白と黒
「えっええ?…違うわよねぇ…?」
じろじろと見定めるような視線が痛い
何より距離が近い、こいつはパーソナルスペースが広いと見た。
辛抱ならないな
『知り合いにでも似ていました?』訪ねると
「い、いえなんでもないの。きっと人違いねごめんなさい」
焦ったように両手をひらひらと振り、苦笑いを浮かべると寄せていた顔がすっと遠ざかっていった。
『そうですか』
「所で!」
次はなんだ…
中々解放してくれない男に私は嫌気が指し始めていた
こんなに絡まれたの久し振りだ
「いきなりなんだけど暫くお家に泊めてもらえないかしらぁ?」
顔の横で手を合わせ甘えるように上目遣いをされた。
『っはい?』
何を言っているんだこの男は
「お願いよぉワタシ行く所ないのよ!
いきなり放り出されたものだから荷物も持ってきてないし…それにこの時期じゃない?外でなんて寒くて死んじゃうわー化粧水も乳液も美容液も持ってきてないのよ!?ワタシ乾燥肌なのよ!あっ、メディ○ュットも履いて来てないわね!」
お願いよぉ!これじゃあ生きていけないわぁと半泣きで土下座までされてしまった。
まぁ…話は分かったが後半は関係あったのだろうか
とりあえず前半で家を追い出されたと言うことは理解できたが何故空から落ちてきた?そこが疑問なんだけど
それにこの男無茶ぶりすぎる
見ず知らずの人間(怪しい初対面)を自分の家へはい喜んでと泊めるはずがない
確かに今の時点では私しか頼る人間が周りにいないかもしれないがこちらにも警戒心と言うものもあるんだ。
簡単に返事は出せないだろう?まぁ、考えずとも答えは当に決まっているのだが
『無理』
きっぱりと即答で断ってやった!が
「そこをなんとかしてちょうだい〜何でもやるわよ?家事でも料理でも何でもできるわ」
腕捲りをしてガッツポーズで気合い十分と言いたげに自信満々にドヤ顔をしてきた。
己を売り込むのに必死だな…
少しかわいそうになってきた
いやね、生活力の欠片もない私にとってはそれはもう好条件と言えるんだけど
う~んでもなぁ、不審者だしなあと唇を尖らせながら考える。
すると大きな影が頭上に覆い被さった。
…なんで
突如ゾッとした悪寒が走った
上を見上げると血のように赤い色をしたドラゴンが宙に浮いているではないか
いつの間に?全く気がつかなかった...,
鋭い黄色の眼光に口の間から見える白い牙には朱色のキャリーケースが掛かっていた
私をギロリと一睨みしてから、ドラゴンは男の上にキャリーケースをぼこんと落とす「ウォオオオオオオオオオ!!!」頭を抱えて転げ回る男をギャオオオオと笑うかのような雄叫びを上げると偃月に向かい早々と飛んでいってしまった。
「こっの....ボケナスくそ馬鹿ドラゴンーーーー!!!!!」
男は先ほどの口調とは打って変わった様子で、口汚くドラゴンに、暴言を吐き空に向かって石をぶんぶんと投げつける
『オカマ!!!あっ...あの!ドドッドッラゴンとは知り合い!!なのか!?』我ながらもの凄い剣幕だったと思う
思わず男に掴みかかった
男は面を食らったような顔をして「あいつが…見えた…の?」
こくりと頷くとまたも驚いた顔をしたが、ハっと気がついたようににんまりとした笑みを浮かべると
「教えてあげましょうか?彼方の世界について…貴女の家でゆっくりと....ね」私の頬を両手で包みこみ耳元でそっと囁いた
あぁ....まるで悪魔の囁きだ
そんなの絶対
『はい』
頷くに決まっているのに