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オカルトクラブと翼の少女  作者: 星村直樹
守り神
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ミカ

 人は体温を持っている。

 約36.5度。

 熱を持っているのだから光っているはずだ。その光は赤外線で、人は、見る事が出来ない。でも、光っている。私は、この弱い光を見る事が出来る。最初、周りが明るいと気にならなかったし、夜、光っていても気になるものではなかった。

 ある日お父さんが金魚を買ってきた。白い琉金と赤い琉金。二匹とも仲が良くて、その上、私が指を水面に浸けると餌をねだって、つついてくる。二匹ともかわいい。だから、暇さえ有れば頬杖ついて金魚を見ていた。それから、金魚も光って見え出した。喫茶店で、従姉の真理子が、それは、光素の光だと教えてくれた。


 私は、綾見麻衣子。中学校に上がって、少し大きくなった胸にサポーターみたいなブラをつけて学校に登校しだした時は、もう4月も半ば過ぎで、みんなより遅れたようだ。放課後、部活をしていない人用に説明会があった。その時に、体験ということで、ブレザーを脱ぐことに。ブラウスが、ちょっと透けていたからブレザーを脱ぐのが恥ずかしいなと思って周りを見た。みんな立派な胸をしている。まあいいかと思って、いつものように金魚を見るために急いで家に帰った。結局、私は、何処にも入部しなかった。


「麻衣子ー、暇しているのなら、部屋の掃除でもやりなさい」

「後でやるー」


 良子さんは、そう言うが、只ボーッとしている訳ではない。金魚を見るようになって、赤黒く見えていた、見えない光に色がついた。私には、金魚鉢が虹色に見えている。だからと言って、周りが変な色に見えたりしていない。ちゃんと、調整できるみたい。


 指を水面に入れると金魚たちが寄ってきた。指のところが水で盛り上がっていて、只でさえ綺麗なのに、金魚がつつくと、まるで、万華鏡のようにいろいろな色にゆれる。


「お前達、仲がいいんだね」

 二匹とも寄り添うように突っついてくる。餌は、朝と学校から帰った時に、あげてもいいといわれていたので、あまりじらさないで、あげる事にした。

「フフ」


 うつ伏せに寝転がって、金魚鉢に顔を近づけ、足をパタパタさせながら中を覗いた。そこには、別の世界が見える。丘があって、道があって大きさは関係ないのかな、人がいっぱい歩いていた。金魚が泳ぐと、水が歪むので、その景色も歪んで見える。でも、綺麗。みんな何しているんだろ。何時見ても飽きない風景だ。だから、最近は、すぐ家に帰っていた。そのせいで、友達は、幼馴染の美代子ぐらいしかいない。白川美代子は、中学に入ってブラスバンド部に入ったので、ちょっとご無沙汰している。


 その美代子が、家にやってきた。


「麻衣―――――っ」


 それも大きな声で呼ばれた。慌てて玄関に行って見ると、美代子が、見たこともない子を連れて来ていた。でも、自分と同じ制服を着ている。中学になって、違う小学校の生徒と一緒になったからだ。


「みっちゃん部活は?」

「それどころじゃないよ。ちょっと相談に乗って。ミカも上がるわよ」


 美代子が、ミカと言った子を見て、あっと思った。背中に羽が生えていたからだ。みんなには見えない光のほうだ。他の人には見えない光は、少し虹色架かっているから見分けがつく。何となく、美代子の相談が分かった。


 私は二人を金魚がいるリビングに通した。


「私、麻衣子、あなたは?」

「木野ミカです」

「ミカでいいよね。私のことも、美代子でいいから」と、美代子がミカの呼び方を決める。


 ミカは、とても大人しそうな感じだが、目がパッチリしていて、おちょぼ口で、なんだか抱きしめたくなるような子だ。背中の羽は小さいけど真っ白。ちょっと笑顔が見たくなった。笑わなかったら、くすぐっちゃおうかなと思ったぐらいだ。だけど、美代子が、「ミカのことをどう思う」と、先に聞いてきたので、断念して、美代子に耳打ちした。


「私のこと話しちゃったの」

「まだだよ。話していいのかな?」

「ダメ、変な人だと思われるでしょ」

「ヘヘへ」


 なんだかこそこそやっていたら、ミカが怪訝な顔をしてこちらをジッと見ているので、まずいと思って「なんでもないんだー」とごまかした。


 美代子は、ミカの事を話し出した。


「ミカだけど、すごく消極的なんだって。学校にいても、あまり、友達と話さないし、部活に誘ったんだけど、自分がやりたい事が分からないって、言うの。男子なんか、ミカの事を遠巻きにしているけど、そのうち告白されると思うんだ。もったいなくない」


 変だなーと思いながら私もミカに聞いてみた。


「本当に、何がやりたいか分からないの?」


 そういわれて、ミカは、ビクッとした。私は、やっぱり、と思った。美代子も、その、ビクッが、気になるようだ。ちょっとお茶取って来るねと言って、美代子に目配せした。美代子は、「私も手伝うー」と言って私の後を追ってくる。台所で美代子に「コップ出して」と、言って、冷蔵庫から麦茶を出してコップに注ぎながら、ミカの事を話した。


「なんか見えた」

「みっちゃん、面白がってるでしょ。見えたわよ、天子の羽」

「すごい、あの子、天使だったんだ」

「どうかなー。もしかしたら、空を飛びたいのかも、ちょっと鎌掛けてみない」


 美代子だけは、わたしが他の人に見えない光が、見える事を知っている。それは、幼馴染だからだ。最初の暗い赤色が見える時から話しているから、全く疑う事無く私の事を理解してくれている。それに、自分が見たものを二人で検証して遊んでいたので実感もある。


「空って、飛行船かな」

「違うんじゃない、なかなか他人に言えないんだから男子がやるようなことよ。例えば、自転車こいでプロペラ回して空飛ぶとか」

「言いにくいんだから突拍子もないことだよ。宇宙船のパイロットじゃない」

「ちょっと飛躍しすぎ」


 やっぱり、美代子は面白がっていた。結局人力飛行機に落ち着いて、私が、聞くことになった。リビングに行くとミカは、私御用達の金魚を見ていた。それを見て私は、ミカと友達になれそうだと思った。金魚を優しそうな目で見る人は、私の味方なのだ。


「ミカちゃんも金魚が好きなんだ」

「はい」

 私は、うれしくなって、麦茶がいっぱい入っているのをミカに出した。お盆をそのままにして、私も座りストレートにミカに聞いてみた。


「ミカちゃんって、空にあこがれていない?さっき、空を見てたよね」

 ミカはビックリして、私を見た。

「どうして分かるんですか」

「だから、その、です、ます、止めようよ」

 美代子が、チェックを入れる。

「顔に書いてるもん。空飛びたいですって」

「うそ!」

 ミカは、顔に手を当てて一生懸命触った。

「アハハハハハ」

「うっふふふふ」

 私達は、ミカの慌てようがおかしくって笑ってしまった。

「本当に書いてる訳ないでしょ。ちょっと、みっちゃん笑いすぎ」

 美代子は、お腹を抱えて痛そうにして笑っている。真っ赤な顔をしているミカに悪いと思った。


「人力飛行機で飛んでみたいの」

「違います。夢でいつも飛んでいるんです。でも、本当なんです」

 そうなんだ。だから、人に話せなかったのね

 しかし、親友の美代子は、おかしいなどと、これっぽっちも思っていなかった。

「すごい。ミカ、空飛べるんだ」

 私の影響だ。美代子は、変な体験をそのまま、真に受ける。それどころか、私に被って話しを大きくする。嬉しそうに私に話しを振ってきた。

「麻衣、やっぱりミカは、天使だよ」


 あちゃー、みっちゃんは、私の事を話す気満々だ


 美代子は、ブラスバンド部に入ったのが不思議なぐらい活発で、さわやかな感じで、体育界系の乗りって感じ。小さいころから剣術道場に通っていて背も高い。


「麻衣さん何のことですか?」


 もういいやって思って、話すことにした。


「みっちゃんにしか話したこと無いんだ。他のみんなに内緒にできる?」


 何の事ですかって顔をされた。しかし美代子が、先に話した。多分、ミカもこの話しの友達になってくれると直感したのだろう。そういえば、美代子は勘がいい。


「ミカの背中に天子の羽が見えるって麻衣が、言うのよ」

「私は、人が見る事が出来ない光が見えるんだ。最初は、赤外線が、赤黒く見えただけなんだけど、最近は、人のオーラって言うか、そういうのか見えるようになったのよ」


 物凄く、ドン引きされるかと思ったが、ミカは、自分の仲間が出来たと思ったのか、喜んだ。


「本当ですか」


 やっぱり美代子が、先に話す。おせっかいだけど、そこが、美代子のいいところだ。

「例えば、手がてかてかに油で光っている子が、クラスにいるんだ。その子は、ゲームを毎日6時間もやっている子だったし、ミカみたいに足に羽が生えていた子は、サッカーが大好きだったのよ。後でその子に聞いて見ると、なるほどーって感じなんだ」


 ミカが、急に自分の事を話し出した。


「私、空にあこがれていました。でも、飛行機に乗りたいとかじゃなくて、ふわふわ浮かんでいたかったんです。だから、飛行船は、興味有ります。私も、夢で、空を飛んでいる時だけですが、麻衣さんが見ている様なのが見えます。だから、気になって仕方ないんです。それで、学校には無いのですが、オカルトクラブみたいなのがやれないかなって思っています」


 ミカは、丁寧だが、いっぱい話したそうだ。そこで、美代子が、例の話しをしてやりなよと言うので、海の話しをする事にした。


「ミカちゃんは、空を飛んでいる時に、海に行った事ある? すごいのよ、見たこともないぐらい、大きな鯨がいて夜空を見ているわ。川の河口付近もすごいのよ。大きな川魚や、海の魚が入り乱れてとっても綺麗なの」

「私は、街から出た事ないです。でも、神社で狐を見たこと有ります」

「ヘーそうなんだ」


 私が、変な納得をしていると、美代子が、私達二人の肩を抱いて嬉しそうに笑った。


「それじゃあ、決まりだね。オカルトクラブ」

 私とミカは、どう見ても帰宅部だ。でも、私と違う視点を持つミカが気になった。学校にオカルトクラブを申請するのは気が引けるけど、頑張るしかないかー。帰宅部改めオカルトクラブをここにめでたく発足する事になった。

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