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オカルトクラブと翼の少女  作者: 星村直樹
守り神
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龍の祠

 午後。私達は、四人で、龍頭山の一本松を目指すことになった。龍頭神社を更に超えて北に少し登ると大きな松がある。ここが、龍頭山の頂上だ。龍頭神社にお参りして、一本松に辿り着くと自分の街が一望できる。松の周りには、桜の木がこの松を取り囲むように植えられていた。私達は、巨大な松を見上げた。


「大きいね」

「はくしゅん」

 美代子が、松を見上げてくしゃみをした。

「本当、大きいね。樹齢はどの位なんだろ」

「千二百歳だよ。オレ達の大先輩だ。ここ一帯だと最高齢の木だよ」

「潔さんは、一本松も調べたんですか?」

「こういう高齢の木は、ご神木といわれて、信仰の対象なんだ。父さんに教えてもらった」


 木のたもとに行くと小さな祠があった。修験道の人達が、この松に挨拶をしていたのが分かる。私達は、一本松に挨拶した。


「一本松の横に洞窟になった祠があるんだ、行ってみないか。修験道の人達は、最初ここを終着地にしていたそうなんだ。もしかしたら、地龍信仰かもしれないから見に行きたいんだ」


 潔は、ミカに教えられた、龍頭山の修験道が使う春夏秋冬参道の話が気になっているようだ。春秋の道が日本の地形に倣っているのが、引っかかるようだ。


 その祠は、人の手で彫られたものだった。中に入ると以外に広い。修験道の人達が、ここに泊っていた事が分かる。奥は暗くて深いのだが、私もとても気になった。美代子は、探険七つ道具が入っているバックから懐中電灯を出した。ミカが、私の服の裾をつかんでいいですかと言うのでしょうがないと思って了承した。四人は、洞窟の奥に入って行った。奥に行くほど暗くなるので、ミカや美代子、私などは、ちょっと腰が引け出した。


「もう、引き返しませんか」

「こんなに深いと思わなかったよ」


 潔は、奥に行きたくて仕方ない。

「でも、少し暖かくないか。綾瀬はどうだ」


「うん、奥に行くほど明るくなってきた。何かありそう」

「冒険!」

「怖くないですか。地の底って感じですよ」

「龍神様が守っている山だよ。悪い者は、いないよ」


 美代子は、冒険の匂いを嗅ぎつけ、奥まで行く気満々になった。ミカは、一人で、引き返すことも出来ず、私の服の裾をギュッと握り締めた。


 私達は、神棚があるちょっと広い所に出た。みんなは、ここが、終着点だと思ったようだ。しかし、私には、この神棚の奥から光がこぼれているのが見える。


「この先に行くわよ」


 三人とも驚いていたが、神棚を越えて行く私についてきた。目の錯覚で奥はないと三人は思っていたようだが、岩をすり抜けるように進むと、そこには、更に奥に進む道があった。それも、もう一度、そういう壁がある。そして、少し湿気を感じる。


「鍾乳洞?」

「相当深そうだよ。どうする」

「私は、皆さんについて行くだけです」


「ごめん、もう少しだけ先に行かせて。この奥が光っているのよ」


 私は、胸がドキドキし出した。これが、冒険なのだろう。私しか分からなかっただろうが、急に開けた所に出た。それは、見えない光の森だった。外の世界と変わらない木々や植物が仲良く生息していた。私は、この森に見とれた。

「キャ」

「ワッ」

「麻衣、急に立ち止まらないでよ」

「ごめん、ここすごいのよ」

「そうだね。ヒカリゴケじゃあないか。オレ達にも明るく見えるよ」

「ちがうの、私には、森に見えるのよ」

「そうなんだ!」


 美代子たちもここは、明るく見えるので、思い思いにこの広い場所を歩き出した。この広場の中央には、渦高くなった所が有り、そこにも小さな祠があった。しかし中には何も入っていない。

 美代子が見つけてみんなを呼んだ。


「ここにも小さな祠が有るよ。お参りしといた方がいいんじゃない」


 全員集まって、手を合わせた。私には、この祠の中に杯が見える。黄緑色に光っていたので、気になって触ってみた。


 触れるわ


 龍神様の導きなのだろうか、見えない光の世界の物で又触れるものに出会ってしまった。杯を取ってみると思ったより大きく、手のひら二つ分位ある。何に使うのか分からないが、以前から思っていた疑問を確かめることにした。植物なのだが、たまに、現実世界と見えない光の世界の植物がずれる事がある。種も別の位置に落ちる。いつも見ているのは、それだけのことなのだが、ここには、その見えない光の世界が広がっている。ここにある植物を杯で触る事が出来る気がした。もしかしたら、種を採取できるかもしれないと思った。美代子が、変な動作をしている私を見て聞いてきた。


「どうしたの」


「祠に杯が有ったのよ。みっちゃんも触ってみる? 手を広げて」

 私は、美代子の手の上に杯を置いた。

「重さは、感じないけど、確かに杯だね」


 潔とミカも集まってきた。今日は、不思議な事が続く。私は、近くにある花をこの杯で、なぞってみた。花は、この杯に当たって揺れる。


 杯で花に触れるじゃない。じゃあ、この杯で、種を採取する事ができる


 私は、杯を元の祠に戻して辺りを見回した。樹齢は、分からないが、桜の木とザクロがある。梅の木もだ。この時期、種を落とす植物はない。私達の町の特産品は、桃、びわ、マスカット、イチジクだ。もし、種や実がずれている物を見かけたら、ここに植えたいと思った。


「えっと、みんな聞いて。ここには、桜や梅の木が有るわ。植物は、タンポポやアザミよ。だけど果樹は、あまりないみたい。桃も、びわも、イチジクもないわ。みっちゃんには、話したでしょう。たまに、現実の世界とずれた植物があるって。杯が有れば、ここに、種を持ってくる事ができると思うの。ちょっと大変だけど、手伝って。今でも、ここは絶景よ。絵を書いてみせるわ」


「びわとか、イチジク泥棒しろって事! いいわね」

「それ、父さんから聞いたぞ。悪ガキトリオだろ」

「何でだろう、種だと育つの大変だし、何時実がつくかわからないのにそうしたいのよ」


 私は、ミカにもいいのではないかと思っている。本当の杯の使い方は、ミカに関係が有ると思った。そのためにも、果樹が有れば、ミカの為になると思うのだが、種だと実がつくのに何年掛かるかわからない。しかし、私達の子孫のために必要なことの様にも思えた。美代子や潔もそう感じたようだ。


「不思議、私もそうした方がいいと思う」

「オレもだ。種だと育つのに何年掛かるかわからないのに、必要な事だと思ったよ」


 ミカは、私達の会話をじっと黙って聞いて、私達の話しを心に留めている。


 潔が、今日は、ここまでにしようと言ってきた。


「この先に行くと、地龍に関係するものが見つかると思うんだけど、木野さんが限界だよ。鍾乳洞は、とても複雑な事が多いから、危ないし、今日は、ここまでにしないか」

「わかった」

「賛成です」


 ずっと紗江子さんに、私の事を話している美代子が、珍しく神妙な事を言ってきた。


「どうする、お母さん達に鍾乳洞の話、する?」

「大人が入ってくると、鍾乳洞が荒らされるかもしれないな。白川のお母さんは、肝が座った人だけど、うちの父さんは、絶対騒ぐと思う」

「恥ずかしいけど、私のお父さんもそうだと思う。紗江子さんは、みっちゃんに任せるよ」

「子供だけだと、危ないと思うんだ。私は、この先に行きたくてしょうがないけど、お母さんに言うと、今は、ダメですって言うに決まってる」


「急がなくていいよ。オレなんか、綾瀬が言ってた笠置神社の狐も気になるから、今調べてる所だよ。実在しそうなんだ」

「それ、面白そう」

「みっちゃん、単純ね」

「ハハハハハ」

「ウフフフフフ」

「いいじゃない、アハハハハハ」


 三人が笑っているのを見て、ミカが潔にも自分の事を話そうと、このとき決心したようだ。潔は、ミカに自分の事を告白されて、でんぐり反って驚くことになる。鯉に、私たちが助けにくる事を伝えたのはミカだ。疾風が、いつ青龍になるのか分からないが、みんな、立派な龍になると確信した。

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