コンの気持ち、ミカの気持ち
その夜、明日の今頃は、海の中にいると言う真夜中の時間に、急に何かに起こされたように目が覚めた。寝床の横が、うっすら光っている。
コンだ。
「どうしたの、寝られないの?」
そう言って、頭を撫でようとして、びっくりした。大きなたんこぶを作っている。たぶん、朱雀の所に行ってきたのだ。一人で、トライして、結晶化している朱雀に、突撃したのだろう。
「一人で、朱雀の所に行ったんだ。大きなたんこぶ作って、ダメじゃない。こっちにいらっしゃい」
驚いたことに、コンに触れる。たぶん全身、光色化して朱雀にぶつかったのだろう。布団の上に座ると、膝の上に乗ってきた。
「くうん」
声まで聞こえる。相当、頑張ったのが分かる。私は、コンの背中を撫でながら、みんなで頑張るのよと言い聞かせた。たぶん一人だけ、合唱に参加できなかったから、自分ができることをやろうとしたのだ。
「コンは、ポポワさんの瑞光を浴びてから、神社に来るのよ。ポポワさんの瑞光は、ずさ神社まで、降り注ぐ。でも、コンは、ポポワさんの背中で、それを受けるのよ。ミカには、コンが神社に来てから、名前を授けるようにしてって言う。私たちは、コンを待ってるわ」
「くうん」
コンは自信無さげだ。
「いい、コンが朱雀を助けるのよ。私たちは、その手伝い。そうね、私達も徳利に触って朱雀に話しかけるわ。ミカが、朱雀に名前を授けて、私たちも、とっくりから出てきてくださいって言う。そうしたら、たぶん、朱雀のオーラが膨らむと思うの。炎のオーラが、大きくなるわ。その時、コンが朱雀にぶつかるのよ」
「わふん」
「大丈夫よ。友達なんでしょ。また、一緒に遊べるわ」
「ふうん・・」
何をすればいいのか、分かって、コンが膝の上で寝だした。よっぽど疲れたのだろう。もう寝息を立てている。私も、眠い。コンを、横に寝かせて、もう一度寝た。
翌朝、ミカがコンの話をしてくれた。ミカもコンと一緒にいた。
「昨晩、コンが無茶したんです」
「知ってる、たんこぶ作ったんでしょう。私の所に来た」
「まだ、そこで、寝ているんですか」
「そうだよ」と、幸子が、コンの背中を撫でている。
光素は物質ほど重さがないから、とっくりは、びくともしなかった。それで、ミカにも昨晩コンに話したことを話した。
それを聞いた幸子が、オズチ様に、そのことを話して来ると、昨日の砂浜に向かった。オズチ様は、そこで寝ていた。
「わたしは、麻依さんと一緒にいます。入口が狭いんです。ポポワさんの瑞光を浴びると羽が広がって神社に入れなくなります」
「分かったわ」
ミカと、昨晩コンに話したやり方でいこうよと、話しているとテラス側から、幸子が大きな声で、私たちを呼ぶ声が聞こえた。ミカが、テラスに走る。幸子は、オズチ様の背中に乗って海上を疾走していた。
「ミカちゃーん、麻依ちゃーん」
手を振って喜んでいた。
オズチ様は、そのまま、猪らしく岩を駆け上ってくる。
「麻依さん、さっちゃんがテラスにぶつかります。オズチ様に乗っているんですよね。これじゃあ大激突です」
ミカの声に、私もテラスに走った。
ミカが、「もう、ダメ」と、目をつむる。
二人は、テラスをすり抜けて、その上に着地した。
心配して損したミカが、二人を怒った。
「もう、びっくりしたじゃないですか」
「ぶふぉ、ぶふぉ。ミカには、通り抜けを教えとらんかったな」
幸子がオズチ様の話し方をまねて橋渡ししてくれる。ミカが怒っていなかったら、「さっちゃん、じょうず」と、褒めていたところだ。
「さっちゃんは、平気だったの」
「うん、元々、通り抜ける方が多かったから」
「そうじゃ、幸子には、つかむ方を教えとる。話は聞いたぞ、ポポワの背中の上で、コンに瑞光を浴びさせたいんじゃて」
「ミカがそんな感じだったんです」
「そうか、近い方がええかもしれんな。ミカもそうするか」
「私は、麻依さんたちと一緒にいます。神社の入口、狭いじゃないですか。ポポワさんの瑞光を浴びると羽が広がってしまうんです」
「わしが助けたら、すり抜けられるぞ」
「その方が、言霊、飛ばしやすいよ」
幸子も勧める。
「ミカ、そうしようよ」
「いいですけど、いま、さっちゃんがすり抜けるの見てませんでした。もう一回お願いします」
ミカは、さっき目をつむってしまった。ちょっと確かめたい。
「幸子も結構できるぞ。ミカで、やっちゃれ」
「ミカで?」
「その方が分かりやすいじゃろ」
「わたしですか??」
「ミカちゃんごめんね」
そう言って、幸子が、ミカに抱きついてきた。ミカがそれを受けようとすると、幸子がミカをすり抜けた。
「あっ・・・」
実は、ミカは、この時、幸子が幽霊だと初めて認識した。幽霊なのは知っていたが、実感がなかった。だから、涙が出てきた。
「ミカちゃん・・」
「そうか、すまんかった」
「ごめんなさい。分かってはいたんですけど。あれっ、おかしいな」
私は、言葉がなかった。
幸子が、ミカを抱きしめた。
「でもね、お兄ちゃんと安子は、とっても喜んでいたよ。オズチ様が鍛えてくれたおかげなんだ」
ミカにとって幸子は、夢でも現実でも触って話せる唯一の友達だ。幸子が、亡くなっているのを知っているのに、今まで、これっぽっちも、そう、思っていなかった。
「すまん、幸子、ミカをすり抜けるのはやめじゃ」
「うん」
私達は、龍神様に守られている。幸子は、その、私たちの世界と隔絶できるチャンネルにも、自分を置くことができるようになっていた。今まで、真剣に考えていなかったが、龍神様が、私たちを幸子に会わせてくれたのだ。ミカには、後で、そのことを話そうと思う。
「それで、どうするかって、オズチ様が」
「やります。その方が、朱雀のためになります」
少し鼻声だが、ミカが、意志強く答えた
「よう言うた」
私は、今日の予定を話さないといけない。
「オズチ様、今日なんですが、お昼に、みっちゃんたちが、海賊戦の練習から、帰ってきます。その後、また歌を歌いませんか」
「ええぞ」
「さっちゃんも歌いましょう」
まだ涙目のミカだった。
この後、龍神様に守られている話をしたら、銀のカプセルを抱いて、また、泣き出した。でも、今度は、「龍神様、ありがとうございます」と、つぶやいていたので、もう、大丈夫なんだと思った。
私達は、この後、夕方から、無理やり寝て夜中に備える。
健太郎たちは、試しが近づいたので、阪本さんの家に泊まっている。夜中に会えるだろう。
私達が寝ようと布団に入った夕方、ミカは、幸子とオズチ様とコンと一緒に砂浜で、おしゃべりをして過ごした。そこに、ずっと青海島を散歩していた玉も加わった。オズチ様が、幸子の世界をミカに話した。ミカは、ずっと後になって、そのことを教えてくれた。




