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オカルトクラブと翼の少女  作者: 星村直樹
守り神
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潔巻き込む

 放課後、ミカと手話していたが、やはり、龍頭山の鯉ちゃんが気になってしょうがなかったので、美代子にメールで相談する事にした。今は、ブラバンの練習中だから、メールを返信できないことは、分かっている。それでも訴えたかったという事だ。今週は、授業が3日しかない。週末にはもう連休に入る。今までにないぐらい、いろいろな体験が待っていると予感させられる。


「麻衣さん、分からない」

 私は右手を振って見せた。


「じゃあ、分かった」

 飲み込めたと首から胃の辺りまで手を下げる。


 最低でも、YES、NOが分かれば、意志の疎通ができる。今の所、簡単な単語ばかりだ。でも、口の動きと顔の表情もついてくるので、入りやすい。私の学校には、手話部が無くて幸いだ。こんな事をやっていたら勧誘されていだろう。私達は帰宅部だ。気になる世界は、学校の外にある。

 潔が、オカルトを好きになった理由も分かる気がする。家が神社で、周りは、古いものだらけ。家を出ても、言い伝えや、不思議な話しに事欠かないのが、私達の町だ。潔は、小4から小5ぐらいまで、そんな本ばかり読んでいた。私は小3ぐらいから、変なものが見え出したのだが、最初、怖かった。だから、潔がオカルトの話しをすると嫌がった。もしかしたら、変なものが見え出した時、潔にも話したのかな、憶えていない。


 美代子からメールが来た。今日は、遅くなるから先に帰ってというものだった。基礎練習に続いて楽曲もやるようになったのだろう。後で、私の家に来るとあった。葉子さんの気球は、日曜に試運転される。みんなで見に行く予定だ。うまくいくと、乗せてもらえるかもしれない。予定が埋まって嬉しいのだが、龍頭山の鯉ちゃんが、もし青龍だったら、2000年近くも、あの池に閉じ込められている事になる。後ろの崖から、湧き水が染み出していたから、枯れた事はないのだろうが心配だ。そろそろ帰ろうという話しになり、美代子との話しは、後でメールするといってミカと別れた。


 中学校は、ミカの家と自分の家の中間にある。校門で別れて、川伝いに帰宅した。この川は、隅音川という名前だ。ここに、鯉ちゃんを放流して、もし、普通の鯉として一生を全うしても、問題ないぐらいきれいな川だ。私は、もう、鯉泥棒をする気でいた。人の一生に比べて、神様の寿命は、気が遠くなるぐらい長いのかもしれないが、それでも、泣いて訴えるぐらい長いこと池に閉じ込められているのだ。鯉を川に逃がすのを犯罪だといいたかったら言えばいい。そう、思いながら川を眺めて帰った。

 家に帰って、金魚に餌をやりながら、一人ごとのように、2匹の琉金に話した。


「お前達は、ここにいても嫌そうじゃあないから良かったよ」


 この2匹は、いつも機嫌がいいように見える。仲良く泳いでいた。金魚鉢の中には、いつもの丘の風景が広がっている。人も大勢いた。金魚がそのあたりを泳ぐたびに水が揺れて風景が歪んで見える。金魚の寿命は、10年、永く生きても20年だ。短命で幸せそうな金魚を見ていると、長生きが必ずしも幸せだとは限らないと思えてくる。でも、鯉ちゃんも自由になると、違う景色を見るんだろうなと思った。夕飯には、隆さんも間に合った。昨日私が採った山菜で和え物を良子さんが作るといっていた。隆さんはそれを食べたかったのだ。うちの親の行動パターンは、分かりやすい。


「麻衣ー、来たよー」

「みっちゃんだ」

 私は、パタパタ玄関に急いだ。みっちゃんは、片手を挙げて、ようと、やっている。後ろに、潔がいた。


「潔君ちょっと待ってね」

 私は、美代子を階段のへこんだ所に連れていき事情を聞いた。

「私が呼んだんだよ。力仕事になりそうじゃない」

「ミカには、なんて言うのよ」

「オカルト部のことは、言ってない。助けたいんでしょう、青龍」


 今日も美代子は激しく燃えていた。

「分かったわ、潔、上がって」


 私の家はそんなに広くない。仏間で話しをする事にした。仏間にいくには、リビングを通る事になる。


「おじさん今晩わ」

「潔じゃないか。なんだ、悪ガキトリオ結成か」

「それ、お父さん達だから」

 隆さんは、「ハハハ違いない」と、高笑いしている。

「今、お茶持って行くから、話してて、いいわよ」

 良子さんも潔を久しぶりに見たのだろう、嬉しそうだ。仏間からも、庭には出られる、ちょっと空気を入れ替えた。潔に座布団を勧めて、ハアと息を吐いた。


「みっちゃん、もう、私のこと話した?」

「潔は、元から薄々知ってるよ。小3のときに、あんたが、潔にも話していたじゃない」

 やっぱりそうだったか。潔のオカルト研究の発端は、私だ。

「今日、様子が変だったろ。白川にメールしたんだ」

「ごめん、人に話すと、嫌がられそうな話じゃない。それで、どこまで知ってるの」

「小3のときに、白川に燃えるようなオーラが見えたって言ってただろ。アレからいろいろ調べたよ。その話しをすると嫌がるからしなくなったけど、今でもたまに本を読んだりしてる」


「じゃあ、最近の話しは、まだ聞いてないのね」

 美代子が頷く。

「そうねー 何から話そうかな」

「潔は、どんな感じに見えるの」

「えっと、手がテカテカになってる。ゲームのやりすぎね。でも、からだの周りを空気が対流してるよ。風属性じゃあないかな。気ままな人だってこと」

「そうなのか?」

「アハハハあってる」


「最近見えない光は、赤黒く見えないで、きれいな虹色に見えるんだ。『二股猫始末』の猫なんだけど、まだ、城山にいるよ。この間、玉って名前が分かったから、声掛けて友達になった」

「私なんか手を、なめられたよ」

「白川も見えるのか」

「ぜんぜん、でも、認識していると少し分かるみたい」

「へー」

 潔は、疑いもしない。幼馴染でないと、こうは、いかないだろう。


「入るわよー」

 良子さんは、今日もお菓子を奮発してくれた。最近、ずっと大盤振る舞いだ。

「潔君悪いんだけど、お父さんに、同窓会の発起人にならないか聞いといてくれる。後で、うちの人も電話すると思うけど」

「わかりました。同級生のだけですよね」

「そうよ、助かるわ。潔君はしっかりしてるもの、麻衣子をお願いね。この子ちょっと頼りない所があるから」

「ちょっと、お母さん」

 良子さんは、笑いながら出て行った。この間ミカには、変なところが有るといい、今度は頼りない。お菓子が出ていなかったら文句を言っていたところだ。


「他にどんなのが見えるんだ」


「昨日お父さんが話していたから、気になったんだけど、正香院の和尚さん。浄國院の間の細い道あるでしょう。あそこの柳の下に、いつもニコニコして、私達の通学を見守ってくれるんだけど、振り向いたら、三重塔をジッと見てるのよ。ずっとそうなの」


「ニコニコした和尚さんって、私のお母さんの、習字の先生?」

「私のお母さんも習っていたそうよ」

「フーン、今度調べとく」

「そんなことできるの」

「まあ、いろいろと。後は、何が気になるんだ」


「本当は、龍頭神社の鯉よ。なんだか泣いているみたいなの」

「だから、青龍だよ」

「それか、今日の話しは」


 美代子は、お菓子を食べながら楽しそうだ。ここの所、美代子は冴えている。潔を連れて来たのも正解なのだろう。


「龍頭神社の御社の横に池があるでしょう。遠足の時の事覚えてる。あそこの池は、湧き水の天然の池よ。後ろの岩から、水が染み出してる。あそこに鯉がいっぱいいて、その中で一匹だけ、すごく光ってる鯉がいるの、呼ぶと、その鯉だけ挨拶してきたんだ。その後キロキロ泣いちゃって、訳が分からなかったのよ。潔に聞いて、もしかしたら本当に青龍かもって思ってる」


「そうなんだ。それで、頭にこぶはあった?龍玉は付いていたか」


「普通の鯉より、大きな頭をしていたけど、こぶはなかったわ。私触ったもん。赤い模様はあったけど」


 潔は、ちょっと考え込んだ。その間も、みよこは、一人でお菓子を食べていた。ボテチを半分ぐらい一人で食べていたから、ペシッと手をたたいた。

「みっちゃん太るわよ」

「ブラバンって、思ったよりお腹すくのよね」

 私の障害をものともせず、お菓子を突っつく。潔が口を開いた。


「もし、頭にこぶが出たら、逃がそう。青龍だったら、この町が、今より発展するよ。そういう神様なんだ」


「賛成!私は、元からそのつもりだよ」

 先に、美代子に言われてしまった。だから、私が、アンチ発言する事になってしまった。


「逃がすって、鯉泥棒になるよ。それに相当大きかったし」

「綾瀬も逃がしたいって思ったんだろ。慌てて、教室とび出すからビックリしたよ。逃がすのは確かに簡単じゃあないかもしれないけど、三人でやればできると思う。そのためにオレを呼んだんだろ白川」

「わかってるじゃん」

「どうやって?」


 美代子は楽天的だけど、私もちょっとは考えた。一番、人に見つからなくて、川への近道は、東登山道だ。決行は、真夜中になる。あそこには、灯りもないし、半分は、足が痛くなる道だ。


「一番いいのは、水槽に入れる事だけど、まずもてないと思う。いるかを運んでいるみたいなやり方はどうかなと思うんだ。二人は、担架を持つ。そこに鯉を入れて濡れ手ぬぐいで覆う。もう一人が、タオルに水をかけるんだ。大人しくしてくれないと大変だけど」


「分かった」


「頭にこぶが出てからのほうがいいと思うんだ」


「それって、本当のこぶじゃないといけないの。見えない光の方だと、相当頭が光ってるけど」


「その鯉は、オレ達にも見えるんだよな。文献だとこぶになるけど、綾瀬の話しも気になる。明日でいいから、絵にして見せてくれよ」

「えー恥ずかしい」

「写メでいいから」

「しかたない、明日送るよ」

「じゃあ、メルアド」

 そうか、私も潔のメールアドレス知らないや


 私達は、メールアドレスを交換した。今度、城山の玉を紹介して欲しいといわれ、連休に入った木曜にそうすると約束した。放課後は、ミカと手話をやっているからだ。龍頭山の鯉の話しだけで潔は、他には、と、聞いてこなくなった。私もネットでちょっと調べてみたが、本気になって調べると、文献や、似たような話が多すぎる。そのうち、公園の池の主の話しや、笠置神社の狛犬の話しをしようと思った。


 この後は、美代子の部活の話しや、潔のオカルト話で盛り上がった。私は、見えない光の話しを積極的に話したい方ではない。しばらくは、この幼馴染二人と、ミカ意外には話さないと思う。潔も、その辺は理解してくれているようだ。

 帰る二人を玄関まで見送って、ミカにメールした。ミカも、潔の知識と鯉ちゃんを運ぶ話に同意してくれた。そこで、悪いけど、もう一度、鯉ちゃんを見に行ってくれないかとお願いした。特に、頭の光り方を見て、絵にして欲しいと頼んだ。自分は、ゆっくり見ていなかった。頭が一番光っていたのは憶えているが、もし、球状に光っていたら、大変じゃあないかと考え出していた。

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