白と黒
…いっいきなり何をするんだこの男ちょっと驚いちゃったじゃないか
ドクドクと跳ねる心臓を押さえながら
捕まれた足を早く離せと言うように揺すると顔を上げた薄い琥珀色の瞳と目があった。
おや、この男存外綺麗な顔をしている
和の国離れしている顔だが外の国の人間なのだろうか
まるで作り物のよう、傷だらけで鼻血が出ているのが非常に勿体ない
「貴女.....ね..ぇ」
男は私をキッと睨むと烏の濡れ羽色の髪を掻き上げた、書き上げた髪の間から見えた春風でゆらりゆらり揺れる花のイヤーカフがとても印象的で目を奪われた
あれ?この花何処かで見たことがあるような
確か去年の夏頃に近所の民家で…いや違うかな
ごく最近も何処かで見たような気がするんだけど
うーん思い出しそうなのに、首を捻り考えこんでいると
「ちょっとぉ!」
聞いてないと思ったのか不満そうな声が聞こえてきた。
声の主はもちろん男だ
その表情は眉を潜め不貞腐れている
「怪我人放置して置いてくなんて酷いじゃない!貴女それでも和の国の義を重んじる和の人間なの!?」男はギャンギャンと騒ぎ手をバタつかせ抗議をし始めた。
や...やかましい、睡眠不足の頭に響く....
それに子供じゃあるまいし、あまりでかい図体で暴れないでほしい。
『あまり頭に血が上ると出血が酷くなるぞ』
とりあえず落ち着けとまぁまぁと手で制した
「あら、心配してくれるの?ありがとう。でもこんなのかすり傷よ。痛いけど大した事ないわそれに血はもう止まってるし」
あれ〜??ケロッとしてるなぁ???
あの高さから落ちれば普通死んでいる所なのに、暴れるほど元気で鼻血やかすり傷程度の怪我で済んだのなら幸運過ぎやしないか?この男の体がゴムか衝撃材なんかで出来てるのか!?
『 あっそうだ、誤解されたままじゃ気分悪いから弁解しとくが私は放置をしたのではなく救急車を呼ぼうとしただけだからな』
立ち去ると思われたのは仕方ないけれど、
こんなに元気そうに騒いでいるし本人も大した事ないと言っている、救急車は必要ないだろう
念のためになら後日自分で病院にでも行けばいい
これ以上絡まれても面倒極まりない
私に出来る事は何もない
今は無難に謝って(走って)去る(逃げる)のが吉だ
そして早く帰って寝たい