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05 転生、殺しの快楽?

(:フロンス街道)


 俺は神聖ユーロ帝国に向けて馬を走らせていた。俺が乗っている馬は美しい白毛の馬であり、信じられない速度でウィード村を囲う森から神聖ユーロ帝国まで続く<フロンス街道>を駆けている。フロンス街道は<馬術>のスキルも持っていない俺が何故馬に乗れているか。


(ルシウス、しっかり掴まっててよ!?)


 

 頭の中にレムリアの声が響く。 

 この馬は、転生したレムリアなのだ。



(:冒頭より一時間前、ウィード村)


 レムリアの遺体を埋め、荒らされた自宅から一通り必要なものを取り、神聖ユーロ帝国に向かう手段を考えながら家を出た時に、まるでずっとそこに居たかのように一頭の馬が現れた。どこかの厩から逃げ出してきたのかと思うと同時、声がした。


(ルシウス、ほら、早く行くよ! 乗って、乗って!)

「……レムリア?」

(そうだよう、あたしだよう! 早く行ってぱぱっとシーラちゃんたち助けちゃおうよ!)

「いや、あの……説明をしてくれ。なんで馬なんだ?」

(人間の体を用意するのって、時間かかるんだよねえ。馬だったらすぐに転生できたから、この体でいいや! って思って)

「そんな簡単に転生できるものなのか」

(あたし、神様だからね。他の人たちは無理だよ? ほら、早く行こう! さっき確認したら、いま、フロンス街道をずーっと北上してた。輸送隊は帝国に帰還してるみたいね。行軍速度もゆっるゆるだし、あたしなら追いつけるよ! ほら、早く行こう!)

「理解に苦しむな……まあいい、行こう」



 ◎



(;フロンス街道)



「食料隊より配飯です!」


 

 食料隊の兵士から握り飯三個と白湯が配られる。オレは皆が群がっている所から少し離れた場所に腰を下ろす。「チッ、シケてんな」とハンスが舌打ちしながらこちらに向かってきて、兜を脱ぎ、神に感謝を述べた後に、配られた握り飯をがっつく。


「亜人どもをブッ殺せるっつうから楽しみだったのによ。全然殺せねえじゃねえか」

「でもお前、いい女食ってたらしいじゃねえか」

「ああ、あのピンク色の髪の……アイツは良かったぜ。お前にもヤらせてやりたかった」

「ソイツ、亜人か? 奴隷として連れてきたか」

「いや、人間だよ。夫の名前か息子の名前か知らねえけど、『シリウス、シリウス』とかっつってぴーぴーうるせえから、殺しちまった」

「勿体ねえな。すげえ巨乳だったらしいじゃねえか」

「そりゃもう。早くエルフの国に遠征してえなあ。クソ亜人どもを犯して殺せるもんなァ」


 今回は輸送隊の護衛とかいうクソみてえな任務を俺たち帝国騎士団第7部隊は任された。第1部隊から第6部隊、それと魔術師軍団は別ルートで森国フォレスティアにそのまま侵攻しにいったらしい。俺ら第七部隊はフォレスティア周辺に散在している村々を蹂躙し、亜人は奴隷にして人族からはブン奪って、それから帝国に帰還する。全く、クソみてえな任務だ。フォレスティアにまでいけてたら、エルフの女どもを好き放題できてただろう。


「……そういえばよ、ドリューズの班がエルフを何匹か捕まえてなかったか?」

「ああ、三匹捕まえてたな。オスが一匹とメスが二匹。まあ、ドリューズはエルフに射たれて死んだけどな」

「クソダセェな、アイツ。信心が足りなかったんだろ。ていうか、そのエルフたち犯しちゃダメなのかよ」

「ダメらしいぜ。今回の任務で捕れたエルフ、あいつ等だけだからな。それに、一人はガキだし。傷物にしたら値が下がるから、手を出すなと」

「チッ……亜人の女はいいんだけどなァ。お前の班に同行して、オレもピンク髪の巨乳とヤりたかったぜ」


 まあ次の遠征に期待だな、とハンスがげらげらと笑った。米粒が口から零れ出る。

 きたねェよ、とハンスに言おうとしたとき、オレは異変に気付いた。

 声が出ない。喉元が熱い。なんだ、コレ。ぼたぼたぼた、と音がする。温かい。赤色だ。

 ハンスに目を向けると、ハンスも驚いたような顔をして、こちらを見ている。その喉元からは長剣の先が出ている。うなじから、貫かれている。血が滴っている。分からない。何がどうなってやがる?



「死んで悔いろ」


 

 子どもの声がした。ずじゅり、と音がした時、オレの喉を貫いた長剣が引き抜かれ、視界が真っ赤になって、それから、それから、それから、あ、あ、あ、



 ◎



[ジャン] <<帝国騎士団第7部隊ジャン班班長>>

level 27 age 29

体力 0/50 (死亡)

魔力 22/22

スキル

<馬術+3>

<槍適性/威力+2>(槍の適性がある。槍を用いた時に威力が上がる)

<統率+1>(部隊を統率する適性)

<全能神エイリアスの加護>(全能神エイリアスの加護を受けている。戦闘時、体力と魔力が千倍に上がる)

=!<虚飾神アリアスの詐術>(<全能神エイリアスの加護>の正体。戦闘時、体力、魔力を+1する。また、魔法を一度使う毎に使った魔力の半分を虚飾神アリアスに献上しなければならない。鑑定のスキルレベルが30を超え、かつエイリアス教教徒でないもののみにこのスキルは表示される)

!<神罰> (神々に背く行為を繰り返した。死んだ際に救済が行われず、地獄に堕ちる。このステータス異常は鑑定のスキルレベルが20を超える者のみに表示される)


[ハンス] <<帝国騎士団第7部隊ハンス班班長>>

level 28 age 29

体力 0/54 (死亡)

魔力 23/23

スキル

<馬術+2>

<槍適性/威力+3>(槍の適性がある。槍を用いた時に威力が上がる)

<統率+2>(部隊を統率する適性)

<全能神エイリアスの加護>(全能神エイリアスの加護を受けている。戦闘時、体力と魔力が千倍に上がる)

=!<虚飾神アリアスの詐術>(<全能神エイリアスの加護>の正体。戦闘時、体力、魔力を+1する。また、魔法を一度使う毎に使った魔力の半分を虚飾神アリアスに献上しなければならない。鑑定のスキルレベルが30を超え、かつエイリアス教教徒でないもののみにこのスキルは表示される)

!<神罰> (神々に背く行為を繰り返した。死んだ際に救済が行われず、地獄に堕ちる。このステータス異常は鑑定のスキルレベルが20を超える者のみに表示される)



 俺は帝国騎士団の兵士二人の死体に<鑑定>を使う。気になるステータスが一つ。


「<虚飾神アリアスの詐術>……」

(はあ、何してんだろ、アリアスくん)


 少し離れた所に待機しているレムリアが念話で俺の思考に割り込んでくる。


「どういうことだ、レムリア」

(<エイリアス教>って、たぶん、アリアスくんを信仰させるためにアリアスくんが作った宗教だよ。まあアリアスくんは全能神じゃないんだけど。こんなことしてるなんて、知らなかった。下界、興味なかったからなあ。まったく……ほんとに、何してんだろ、アリアスくん)

「アリアスが作った? なんのために?」

(魔力を献上させるためにじゃないかな。<全能神アリアスの加護>なんて偽物のスキル使ってまで、魔力集めたかったんじゃないかな。弱いからなあ、アリアスくん)

「亜人たちも良い迷惑だな」


 神々の話は置いておいて、俺はまずシーラを助けなければならない。この兵士二人の死体が発見される前に、輸送隊と、それを護衛する部隊を丸ごと殺さねばならないのだ。少し骨が折れる。が。


(……ルシウス、なんか、楽しそう?)

「まさか、これから人殺しをするのにさ」


 俺は少し上がった口角を隠すようにして、手で顔を覆った。





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