白と黒
一通り散策したし最後に噴水広場でも見て帰ろうかな
いつのまにか降っていた花も止んでいたし
胸騒ぎも収まった
収穫は無しか
まぁこんなもんだよな
噴水広場に向って足を進めていると
突然何処からか絹を裂くような悲鳴が公園内に響き渡った
『っなんだ…!?』
驚いて周りを用心深く見渡していると足元からナァーンと声がすると黒猫が座っていた。
私とパチッと目が合うと黒猫はすぐに視線を逸らして上をじっと見つめている
瞳孔が開いている....
獲物、蝙蝠でも飛んでいるのか?
不思議に思いながら猫につられて視線を上を向けると遠くから何か黒いモノが落ちてきているのが見えた
同時にギャアギャアと叫び声のような物が聞こえてくる
でかいカラス?いや、でもなんか違うな
近付いて来るにつれて人形のようにも見えるが…
嫌な予感が的中しないといいな
そう呑気に思いながら落ちてきているモノを眺めていると、
きゃああああああ!!!!!
死ぬぅううう!!!死んじゃうわー!!!
今度ははっきりと叫び声以外の言葉が聞こえてきた。
人......間だ
嫌な予感が的中した
何が素敵な夜だ
苦虫を噛み潰したような顔で参ったと頰を掻いた
どうすればいいんだ?
今の私に出来ることは少ない
仮に出来ることとすれば..
ぎゃああああああ!!!!!
ドサッドサドサ ボキッボキボキボキ
グェッ!
アヒルの呻きに似たが声が聞こえた
どうやら運良く木に引っ掛かったらしい
木の中に突っ込み地面直撃は、ま逃れたようだが結構な速度で落ちてきたからな
枝が人間の重さに耐えきれるはずもなく
バキッバキバキ
バキッ
案の定枝が折れ、人間が地面へ落ちてきた
此処が木の多い公園であったのが唯一の救いだろう
グォキ...
…でも無事ですむはずがない
嫌な音を聞いてしまった
死んでないといいのだけれど
近づき肩を軽く揺さぶり生きてますか?と声を掛ける
「…………。」
応答無し。
地面にうつ伏せになったままピクリとも動かない人間を見て眉をしかめた。
どうしよう
偃月の夜、空から降ってきたモノの正体は人間だった。