In The Past
※作中の『ゲーム』と現実に行われているゲームは別物です、実際に行う場合は法規制や安全に配慮してください。
どこか遠くで、銃声が響いていた。
やけに無機質な音が、仲間が一人減ったことを無慈悲に宣告する。
その仲間を見捨てたことに対する罪悪感を覚えている暇すら、いまは惜しかった。
生ぬるい風が首をなぜるのを感じながら、走る。身を隠すのにはうってつけだった丈の長い草も、いまとなっては行く手を阻む悪魔にしか見えない。
息をするたびに肺がひどく痛む。走り通しの身体は悲鳴をあげていた。手中にある突撃銃が、本来よりもずっと重く感じられる。いっそ捨ててしまいたいとさえ思うが、それが叶わないことは重々承知だった。
「はぁっ、……はっ……くそっ! なんだよ、なんなんだよ……!」
毒づきながら、なおも前進。もはや速歩とさほど変わらない速度だったが、少しでも気が緩んだらそのまま倒れ込んでしまいそうだった。そんな強迫観念にも似た思いだけが、かろうじて身体を動かしていた。
――目標地点にたどり着くことさえできれば、全てが終わる。
ただそれだけを頭の中で繰り返し唱えて、重たい足を必死に持ち上げた。