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それぞれの部屋

さてさて、どうなるのやら。

しなもんは混乱していた。

しなもんは青い長髪、碧眼、高身長で短槍[ヨロイドオシ]を操るプレイヤーだ。

正直、攻撃系スキルに極振りの自分では武器なしの戦闘はキツいと踏んでいた。

が、どうしたワケか目の前でクモは脚を全てブッた斬られていた。

そしてブッた斬った主は目の前に立っている。


敵?味方?

彼は手に持った鎌で蜘蛛を両断すると口を開いた。

「ふむ。オールでも脇差しでもなく槍ですか。失礼ながら少々、いえ、かなり面白味に欠けますね・・・。」

敵だ。そう認知した瞬間彼の姿が掻き消え、


「一撃で終わらせさせていただきます。」


ぞわり!と悪寒が走る。

[ヒュン]

[ヒュッ]


慌てて後ろを振り向くと鎌を持った彼とその奥にぺぱろにがいた。

どうやら後ろに移動して私に攻撃しようとしたようだ。

そこをぺぱろにが牽制してくれたらしい。

ぺぱろには金髪のピザである。


「アリガト!!・・・ぴざカ・・・。」

「オーケーデブに助けられるのは不満か!?つーかおれはピザじゃねぇ!いやぴっつぁだけど!」

いつものネタに少しホッとする。

気の知れた仲間だからこそ言い合える罵詈雑言だ。多分。


「ふむ。槍に弓ですか・・・。相変わらず面白味には欠けますが、噛み応えはありそうですね。」

そう言って槍を投げてよこす。

「言ってろ。歯ぁ砕けるぜじいさん?」

「オナカコワスヨ!」

「・・・え?食われてね?」

「アブラッポイぴざデイチゲキダロ?」

「いや、確かに年寄りに油モノはきちぃけど?俺は油モノなのか?」

よし、いつものネタだ。


「あなた方に会わせて名乗りを上げましょうか。私は[狂信者マッドプリースト]杢杢。失礼ながら我が崇拝すべきギルド[フューメイカーズ]の貴重な糧になっていただきます。」

「・・・[ファーマー]ぺぱろにぴっつぁ。つてもその制度は厳密には俺らとは関係ないんだがな?悪いが地面に縫いつけられてもらうぜ?」

「[ベイカー]しなもんろーる!ぶっサシテヤル!」



634は安心していた。

634は赤の短髪、低身長、胸なしの武者ギルドでは最古参の高レベルプレイヤーだ。

元々我らが武者ギルド[鬼神隊]の幹部は自分と鬼割番、超阻壁だけだったのだ。だが、戦うパン屋さんギルド[パン食推進委員会]のギルマスが大脇差し[カチワリ]を手に入れ、譲渡を拒否したため[カチワリ]を賭けてギルド戦が行われ、そして負けた。結果としてギルドは、吸収され今の形に至っている。別に不満はない。負けたのは事実だし、いちおうコチラに合わせたギルドの運営されている。つき合ってみて悪い奴らでもなかった。

だが鬼割番は違ったらしい。

仕えるべきリーダーが私からあっぷるぱーいへ代わった事を認めたくないようだ。

ゆえに少なくともいつも見張りをしている鬼割番は他のメンバーではなく私を助けにきてくるはずだ。

そう考えて走り出したのだが。


来ない。


鬼割番は落ち着いていた。

鬼割番は分かりやすい忍者ルックだ。

彼は蜘蛛と併走していた。

蜘蛛の背中から刀子を突き刺せばオール一本でも634が片づけてくれると思ったからだ。

だから風魔法の姿を消す魔法[スニーク]と[気配遮断]を自分にかけなおして動いた。

そして[彼]も動いた。



超阻壁は焦っていた。

超阻壁は金髪ロングタレ目巨乳のおっとり系美人だ。同じ金髪でも気の強そうな陽陽とは大きな違いだ。


ど、どうしよう。あたしホントに攻撃手段がほぼ無いのに!

盾まで取られちゃったら、あたし今後役に立たないよ!

[がぁん!]

「きゃあ!?」

何かがぶつかってきた。

「え?」

自分に向かってきた狼が吹き飛んだようだ。

『クソゥかてぇ!?』

「しゃ、しゃべった!?」

『チッ』

再び狼がかみつきにきた。

が、

[がぁん!]

[自動防御]すら働かなかった。

肩にかみつこうとした瞬間、吹き飛んだのだ。


狼が。


え、ええと、一応名乗っておこうかな?

「ちょ、超阻壁です?[タンク]やってますよろしくお願いします!」


陽陽は楽しんでいた。

「んふふ~。雨雨ってば話がわかるわ~♪」

そう、彼女は雨雨から密命を受けているのである。

「んふ~♪んふふ~♪」

他に誰もいない工房で口笛だけが響き渡る。

女の子回(?)でした(笑)

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