街に落ちた流星
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肺に吸い込まれた煙は空気と混ざり合いながら白いもやとなって吐き出される。冷たい空気の中、私は空を見ようと手すりに手をつく。感情の欠落した冷たさだけが手のひらに伝わってくるのが分かる。アパートの2階から見上げた無機質で暗い空は、地上に灯る明かりによって白く淀んでいる。その中で強く光る幾つかの星だけが自らの存在を主張しているだけであった。いつからこの地は、月や星の明かりだけでは物足りずに自分達で光を放つようになったのか。再び吐き出した煙が上空に広がり、空の淀みと重なり合った時、眩い光の粒が音も無く西の方角に流れ落ちた。多くの人達はその光に気付かずに歩みを止める事はなかったが、私はその一瞬の煌めきを見逃さなかった。地球上で星を観察するのは人間だけである。多くの人間に見澄まれる事のなくなった健気な光の粒は、一瞬の生涯に何を願うのか。