到来
僕はやっと四限目の授業を終えて、バンザイしているところだった。
僕は昼食はいつも食堂で取っていて、だからその日もそうだった。
「えっ?」
僕は思わず声を上げた。
「高校ってどんな所か見て見たくて」
そう言って微笑んだ僕の向かいの席に座っている女は、紛れもなく望々羽だった。
「なっ⁉ お前なんでここに居んだよ」
望々羽は無言でカレーを口に押し入れた。
「思っていた通りつまらない所ね」
「まぁね」
僕は答えた。僕が小さい時、高校生は夢のように楽しい生活を送っていると信じていた。
僕は昔、母親に暇だ暇だとひたすら言った事があった。母親は楽しいことを自分で見つけないといけないのよと真顔で言われたのを覚えている。結局僕は自分では何も求めてこなかったのだ。誰かから与えられるのをただ待っていた。
「私、屋上に行ってみたいの」
彼女はねだるように言った。
「よし、午後の授業はサボろう」
そう言うと彼女は目を輝かせた。僕も他人と違ったことをして見たかった。それはただ苦しいことから逃げているだけだと知っていながら僕は彼女の誘いにのった。
■ 一度、来て見たかったんだ。望々羽は消え入るような小さい声でつぶやいた。
「高い所好きなの?」
「ええ、そうね」
「そっか、そうだと思ったんだ。なんとなくそんな気がしたから」
望々羽は人を見下ろすのが好きなイメージだった。それを話したら、どんなイメージだ、と笑って蹴ってきた。
「やっぱり普通の高校生も捨てがたいよなー」
望々羽が突然らしくないことを行った。望々羽は手すりを鉄棒の代わりにしてぶらさがっている。
「ねぇ、制服デートしよ」
屋上にいるのに飽きてきた僕は彼女の誘いにのった。