無色
昔からこの世の物では無いものが見えた
夏に空から舞い落ちる雪の結晶や見たこともない花
触れるとシュワっと弾けて消えてしまう儚いもので
他の世界から溢れ落ちてきている物なのだろう
空を見上げると何処からともなくちらほら降り注いでくるもので
今日はチューリップのような花だった。
紅色、金茶、菖蒲色とても鮮やかな色をしている
この空の先には私の知らない世界があるんだろうな
いつか機会があれば行ってみたいと思う
まぁ生きてる内は無理だろうなと諦めているけれど
この世の物ではないと言うのはもう一つあって幻獣、人外、怪異?よく分からないけれどそのようなもので私が年中見ている存在ある
西洋の本や昔話などでよく出てくるような姿をしている事が多い
以前、海の浅瀬で透き通るような綺麗な声で歌う体が鳥で顔は人間の鳥人間みたいなのも見たことがあったのだが後で調べたらセイレーンと言うものらしかった
生憎まだ有名な人魚とやらは見たことがないのだが、代わりに河童はあると思う。以前川で壁突きをしている緑色の人形を見たことがあるんだが…知り合いに話したら全身タイツの変なおじさんだったんじゃないの?と、言われ自信が無くなった。胡瓜を持っていたとか証拠が有れば河童だと自信満々で言い返せたのだけれど
後はまぁそうだな...
他に有名な存在で言えば...
随分昔の話になるのだが、風を受け気持ち良さそうに飛んでいる金色の光輝くドラゴンを見た事がある
流星群の降る夜だったからそれはそれは絵になる光景であった、シャッターを切るのを忘れてしまうほどにね
でも、幼少期の頃は彼等を見るのが怖くてたまらなくて....
自ら鮮明に見える方の眼球を抉り出してしまった。
とても愚かな事だ、今思うとなぜそんな発想に至ったのかゾッとする。その際今後見える世界が半分に欠けてしまったと言うのに、以来もう裸眼では以前より鮮明に見える事は少なくなってしまった、けれど科学者だった父親の特製カメラのお陰で今はレンズ越しにならはっきりと彼等を見る事ができる、レンズ越しならば触れる事もだ
たまにレンズの中にある私の青磁色の瞳が恋しくを思える時もあるけど、まさか抉り出すなんてなぁ…他にもっと方法があったんじゃないかなんて今なら思うけど
あの頃の自分にとってはきっとそれが自分でできる最善の事だったのだろう
…後悔しても今更だ
ない右目を眼帯越しに擦り勿体ないことをしたなと自傷気味に笑った