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ねこじたトリニティ  作者: ニャンコ先生
第2×2章 猫耳シンクロニシティー
35/39

第35話 イタズラ○ 前編

長すぎるので二話に分けます

説明が多かったり中途半端なところで話が切れてたりしますがご容赦ください

2013.02.28 猫


 この日学校では他に何事もなく、いつもの日常が戻ってきた。少しだけ教室が騒がしかったようだが、それは気のせいだろう。

 俺と委員長のことについて、クラスのみんなは瞬間的に盛り上がったが、落ち着くのも早かった。さすがに高校生になると、こういう色恋の話に慣れてきたということだろうか。もしこれが中学生の時に起きたのなら、短くても数日はからかわれたはずだ。

 もっとも彼ら彼女らが静観している理由については、もう一つ有力なものが考えられる。つまり、これをネタに絡もうとしても、無愛想な俺や委員長が相手ではちょっとやりにくいだろうということだ。それは少しさびしい気もするが、俺としては平穏無事な生活を過ごせる方がありがたい。


 委員長と二人で宿題でもやりながらきちんと話をする、という目標はなんとか達成された。とは言ったもののまだ本題の話はしていない。二人とも口を開かず、ただ黙々とペンを走らせている。既に委員長は数学の課題を終え、英語の予習に取り掛かっている。それも間もなく終わってしまうかもしれない。

 その上ここは俺が想定していた場所ではない。今俺たちは、ゲームの中で一緒に宿題をやっている。ここはプライベートスペースと呼ばれる場所で、ゲームプレイ中に唯一外部との情報のやり取りが許されている場所だ。情報のやり取りというのは具体的に言うと、メール等で連絡を取り合ったり、ネットで攻略情報を調べたり逆に提供したりすることだ。詳しいことは分からないが、ゲームの運営方針でそういったことができない仕組みになっているらしい。

 しかしこの場所だけは特別で、ネットが自由に使える上に多目的スペースとして開放されている。待ち合わせに用いたり、攻略サイトを見て作戦を立てたり、報酬を分配したり、そしてこうしてゲームと関係ないことに使ったりと、常識の範囲でなら好きに使って良いそうだ。現実世界における公園の使い方と同じような認識でいいらしい。

 そういったわけで、ここなら課題のデータを読み込んで勉強ができるのだ。

 とは言え、今のは全部委員長の受け売りで、ここで宿題ができるのを知ったのはつい先程だったりする。ただ一つ気がかりだったのは、ここでやった宿題データを提出しても学校側がそれを認めるのかどうかということだが、それも問題ないらしい。俺は委員長の言葉を思い出す。

『えーとね、筆圧筆勢の高速多重感知データ化、及びそのデータのリアルタイム連動保存、そしてそれをまとめる分散複合文書サーバー、だったかな。他にもあるけれどそういった技術開発のおかげで、誰がいつどこでその課題をやったかがわかるようになったのよ。新入生オリエンテーションの時、そんな説明をしてたわ』

 なにやら難しいことを解説されたが、要はゲーム内でも手書きで宿題ができる、ということらしい。委員長は手馴れた様子で勉強会の準備を整えてくれた。そこから推察すると、おそらく前にも仮想空間を利用して宿題をやったことがあるのだろう。それなら実績もあるのだし、先生から何か言われることはあるまい。


 それはさておき、俺も遅ればせながらようやく課題を終わらせた。今まで話を切り出すタイミングを見計らってきたが、さすがにそろそろ良い頃合だろう。俺は意を決し、視線を机の上から委員長に移す。

「なあ、俺たち、付き合ってる…………のかな?」

「え? 何?」

 しまった、唐突過ぎて耳に届かなかったか。委員長は小首をかしげて俺を見る。おっと、委員長って呼ぶと怒られるのだった。委員長はトラネコさん、トラネコさんはトラネコさんだ。

「えーとほら、今日午前中に学校で……」

 事前にいろいろ言葉を用意していたのものの、それを言おうとすると何だか照れくさい。恥ずかしさで後半の言葉をにごしたが、それでもどうやら通じたようだ。トラネコさんはイタズラがみつかった猫のように首をすくめた後、意外にもぺこりと頭を下げた。

「勝手にあんなこと言っちゃってごめんなさい。クロネコくんが困っているのを見ていたら、見過ごせなくなっちゃったのよ。ううん、あまり言い訳がましいことはやめておくわ。本当にごめんなさい。それで、こんなこと聞くのも失礼かもしれないけれど、クロネコくんはどう思ったのかしら」

 トラネコさんは頭を下げたまま、そうやって二度も謝ってくれた。どうやら深く反省しているようだ。それならば俺もあまり強硬な態度に出るわけにはいかない。予定とはちょっと違うが、軽く注意する程度にとどめておこう。

「ああやって公言するのは、確かにあまり良くなかったと思う。少なくともお互いの気持ちを確認しあってからにすべきだと思うんだ」

 言葉にしてみると言い過ぎた感じがする。それにトラネコさんが折れてくれているのに、俺の方が歩み寄らないのは褒められたことじゃない。気弱な俺はそう思って、そこに一言付け加える。

「………………でも正直に言うと、俺は少し嬉しかった」

 言葉が足らない気もするが充分だろう。その意味するところは伝わったはずだ。もう二言三言付け加えたくなったが、なんとかそれを堪えた。今日は強気で攻めると決めて来たのだが、既に充分弱気になっている。これ以上引くわけにはいかない。引きたい。


 俺の返答に対して、トラネコさんはしばらくの間うつむいていた。少しばかり神妙な空気があたりを包む。

 その雰囲気に負け、やはりもう少し言おうかと考え始めた頃、トラネコさんがゆっくりと顔を上げた。

「ありがとう、クロネコくん。そう言ってもらえると少し気が楽になるわ。わたしね、ごく稀にだけど些細な事柄が許せなくなることがあるの。これは別のゲームでの話だけれど、ちょっと前にモンスターのなすりつけをされたのね。ええと『なすりつけ』っていうのは、簡単に言うとモンスターを他のプレイヤーにけしかけることなの。どうしようもないピンチの時に、失礼を承知で余裕のありそうな人にまかせたり、単に倒すのが面倒くさいから押し付けたりと、それをする理由はいろいろよ。でもそれは決して褒められたことではないわ。ゲームによっては厳しい罰則が設けられていることもあるの。もっともそれを禁止しているゲームは、システム的にそれができないようにプログラムを変更したものが多いけどね」

 想定していたものとは違い、トラネコさんの話は脇道にそれた。しかしながら先ほどまでの張り詰めた空気が、幾分か和らいだ気がする。ここは話の腰を折らずに大人しく聞くことにしよう。それにゲームの話ならこれから役に立つこともあるかもしれない。

 それにしても少しややこしそうな話だ。俺は突っ込んだ合いの手を入れてみることにした。

「逆に言うなら、それができるってことは禁止されていないってことかな」

「例外はあるけれど、大まかに言えばそうね。少しだけならやってもお咎め無し、という感じのところが多いかな。でも基本的に迷惑行為だから、何度も繰り返していると別の罰則でアウトになることが多いみたいだけどね。それにルールで禁止されていないとしても、プレイヤー間での評判は悪くなるわ。だから普通の人はやらないし、クロネコくんもやらない方がいいわよ。もちろんプレイヤー同士の模擬戦とかそういうことになれば、話は別だろうけどね」

 なるほど、と俺はうなずく。こういったゲームに疎い俺にはありがたい解説だ。ありがたいのだが、長くなりそうな話でもある。先ほどまでの緊迫したやり取りでで少し疲れていたということもあり、俺はちょっとだけ気を抜いて拝聴させてもらうことにした。

「話を戻すね。わたしがやってたゲームでは、そういうことはわりとよくあるの。見ず知らずの相手から、なすりつけをされちゃうってことがね。でも注意していても意図せずそうなっちゃうことがあるから、知らず知らずのうちに自分も誰かに迷惑をかけちゃうかもしれない。だからこういうのはお互い様ってことで、一声かけてくれればそれで許せるんだけどね。それに何も言われなくても、普段なら『お行儀の良くない人がいるな』って済ませて気に留めないのよ。だけどその時は、なぜか何もかも許せなくなっちゃったの。しつこく相手を追いかけていって、つかまえて無理矢理謝らせたわ。いつもならそんなことしないのに」


 トラネコさんの話は続く。俺はその話からいろいろなことを学び取ろうと、多方面から詳細な検討をすることにした。




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