お寺などは、6つもある。昔、塩田だった、この町は、幕府の直営地で、古い寺町でもある。でも、それより遡って、古墳時代に、神社がいっぱい出来た。それは、龍頭山という山に昔、龍が空から落ちてきて、その頭が、この山にあったからだ。それを調べに来た偉いお侍さんが、その山の対岸の山に陣を築いた。そこも神社になっている。



 ミカには、海を見てもらいたかったから、ジグザグに登る広い道をテクテク登った。ここは、桜の季節に歩くとピンクに染まって綺麗だ。頂上についても、桜の木がいっぱいあって、シーズンには、花見客でいっぱいになる。今は、もう全部散ってしまって、若葉が芽吹いていた。


「ここの桜、すっごく綺麗なの、ミカにも見せたかったわ」


「私の家は、いつも龍頭山です。ちょっと桜は少ないですけど、古い桜の木があって、こちらも綺麗ですよ」


「行った事ないや」

美代子は、ぼやくように言う。


「近所に、これだけ、いっぱい、桜の木が有ったら、ここに来ますよ」



 頂上は、城が有ったというだけに、すごく広く、ちょっとした、お土産屋さん兼食事処があって、海の絶景を楽しみながら食事が出きるようになっている。その広い広場の中央にはサル山がある。サルは、ここから出ることはできないが、人懐っこい。小さい時、子ザルの太郎に、お菓子をあげていたら、飼育係のおじさんに、そんなことばかりしていると、子ザルが病気になってしまうと怒られた。



 二股の猫は、サルがいるせいか、ここには近づかない。どちらかと言うと、海側にいつもいて、日向ぼっこしている。城には、隠し通路があって対岸の島に逃げられるようになっていた。今では、何所が入り口か分からない。もしかしたら、そこに住んでいるのかもしれない。お土産屋さんも。海側に有って、人がいっぱい来る。だから、いつも、その反対側の静かな所にいる。実際、この辺りに城が建っていたそうだ。私達は、ミカをその辺りに連れて行った。



 夕方にはまだ時間がある。海からの風が温かく心地よい。小さいころは、本当に良く遊んだなと、思いながら、いつも寝そべっていた平たい石辺りで、二股の猫を見つけた。


「ミカ、あそこよ」

 小さい時は、怖かったせいもあって、二股の猫を指差した事はなかったが、つい指差してしまった。


「分かりました。憶えておきます」


 そしたら、私が指差したのに気が付いたのか、二股の猫がこっちを見た。つい、お辞儀をして挨拶してしまった。私も、あの頃より、お姉さんになったのだ。猫は、すたすたっと、こっちに歩いてきた。


 アワワワワワ、こっちにきちゃったよ


 普通の猫の倍はある。足の所に体を摺り寄せてきた。私のこと覚えてたんだ。美代子にも同じ事をして、元に戻っていった。ビックリして固まっていると、美代子が、私がへんなのに気づいた。


「どうしたの、麻衣」


「ミカに猫ちゃんの居場所を教えるためにさっき指差したじゃない。そしたら、猫ちゃんがこっちに来て私とみっちゃんの足をくるっと回っていったのよ。もう元に戻ってボーッとしているようだけど」


「うそ、そういうことは言ってよね。頭なでたのに」


「だって、向こうから来たの初めてだもん」


「私も触りたいです」


「ごめんなさい。触ることは出来ないわ。でも、そんな雰囲気出すと、向こうも喜ぶのよ」


「猫の中には、悪い子もいたんだ。あの時、麻衣は嫌がって大変だったよ。でも、あの猫ちゃんが、麻衣を守ってくれたんだよね」


「猫ちゃんが追っ払ってくれた。多分あの子が猫達の主よ」


 美代子には私が見ている世界は見えないが、私の解説で、何となく雰囲気が分かっているだけだ。猫に関しては、全くその通りだった。一度、道端にいた猫に物凄く付きまとわれた事があった。でも、二股の猫ちゃんが、ギャウって感じでその猫を睨んだら、付いてこなくなった。あの時のお礼は言えていない。もうちょっと仲良くなったら、お礼を言いたいなと思った。


「寝ちゃったの、猫ちゃん」


「そんなことないよ、いつものように、海を見ている。あの対岸の島」


「そうなんだ」


 ミカは、私達が少し暗くなったのでどうしたのかなという顔をする。そこで、お土産屋さんの横にあるベンチに座って、あの二股の猫の話しをする事にした。


「図書館の資料に、猫ちゃんの名前は、載ってなかったの。最初は、妖怪のように書かれてた」


「いい子なのよ」


 それは、悲しいお話だった。



 二股猫始末


 この資料には、城に飼われていた、年老いた猫と、お姫様の話しが載っていた。お姫様は、町の男の人を好きになった。町人だと父親は絶対許さない。だから、秘密の通路を通って、対岸の島で逢引していた。それを知っているのは、この猫だけ。なぜなら、お姫様が、偶に猫も連れて来たからだ。その時はもう、この猫は、大年寄りで、20年以上生きていた。姫様は、この猫が大好きで、いつも世話をしていた。あるとき隣の藩が、この小さな城を襲ってきた。この、姫を嫁に出す、出さないでもめたからだ。もう姫も15歳になっていた。そこで、猫は、姫の彼の許に行き、助けを求めた。城が燃え出して、猫が来た理由が分かった彼は、猫を連れて、島から城内に侵入した。ところが、それを敵と勘違いした侍達が、彼を殺そうとしたので、猫は、化け猫になり大暴れした。二人は、秘密の通路に逃げ込むことに成功した。ところが、敵の大砲の流れ弾で、その通路が壊れて二人は死んでしまう。城も、敵の手に落ちてしまった。二股の化け猫は、いつの間にか消えていた。



「全部、アンハッピーに終わったけど、猫ちゃんは、悪くないと思う」

「そうよ、二人を助けたのよ」

「だから、海を見ているの」


 やっぱりミカは、私達の話が分かる。猫ちゃんに同情してくれた。


「そんなの、可哀想すぎです。私は、絶対猫ちゃんの味方です」


 うんうんと私達も頷いた。


「猫ちゃんの名前が分かると、もっと仲良くできると思うんだ」


「絶対呼んだら、来てくれると思う。私は、見ることしか出来ないけど、猫ちゃんは、聞こえいていると思うのよ」


「私も調べてみます」


 こうして、ミカとは、親友になった。


 ミカを送った帰りがけ、美代子が自慢した。


「ミカは、私の熱い心が分かる子なのよねー」


「はいはい、明日からは、部活もちゃんと出るのよ」と、言うと。


「お母さんか、お前はー」と、ドーンとぶつかってきた。美代子の胸は、大きい。私は、ちょっと吹き飛ばされて、劣等感だけど、友達を連れてきてくれたから、大目にみてやろうと思った。

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