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29日.薬指の温度
「指輪が欲しいわ」
「指輪?」
「そう、指輪。宝石なんてはまっていなくていいの。ただ、薬指を彩ってくれるだけでいいの」
「素敵だね」
「ふとした時に目に入るような、アクセントになるもの」
「うんうん」
「私のために作られたような、指に馴染むもの」
「なるほどね」
「私の薬指はどう輝くのかしらね」
「冷たく? それとも暖かく光るのかい?」
「嵌めてみないとわからないわ」
「じゃあ、その指輪は僕が君に贈った方がいいのかな?」
ひやりと、あたたかく。