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ねこじたトリニティ  作者: ニャンコ先生
第01章 猫舌カモミールティー
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第05話 初めての報酬

「さて、報酬のカードが何だったのか聞くのは、基本マナー違反なのにゃ。それに限らず、自分の持っているカードは教えちゃだめにゃ。カード構成を知られると言うことは、弱点をさらすのと同じにゃ。もし誰かに聞かれても、これからは言っちゃだめにゃ。もちろん聞くのもやめておいた方がいいにゃ」

 ふむふむ、確かにそうだ。しかし、そう言いつつ猫耳がそわそわと動いている。今差し込んだカードが何なのか興味があるようだ。ランクだけでも教えておくか。

「残念、ただのカッパーコモンのカードでした」

「そうなのかにゃ。ちなみになんだったのにゃ?」

 言っていることがきれいさっぱり矛盾している。ここは試されていると見るべきだろうか。単純にタミーさんがそういう性格なのか。教えてしまったてもいい気もするが悩む。

「先ほど教えちゃだめと習いましたので、秘密です」

「……う、うにゃ。それでいいにゃ。よく覚えてたにゃ……えらいにゃ……」

 耳がしょぼんとうなだれる。ものすごくしょんぼりとした雰囲気がただよう。少しかわいそうになって思わずつぶやく。

「知りたいですか?」

「教えてくれるのかにゃ?」

 耳が元気に反応し、こちらを向いた。期待にうちふるえる眼差しがまぶしい。ふと、昨日スロット数のことで、少しコケにされたようなことを思い出した。仕返しとは言わないが、ちょっといじわるをしてやろう。

「じゃあちょっとだけその猫耳をさわらせてもらえませんか」

 耳がびくんと振るえ、後ろを向く。

「にゃ……、それは…………うにゃにゃにゃ……」

「タミーさんみたいな立派な猫耳って初めて見るんですよ。ほら、僕ってこんな耳でしょ? だからすごく興味があるんです」

 多分今僕はすごくずるそうな表情をしてそうだ。タミーさんはそんな僕を上目遣いに見て、仕方なさそうに言った。

「うーん、ちょっとだけにゃよ?」

 ひょっとしたらいろいろ誤解を生んでしまったかも知れない。だけどいい。ゆっくりと手を伸ばし、タミーさんの猫耳に触れる。緊張しているのかピクピクと震えている。そのままそっと撫でる。

「うにゃ……。楽しいかにゃ?」

「はい、とっても」

「そうかにゃ……。じゃあ今日はここまでにゃ!」

 そう言ってタミーさんは逃げるように後ろに飛び跳ねる。しまった、もう少しさわっていたかったのに。

「さあ約束のものを出してもらうにゃ! 嫌とは言わせないにゃ」

 まだ耳が倒れている。よっぽど恥ずかしかったのだろうか。それを隠すようにちょっと強気を装っているようだ。

「はい、ちょっと待ってくださいね」

 そう言って僕は先ほど引いたカードだけを目の前に表示させた。マリーさんから教わったやり方だ。ウインドウを表示する機能を一部分解除して、特定のカードだけを表示させる方法である。『カード補助』の能力を使っても少し難しい。上級者向けの操作だ。

「にゃー! もうそんなやり方覚えたのかにゃ! すごいにゃ」と感心したあと、「どれどれ、よく見せてみるにゃ」と隣に擦り寄ってくる。

 タミーさんが顔を寄せて覗き込む。そこにはこう書かれていた。


『カッパーコモン

  脚力:運搬力上昇 レベル 01/20

  注記 フリースロット不可』


「おー、これは当たりだにゃー!」

「そうなんですか?」

「たくさん運んでもらえるにゃ」

 当たりというのはタミーさんにとっての話なのだろうか。本当は魔法のカードが欲しかったのだが、これはこれで便利そうだ。早速それを脚力スロットにセットしてみた。心なしか身が軽くなったような気がする。いや、5分後に効果が出るんだったか。

 フリースロット不可というのが少し気になる。そういえばこのカードはフリースロットではなく保存スロットに入っていた。おそらく脚力スロット専用なのだろう。念のためタミーさんに聞いてみた。

「フリースロット不可のカードはフリースロットに入れられないにゃ。脚力のカードは不可になっているものが多いにゃ。ほかにも時々フリースロットに入れられないカードがあるみたいにゃ。そうそう、魔法カードもほとんど不可だにゃ」

 なるほど、脚力と魔法は特別なのか。これは覚えておこう。

「にゃ。それから判別済みのカードはフリースロットに優先で入るけど、未判別のカードは保存スロットに入るのにゃ」

 そういったわけで、保存スロットがいっぱいになっていると、未判別のカードは入れられないらしい。そう言えば最初にマリーさんがカードを入れる仕草を見せてくれたとき、カードがマリーさんに入らなかったのは、おそらくこの応用だったのだろう。

「ちなみにこれってどのくらい効果があるんですか?」

「にゃー。10パーセントくらいかにゃあ。カードによって効果量が違ったと思うので詳しくは分からないにゃ。感知系のカードレベルが高くなると、詳しい効果がわかるようになったりするから、それまでお預けにゃ」

 僕の持っている『自己感知』のカードでも、レベルが上がれば詳しい数値がわかるという。しかしレベルが上がらない。成長スロットにカードをさしているだけで、勝手にレベルが上がるが、スキルを使ったりモンスターを倒したりすればその分早く成長するという話だった。まだ二日目、もう少し気長に待ってみるか。

「脚力系は便利にゃ。レベルを上げておいて損はないにゃ。特に運搬力上昇は重装備ができるから戦士系に人気にゃ。それ以外でも運搬用に需要は高いにゃ」

 なるほど、少なくとも汎用性の高いカードだ。しばらくはこのカードで十分だろう。


 さて報酬ももらえたし、そろそろ帰ることにする。もらったお金をポケットにしまい、アイちゃんを探す。

「そう言えばアイちゃんはどこですか?」

「遊びつかれてベッドで寝てるにゃ」

 僕はタミーさんに挨拶をして、かごのベッドごとアイちゃんと家に戻る。タミーさんはアイちゃんと離れたくないようだった。ギルド前まで見送りに来てくれた。もちろんアイちゃんのためにだが。

 おそらくタミーさんは、アイちゃん目当てで夕方ごろまた来るだろう。何か理由をつけて。そんな気がする。


 戻るとマリーさんが食事の用意を済ませていてくれた。

「おかえりなさい」

「ただいま戻りました」

 アイちゃんはまだ寝ている。テーブルの上にそっとベッドを乗せ、手を洗い、僕も席に着く。

「それで午後はどうしましょうか」

「うーん、掃除とか洗濯とかでもしてもらおうかと思ってたんだけど、食料の備蓄が足りないのよね。だから予定変更。午後はアイちゃんを預けて、二人で狩りに行きましょう」

 そうだろうな。今までマリーさん一人分で済んでいたところに、僕とアイちゃん、タミーさんまで加わったのだ。あっという間に食料が減るだろう。

「でも、タミーさんから聞いているかと思いますが、僕は役に立ちませんよ」

「荷物持ちにはなるでしょ? 大丈夫よ、危険なところには行かないから」

 ちょうど運搬力上昇のカードも引けたところだ。荷物持ちなら任せてください。そう言いたかったが黙っていることにする。カードの能力があるとは言え、どう考えても僕の素の能力はこちらの世界の人と比べて低そうだ。見栄を張るのはやめておこう。


 そういったわけで、午後は急遽狩りに行くことになったのだった。



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