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04 亜人狩り

執筆途中のものを操作ミスで投稿してしまいました。すみませんでした。ブックマーク、評価、ありがとうございます。



(:ウィード村を囲う森林内)


 もの言わぬ哀れな山賊の死体が三体とゴブリンの焼死体が一体が転がっていた。ゴブリンたちは狂気の宴ーー圧倒的な殺戮を終えた後、再び俺の前に整列した。俺はスキル持ちでもないのに、随分としっかり命令を聞くものだな、と思っていると、俺は自分のステータスプレートに何かが<書き加えられる>感覚を覚えた。名状し難い感覚だが、それは確かに、<書き加えられる>という感覚だ。


 ”<ゴブリン使役+8>を獲得。”


「……必要の無いスキルを獲得してしまったな」


 整列する醜いゴブリン達を見て、俺は呟く。斯様な醜い小鬼たちを使役して戦うような趣味は無い。さて、このゴブリンたちをどうするか。<鑑定>。


[グリーンゴブリン]

level 9(魔物/ゴブリン族)

体力 20/20

魔力 8/8

スキル

<土属性魔法適性>(土属性魔法に適性がある)

<棍棒適性/威力+8>(棍棒の適性がある。棍棒を用いた時威力が上がる)

<ゴブリン族の結束>(周囲にゴブリン族が居ると、スキル<大力>を発動可能)


「土属性魔法に適性があるのか、お前たち」


 一匹のゴブリンがこくこくと頷く。意思疎通はできるようだ。ゴブリンの口から涎が滴っている。―—醜いな。俺は転がっている死体とゴブリンとを見て、思う。それから、命令を下す。


「お前たちは穴を掘り、その山賊達の死体を埋めろ。その後、同様に穴を掘れ。それから―—土属性魔法を用いて、自分たちを生き埋めにしろ」



 ◎



 ゴブリンたちが穴を掘り始めたのを見届けて、俺は村へ帰ろうとしていた。森は方向感覚を狂わせる。俺は途中で何度も道に迷いそうになりながらも、着実に村への距離を縮めていた。

 しかしそれにしても、シーラが遅いのではないか。

 <森の民>のスキルを持つシーラのことだから、ほんの五分でもあれば父と母を連れてやってくるものだと思っていたが、未だシーラの姿が見えない。悪い予感。

 

「……何かあったのか?」


 俺が一人言ちると同時、轟音がした。

 地響き。


「ッ!?」


 音がしたのは―—村がある方角からだ。黒い煙が立ち上っている。悪い予感、的中か? 誰かが村を襲っている? しかし、誰が? 可能性があるのは山賊の残党だ。しかし、その可能性も高いものではない。彼らは死に際まで仲間を呼ぼうとしなかった。ならば、誰が?

 俺はせいいっぱい駆ける。




 ◎



(:"東の農村”ウィード村)

 村は蹂躙されていた。

 家屋は燃やされて、未だ炎は轟々と音を立てている。木も薙ぎ倒されており、村の井戸には毒が投げら陽光に照らされた水が薄紫色に濁っているのが分かる。


「……ユーロ帝国の亜人狩りだよ」


 俺の家の隣に住む男が井戸の底で濁る水を見つめながら、そしてその目に涙を浮かべながら、言った。神聖ユーロ帝国が”亜人狩り”と称して実質的な遠征ーーエルフの森国フォレスティアに大しての宣戦布告を行ったのだという。俺は頭の底が熱くなるのを感じると同時、亜人狩りについてレムリアが先ほど言っていたことを思い出す。


 ―—神聖ユーロ帝国は人族至上主義の教義を持つエイリアス教を信奉する国家よ。彼らの教義の中では人族こそが「全能なる神」に造られたもので、その他の種族は「人のなり損ない」と考えられているの。だから神の為に失敗作である亜人を殺す、それか奴隷化するのが彼らの”聖なる仕事”なんだって。



「連れ去られちまったよ……ツェロンさん、ハンナさん。それに……シーラちゃん」

「―—シーラもか」

「……ああ。ツェロンさんにハンナさんは騎士団相手に戦ってたんだが、シーラちゃんを人質に取られた。隷属の首輪を、自分で着けてたよ……俺は、助けらんねェで……!」


 男が煤で黒く汚れた手で涙を拭う。

 

「……なあ、手伝ってほしいことがあるんだ。俺一人じゃ、できない」

「……なんだよ、ルシウス」

「母さんの体を、埋めたいんだ」

「……母さん? 埋める? おい、どういう……ッ!?」

「殺されてた。犯されて、殺されてた。だから、埋めよう」



 

 ◎



 少し時は遡る。

 森を全速力で駆けながら、俺は少しの頭痛を感じていた。それはノイズのような頭痛だった。


(―—ス)


 脳内で声がしたような気がした。なんだこれは、と思いながらも俺は走るのを辞めない。脳内に響く声は声がゆっくりと形を取って行く。不明瞭な、ノイズのような声が、俺の知っている声に変わってゆく。


(ルシウス、ルシウス!)

「レムリア!?」

(よかった、やっと念話の範囲内に来た!)

「今、どうなってる!? なんだ、あの煙は!?」

(神聖ユーロ帝国の亜人狩りだよ、ツェロンさんと、ハンナさんと、シーラちゃん、連れて行かれちゃった!)

「亜人狩り?」

(神聖ユーロ帝国は人族至上主義の教義を持つエイリアス教を信奉する国家よ。彼らの教義の中では人族こそが「全能なる神」に造られたもので、その他の種族は「人のなり損ない」と考えられているの。だから神の為に失敗作である亜人を殺す、それか奴隷化するのが彼らの”聖なる仕事”なんだって)


 俺は”殺す”や”奴隷化”といった単語を聞いて、血液が冷たくなったような感覚を覚える。走りながら、さ叫ぶ。


「なんとかしてくれよ、神だろう!?」

(あたしが力を使ったらこの世界の秩序、おかしくなっちゃうんだよ。だから、あたしは現世に降臨する時に全能神様に力の制限を受けてるの。だから―—今、殺されちゃった)

「はあ!?」

(大丈夫よあたしは。肉体が殺されても、あたしは魂の大部分を天界に置いてきてるから、また転生はできるの。だから、あたしが死ぬ事は気にしないで! ちょう痛かったけど、気にしないで! 大事なのは、シーラちゃんたち!)

「どうすれば、どうすればいい!」

(取り敢えず村に戻ってきなさい。シーラちゃんたちは、隷属の首輪を着けられて、帝国に輸送されてるわ。だから、そこまでの命は保証されるわ。ましてエルフ族の奴隷は高く売れるから、傷をつけないように、ひどく扱われる事も無いはずよ)

「そんなこと言ったって……!」

(取り敢えずあたしの肉体を燃やすか、地中に埋めるかしてほしいの。そしたらあたし、また現世に行けるから。早くしてシリウス!)


 そして、村へ辿り着く。井戸の側に、男が居る。村が燃えている。

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