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オカルトクラブと翼の少女  作者: 星村直樹
守り神
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気球

 オカルトクラブかー、それで、発足祝いに取って置きのお菓子を出す事にした。良子さんに新しい友達が出来たと言ったら、簡単にOKしてくれた。それも、今、美代子が連れて来ていると言ったら、「お母さんにも見せなさい」と、良子さんもお菓子を奮発してくれた。


「ミカちゃん、いらっしゃい」


 本当にいっぱいお菓子を持ってきたので、美代子の目に星がいっぱい光りだした。


「おばさん、全部食べていいですか?」

「いいわよ、みっちゃんもゆっくりしてってね。麻衣子って、ちょっと変な子だからミカちゃんも宜しくね」

「ちょっと、お母さん」

「ミカちゃん、かわいい子じゃない。みっちゃん趣味いいわー」

「ですよ」


「ミカちゃん空にあこがれているんだって」

「まあ、カッコいい。今度、ゆっくり聞かせてね」

 良子さんは、手を合わせて感心していたが、買い物に行く気だったので、またねーという感じですぐいなくなってしまった。


 ミカの夢の話も聞きたいけど、現実はどうよと思い、飛行船の話しを聞くことにした。


「ミカちゃんは、飛行船に乗った事あるの」

「ないです。でも、気球は、あります」

 美代子も、食いついた。

「どんな感じだった」

「昇降用のバーナーの火が、カコーって感じで、最初はビックリしたんですが、空に上がるとすごく気分がいいです。みんな、ちっちゃくなって行くし、遠くの地平線まで良く見渡せるんです」

「面白そう」

「みっちゃんは、そうかもしれないけど、わたしは、ちょっと怖いかな」


 ミカは、急に手をぽんって胸の前で合わせて、なにか思いついたようだ。


「そうだ、今度、葉子さんの所に行って見ませんか。山の中なんですけど」


 私達の町は海辺で、周りを山に囲まれている。古い寺町で、江戸時代には、ここで、塩を作っていたから裕福な街だった。私と美代子は、海側に家がある。ミカは、山側の子だった。


「葉子さん?」

「ちょっと冒険家なんです。今は、人が乗れる気球を自分で作っています。それも、もうすぐ完成します。私も土曜日や日曜日に手伝いに行っているんですよ」

「面白そうだね、よし決まった。オカルトクラブの初部活は、それに決まり」

「みっちゃん、それ、オカルトクラブじゃあないから」

 美代子は、ヘヘヘヘと、舌を出している。

「そうでもないと思います。麻衣さんは、私と違って、昼間も見えるのですから、きっと、私達とは、違う景色を見ると思います。それも私達の町の上空なんて、なかなかないですよ」

「オウ、私の勘通りじゃない」

「もう、調子いいんだから」


 お菓子を食べながら、美代子は、足を延ばしてリラックスモードに突入していた。みんなソファがあるのに、そっちには座らないで、金魚がいるベランダ側にへたり込んで話す。私は、その、葉子さんが気になった。


「葉子さんって、どんな人」

「ミカみたいに、背中に羽が生えてたりして」

「そうなんですか」

 そう言いながら、ミカは背中を一生懸命見ようとする。結構、体が、やわらかい。

「ちっちゃいよ。今度、空を飛んでいる時に見てみれば」

 私にそう言われて、落ち着いた。


「葉子さんですが、まだ、大学院生です。もう、修士論文を書くだけみたい。観測気球を揚げてオーロラを撮るんだって言っていました」

「そうなんだ、なに学部」

「学部は良くわからないです。バンアレン帯がどうのって言っていましたけど。ちょっと、美代子さんに、似てるかな」

「すっごい、興味沸いて来たー」


 美代子は、ふにゃふにゃに寝転がっていたくせに、ガバッと起き上がって、急に元気になった。


「何歳ぐらいの人」

「26歳だそうです」

「もしかして、物凄く男っぽい?」

「何それ、私が、男っぽいって事?」

「今頃気づいたの」

 そうかなーと美代子は、ポテトチップをサクッと食べた。


「葉子さんは、髪が長くてカッコいいです。でも、話すと、男っぽいかも」

「やっぱり、みっちゃんだよ」

「いいんじゃない、カッコいいんでしょ」

「気球は、ちょっと乗ってみたかっただけみたいです。体験しないと気が済まないって、言っていました。だから遠くに行くような事は、ないと思います。空気を暖めるバーナーや乗るための籠は、大学に有るから借りるだけだし、帆布を使って作っているバルーンが出来れば、完成かな」

「もしかして、手で縫ってる?」

「専用のミシンを借りてやってます。手は大変じゃないですか」

「なあんだ。ミカって行動力あるじゃない」

「そうでもないです、私、気球に乗った事があるでしょう。作っている人がいるって言うから、ちょっと見に行っただけなのに、無理やり引っ張り込まれたって言うか、巻き込まれたって言うか」

「あー、そっちの方」

「でも、葉子さんって面白そう。みっちゃんも行くでしょ」

「いく、いく」

「テスト飛行が終わったら、本当に、ちょっと移動するかもしれません。もうすぐ連休ですから。今から手伝っても、損はないと思います。私たちも少しだけなら乗せてもらえると思います」

「すごい!」

 私も、相当乗り気になった。

「良かった。バーナーが来る時は、大学の人も手伝ってくれるみたいですけど、今は、私と葉子さんだけだから、嬉しいです」


 休みの予定が決まったので、今度は、私の話しになった。


「私より、麻衣さんが不思議です。私みたいに夢だったら、夢で片付くけど、今、見えるんですよね。他に、どんなものが見えますか?」


「そうねー みっちゃんなんだけど、赤いオーラが出てるのね。どっちかって言うと、燃えているって言うか」

「そう、私は、燃える女なんだ」

 ガッツポーズの美代子。

「結局、おせっかいなだけって分かったんだけど、暖かい炎なんだ」

「何となく分かります」

「それ、誉めてるの」

「そうよ。最初に見えたの、みっちゃんだもん。今日呼ばれて、玄関に行ったら、みっちゃん物凄く燃えてたよ」

「アハハハハハ」

「おもしろい、他には」


「さっき、ミカちゃんが神社で狐を見たって言っていたでしょ。あそこに、いる狛犬、あの子は、青い光かな。たまに抜け出しているようだから、見られるとしたらその子なんだけど、狐とは違うと思うの、気になるわ」


「じゃあ、調べに行く?」


 さすが、燃える女、美代子。行動的だ。


「休みは、葉子さんの所に行くんでしょう」

「土曜に神社に行って、葉子さんの所は、日曜でもいいんじゃない」


 なんだか本当に、部活が始まるような気がしてきた。


「分かった。でも、最近一番気になるのは、一本松にいた猪さんかな。とっても大きいのよ。主様だと思うんだ。城山から小さく一本松が見えるじゃない。普通の大きさじゃあなかった」

「それも調べるわよ」

 美代子は、物凄く楽しそうだ。しかし、ミカは不思議そうにした。

「どうやってですか」


 また、美代子が、先に話した。二股の猫ちゃんは、見えない美代子にも実感が有る話しだ。小さい頃、猫ちゃんの話しに二人で辿り着いたときは、すごく嬉しかった。


「えっとね。海の近くに城山があるでしょ。昔、お城が建っていた山。麻衣が、あそこに、大きな猫がいるっていうのよ。怖いじゃない。遊び場だったけどやめたわ。それも、尻尾が二つ。それで、図書館で調べたら、500年前の猫又事件っていうのが出てきたの。事件をよく読むと、猫が、主人を助けていた。だから、いい猫だって分かって、また、遊ぶようになったのね。前は、そこで、ケンケンしているときに、ドテッってこけてたけど、それからは、それが減ったのよ」


「ケンケンで、こけてたのは、みっちゃんが、おっちょこちょいだっただけなんだけど、その大きい猫ちゃんは、前より近くで見るようになったわ。だから、知るっていうのは、大切だって思ったのよ」


 二人に、説明され、ミカは、私達の話しに引き込まれたみたい。「夢で空を飛んでいる時に猫ちゃんを見たいです」と、鼻息が荒くなった。「それじゃあ、海側に出てみるんだ。後で感想を聞かせてよ」と、言う話しになり、この後、下見で城山に行く事になった。

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