どうなってんの?
俺は広場にいた
真ん中には噴水があり、周囲には煉瓦づくりの建物が所狭しと建っている
しかし大事なのはそこではない。
みんな俺から目をそらしていく。
声をかけても逃げていく
どうしてこうなった?
ここはVRMMO[バビロン]スザクノ邦の第一広場。通称[初心者広場]。
文字通りゲームを始めた者はまずここに落ちてくる。
初心者同士でPTをくむもよし、熟練者がスカウトに来てもよし。
要はここでの出会いが後のプレイスタイルやフレンドに響くのだ。ここでの失敗はすなわちスタートダッシュ失敗と言っても過言ではない。
なのに、だ。
「なんでこうなった?」
しばし自分の行動を振り返る
そもそも バビロンはログアウト不可のVRMMOだ。
そう、ログアウトできない。いや別にバグじゃない。
そういう仕様なのだ。
なぜログアウトできないのか
これはちょっとばかり長い説明になる。
もともとVRシステムは現実と感覚のズレが大きすぎて心身に不調をきたすとして、ゲームへの応用は控えられていたのだが、この問題をあっさりと解決してみせた天才が居たのだ。
その名も曽根 誠
VRシステムがゲームに応用できない理由を知ったときの彼の反応は「じゃああっちで暮らせば?」だった。
ぶっ飛んでるよな?そんな理論通るワケ無い。
しかしこのオタク、交友関係が極悪だった。
VRシステム制作チームの一員から、政治家まで何でもござれだ。
オタクはドコにでもいるってことか。
そして自分の会社を立ち上げそのオタクどもを動員してなんとたったの1年で政府の開発援助までこぎつけたのだ。
オタクってすげぇよな。まぁ人のコト言えねぇけど。
ともあれかくして曽根の会社[soney]よりVRMMO[バビロン]は発売された。
一応政府には「自殺志願者にここで第2の人生を歩んでもらおう。」と提案して作られたこのゲームだが。出て来れないことを了承すれば誰でもゲームの世界には入れるのだ。
現実のゲームマニアは一斉に職を辞してプレイを始めたのは言うまでもない。俺、西嶋 祐希も先にプレイしていた友人に勧められ大学を中退しプレイし始めた一人だ。
そうしてバビロンに降り立った俺は 早速ゴツい斧を持った強そうな男に話しかけた。
あんま[友人]は頼りたくねぇからな
「あの、初心者なんですけどいろいろ教えてもらっていいですか?」
一瞬男の目が俺の頭上を泳ぎ、
「あ?おお、俺か?悪いがソロだ」
仕方ない、他をあたろう。あの槍使いも良さそうだ
「すいません」
「ウチのメンバーもう一杯なの!」
まだ用件も言ってないのに?
・・・ええい、もう一回!次はあの盗賊だ!
「あのぉ・・・」
「悪い嬢ちゃん!俺もソロなんだ!仲間が待ってるからもう行くな!」
嬢ちゃんじゃねぇ!逃げんな聞け
ソロなのに誰が待ってんだよ!
ってか・・・。
焦って周りを見渡すと
ぷいっ
みんな俺から目をそらす。
もう、やだ・・・。
そうして今に至る。