【百合短編】木漏れ日の君から光芒のキミへ~推し先生(エルフ)に声をかけて頂いたのに保留にしたら推しがストーカーになった~
「…キミがエマくんだね。…3年生、筆記成績はそこそこ、就職先はまだ届け出が出ていないな。…ワタシにとっては幸いだ。…担当直入に言おう。キミには是非、卒業後、この魔法学園の学園長である私の助手となってほしい。…返事を聞かせてくれるかな?」
長身細身の女性が、私を見下ろす。白金のような金髪が波を打ち、光を反射し燐光を纏っているようだ。髪色と同じ長いまつげ、気だるげな垂れ目は翠の色、木漏れ日の緑が私に注がれている。言葉を紡ぐ唇は春の花弁のようで、香る香気は花畑、血液が顔に集中し、クラクラと意識が揺れるのを感じる。
この金色の前だと、黒髪黒目の赤ら顔の自分は木漏れ日に照らされない影の部分だ。
白いシャツに黒いスカート、シンプルだからスタイルの良さがよく分かる。ただ革靴の踵は潰されている。
「…………ほ」
「…ほ?…聞こえなかったのだろうか?……ワタシはキミが欲しいのだが…どうだろう、詳しい話をこれから……」
「…保留でお願いしましゅ!」
私は、後ろを振り向きダッシュでその場を後にした。
「で、入学したての頃から、好き好き言ってた。学園長先生をその場に残して全力ダッシュ、っと」
「う~…ハイ、ソノトオリデス」
「ウチの学園長って、王家にもがっつり関係してるんでしょ?それに学園の創始者。というか、歴史書じゃなくて、おとぎ話にも語られるの英雄さまよね。もしかして、これって不敬罪?」
「やめてよー、脅さないでよー、フレイヤ~」
私は学園テラスに逃げて来たところを、親友に捕まった。
フレイヤ、セミロングの髪は栗色。目の色はより明るいブラウン。胸が大きい。学園の制服、黒いローブとロングスカートを自己流に短めに改造している。規定ギリギリなので、注意も受けない。私より胸が大きい。なのに腹部周りは私より細いのが理不尽だ、女神の天秤は壊れたに違いない。筆記成績もろくに勉強しないのに約100人の中でトップ10入り。効率のいい、そんな友人だった。
「というか、違うよ!私が学園長を好きなのは、学園に入ってからじゃなくて!」
「はいはい、お母さんからおとぎ話を聞いたときに、魔法を自在に操るエルフの魔法使いに憧れたのがきっかけで、お小遣いも写し絵や本、最近ではおとぎ話を元にした同じ舞台に何度も通うくらいなのよね」
「同じじゃない!この前のはもし全員女性だったらのIFで、その前のは子供向けに改変されたやつ!」
「…うっさ」
うんざりした顔の友人が席に着いた。私は対面に座る。
「というか、なんで即決しなかったわけ?そこまで好きなら助手の誘いなんて、小躍りしながら受けてもいいんじゃない?」
「…私じゃふさわしくないもん」
「……………はぁ、あのね。アンタの実技試験の順位は?」
「1位」
「魔力の適正の問題や、属性の不適正で今まで使えなかった魔法はあったかしら」
「ない」
「どの口がふさわしくないもん、だって?」
「でも、魔物との実技研修では転けて、みんなに迷惑掛けるし!筆記は悪いし!」
「効率が悪いのよ。実技研修の時は張り切って前に出ようとするし、試験の勉強をすれば範囲外にまで勉強の幅を広げるし」
「あの時は模擬試験問題の整合性がとれなかったから……」
「意見ならせめて60位になってから言ってくれる?」
「…ぐぅ」
前回筆記78位わたしから、ぐうの音が出た。前回8位のフレイヤは満足げだ。
「じゃあ、なんで保留?断るでもなく」
「次の試験で1位取ったら受けようと思って」
「自分に自信があるのかないのか、はっきりしなさいよね。なんでいきなり1位なのよ」
「実技試験も筆記試験も1位の私なら、受けてもいいかな、って」
「なんで、自らを窮地に追いやってるの?バカなの?」
フレイヤは本気で理解出来ないといった感じで、あきれ顔だ。
「それくらいじゃないと学園長の助手なんて務まらない」
「バカって、私が思う以上にバカだったのね」
「三回もバカって言った!」
「あら、ごめんなさい。賢いエマ。愚かな私を許してくれる?」
隣に来た友人が、手を伸ばして私の頭を撫でてくる。
「……じゃあ、私に勉強を教えて、次の試験まで。一位とったら、勇気、だせるから」
「はぁ…仕方ないわね……。今日から見てあげるわよ」
寮の同室の友人、フレイヤは片目を瞑り私の背中をポンポンと叩いた。
「ありがとう!フレイヤ!」
「…なるほど、そういう事情だったのか」
私の顔の横から、花畑のような香りが香った。耳元で気だるげなのに頭の芯に浸透する声がする。
「「が、学園長!?」」
「…すまない。目の前で逃げられると、つい、追いかけてしまう。…ワタシの悪癖だ」
「ええっと、どこから聞いて居たんです?」
「…なぜ保留にしたか、キミが聞いた辺りだ。…フレイヤくん、キミのレポートは実によく纏められていた。…故におしい、キミ独自の視点があれば、より面白いレポートになっただろう」
「え!見てるんですか、私の試験の時のレポートを学園長が!?」
「…学年10以内のレポートには眼を通すようにしている。……おや、エマくんは?」
「あ、気絶してますね」
「…興味深い反応だな。…私の魔力に反応しているのだろうか?」
「かもですねー」
「はっ……!夢!?」
「…いや、夢ではない。…おはよう、エマくん。キミが寝ている間に魔力を少々調べさせてもらった。…特に異常は見つからなかったので、安心するといい」
救護室で起きると、部屋の角に学園長先生がいた。手記に何かを書き込んでいて、こちらを向いてはいない。
「が、学園長!…って、あれ、なんでそんな遠くに??」
「…はじめは、キミの枕元に居た。…起きたときに瞳を覗いたら再び気絶してしまって、な。……次に、つまり今回は、より離れ、視線をキミに向けない。…これで対話に成功したわけだ」
「ご、ごめんない…」
「…気にしなくていい。…私の魔力に当てられ、体調を崩すものは過去にもいた。…突然、胸を押さえたり息が荒くなったりと」
「いや、それは……」
どう考えてもお麗しい顔の造形のせいだ。もしかして、少しズレている?
「…主に、初対面で起こる現象だ。…何度か話したり、もしくは数ヶ月定期的に顔を合わせることでその症状は収まる。…おそらく耐性の獲得だろう。…もっとも、初対面で逃げられ、2度気絶されたのは……キミが初めてだ。…本当にキミは興味深いな」
こちらに向けられる、翠の瞳と柔らかな微笑み。ダメだ、意識を保て…私!
「…キミの事情については、理解した。…学年一位、という眼に見える結果を、追い求めるのは悪くない。…応援しよう、頑張りたまえ」
「……あ」
その遠ざかる背に、なにも声をかえることが出来ず、見送ることしか出来なかった。
その日、寮にてフレイヤから勉強を習った。
ちなみに、ノートを見せたら、
「なんで、教師の雑談の内容までメモしてるのよ?」
とのお言葉をいただきました。だって、気になったし。
次の日の朝、
「…おはよう、エマくん、フレイヤくんも」
「「が、学園長!?」」
「…昨日と同じ反応だ。…耐性の獲得も順調のようだね。…次は、そうだな、一緒に食事でもどうだろうか」
「ま、まだ早いかと…」
「…そうか、残念だ。…そうだ、昨日の学習範囲でなにか聞きたい事があったら、学園への道すがら解説しよう」
「えっと、それじゃあ……」
あるの日の昼、
「…こんにちは、エマくん」
「学園長!?」
「…驚きが減ったね。いい傾向だ。…私の分析だと、食事は済んでいると思ったが、当たっていたようだ」
「た、確かに今、ごはんは終わって、図書館へ向かう所ですけど。フレイヤはご飯が終わると、いつもどこかに行きます」
「…そうかい。…よければ、キミの次の試験に役立ちそうな参考文献を紹介しよう」
「いいんですか?その、贔屓が過ぎるんじゃ…」
「…ワタシの自由は、真っ先に校則にも職員規則にも組み込んでいる」
「職員規則にも!?」
「…ワタシへの命令権の破棄は、現国家設立時に組み込んだ」
「国ぐるみ!?」
「……今日の午後は、自由学習時間だ。…心配しなくても、学習室の席は部屋の対角の二席を、確保している。いつでも、質問してくるといい。…もちろん、今からワタシの研究室に招待してもいいのだが…」
「ま、まだ早いかと…」
「…そうか、残念だ」
またある日の夜、
「…で、今日で1週間、付きまとわれた感想は?」
「し、心臓が持たない…!」
図書室でじっくり勉強していたら寮の門限ギリギリになってしまった。フレイヤはすでに、大浴場での入浴を済ませている。
「寿命を削ってるわね。ちなみに、『…また明日』って言ってたわよ?ちなみに、明日は休養日。やったわね、きっと一日中アナタの後ろに学園長」
「似てない」
「勉強を見るのはここまでね」
「ごめん、フレイヤ。私のレポートをみてくだい。それから、こちら冷たい果実水です」
「ま、許しましょう。私が読んでる間にアナタも大浴場行って来なさい」
「はーい」
私は気だるい身体を引きずって、大浴場に急いだ。
「はー、生き返るー」
全身の筋肉を弛緩させる。思い出すのは、朝日に照らされる学園長、図書館での理知的な表情。
とうか、本を読むときだけ眼鏡を掛けるのは止めて欲しい。心臓に悪いし、私が近くに来たときに、外しながらこちらを見上げるのは、なんらかの禁止法に引っかかると思う。いや、あの人法律を作る側だった。
「…こんばんは、エマくん」
「あ、学ええええええええええ?!?!?」
「…おかしい。…耐性の獲得率を見誤ったようだ」
女神がいた。きっと女神はこの人をモデルに作られたに違いない。というか、細かい所まで見えない。太陽を見るときと同じだ。眼が焼かれているのだ。いや違う、これ、私の意識が………
「…本当にすまない。エマくん。…すでに距離の問題はクリアしたと誤解して居たようだ」
「あ、あれ?学園長?ここは…」
「ワタシの私室だ」
「…………耐えました」
「…いい子だ。…ちなみに、各方面の連絡は済ませてある、安心するといい」
今は、このベッドに身を沈ませる罪深さに対する罪悪感が意識を保ってくれた。五感を封じる魔法は禁呪
だったけど、解禁されないだろうか。あと、この絶対高額間違いなしのエルフ意匠の、私にぶかぶかの寝間着は誰のだろう。きっとお手伝いさんだ、そうでないと血を見ることになる、私の。
月光が窓辺から差す。
「あの、一つ、いいでしょうか?」
「…なんでも、聞くといい」
「どうして、私だったんですか…?」
聞くのは怖かった。実技試験一位なんて、毎年一人は出る。私以上の適正を持つ人が居たなら、この人の興味が別の人に移ってしまう。木漏れ日は揺れめく。影だった部分が照らされるのは風の気まぐれに過ぎない。
「…………キミが整合性の矛盾を指摘した、前回の模擬試験問題。……作成したのは私だ」
「え…」
「…そう、私はいつも、試験問題は作らない。…教師陣を信じているのでね。…だが、たまに気まぐれに模擬問題を作ることがある。……それは、ワタシが作ったことを秘して、交付される。…教師陣は、私を疑う事はしない。…実際、キミが指摘した後、記入ミスとして発表された」
月光に照らされた、その人は、少しだけ恥ずかしそうに続けた。
「…なんというか、その……見つけて、もらえた気がした、んだ」
かわいい。憧れの人に抱く感想ではない。でも、なんだか、無性に抱きしめたいと思った。
「……それに、ワタシは、キミを見ていた」
「それは、いつ…?」
「…ワタシは、学生が学ぶ姿が好きだ。…戦乱の時代、奪い合うことしかしなかった、種族が、教えあい、助け合っている。…その姿は本当に美しい」
その表情は、慈愛に満ち、そして宝物を自慢するような表情でもあった。今も生きる英雄、彼らの戦いの成果。それが、今のこの学園なのかもしれない。
「…試験期間中は、特にそれが顕著だ。…ワタシは姿隠しの魔法を掛け、図書館を見回る。…キミを見つけたのはそんな時だった」
「その時、私は何を…あ!」
「…そう、基礎的な魔術書の文面をかったっぱしから紙に書き写し、模擬問題とにらめっこ。それを毎日だ。…変わった生徒、そう思ったよ。…そして、その横顔が試験前日に不意に晴れた。……『やっぱり間違ってる!』キミはそう言ったね」
「あ、あー、そんなこともありましたね、あはは」
はっきり覚えてる。司書の目線、周りの冷たい目線も。
「…眩しかった。とても、眩しかったんだ。雲間から覗く太陽のように、朗らかで、綺麗で、可愛らしかった」
それは、きっと、私がおとぎ話の英雄を語る時の表情に似ていたに違いない。
「……その日差しが、私へ向けられていたと知った時の、私の感動が、キミは分かるかい?」
気付けば、頬に手を添えられ、向けられたその翠の瞳は、潤んでいた。なんて、綺麗な色だろう。
「…キミと初めて話した廊下、どれほど平静を保つに苦労したか。背中を見た時の胸の痛み。理由を聞いた時の安堵。……キミは、一体いくつのワタシの初めての感情を奪えば気が済むんだ」
呆れた様に喜んでいる。そんな表情だったと思う。
「……いまだから、白状しよう。…朝の日差しの中の、キミの横顔を盗み見る。…お昼にキミが頼むものと、同じものを頼む。……そんな時、甘い罪悪感に酔っていた」
罪の告白というにはあまりにもささやかなもの、それなのにとても蠱惑的なささやきだった。
「……キミはとても、意地悪だ。……フレイヤくんは名前で呼ぶのに。…ワタシのことは、学園長としか呼んでくれない。…でも、ワタシも勇気が出なかった。……もし、ワタシの名前を呼んでほしいと、頼んで、『保留』になどされたら……ワタシは何をしてしまうか分からない」
目の前の人の手が頬に添えられた手は、顎をなぞる。身体が、ビクリと痙攣した。恐怖にではない、期待に震えたのだ。
「……キミが、欲しい。…狂おしいこの熱を、一体どうすれば納めることが出来るのか。……分からないんだ、エマ……どうか、教えてほしい」
困惑に揺れる表情だった。知らぬ事などない賢者、そう語り継がれる彼女に教えを請われる。
その、甘い熱は脳を埋め尽くす麻薬だった。
「――――さま」
唇は、彼女の名を紡ぐ。童話の中で、そして頭の中で何度も呟いたその名を。
眼の前の困惑が喜びに、いや、甘く蕩けるようなそれは、なにに例えよう。
「……ありがとう、エマ。…ワタシの事を呼んでくれて……。ふふ、でも怖いな。……この為なら、きっとワタシは何でも差し出してしまう。……そうだな、さしあたってはキミにはこの夜を贈ろう」
楽しげな声だ。子供がやっとの思いでおもちゃを手に入れたような。いつの間にか、身体は横たえられた。すでに、自分の意思か、彼女の意思かわからない。
「…エマ、眼を閉じて……ゆっくり力を抜いて……」
そうして、私は眼を閉じた。力を抜くように言われたが、身体は硬直したままだ。それをたしなめるように、背に彼女の手が這う。力が抜ける。心臓は痛いほど高鳴るのに、身体は弛緩してしまう。
「いい子だ。……おやすみなさい、エマ…また、明日」
そして、しばらくした後、規則正しい呼吸音が聞こえてきた。
「……………………………え?」
規則正しい呼吸音がは私の呟きにも乱れない。彼女は、学園長は寝ていた。
(えぇえええええええええええ!?!?!?)
混乱する意識の中、頭の中では冷静に学園長が執筆した各種族の特徴を引用していた。曰く『エルフは長命の為、祖先を残す本能に乏しく、性欲が著しく低い』。
(はああああああああああ!?)
声に出さなかったのは、学園長への配慮か、絶句していた故か。
やがて、振り回された意識は、その継続を放棄した。
試験日、
「……聞いてくれ、フレイヤくん。…最近、エマが口を聞いてくれない。…それどころか、ワタシから逃げている。……なにか知らないだろうか」
「ナンデデスカネ」
「…酷い棒読みだ。…原因さえ分かれば、改善出来るのに」
「あ、もうすぐ試験なんで」
「……そうか。…エマに会ったら……応援していると伝えてくれ」
とぼとぼと、去って行く後ろ姿は、非常に情けなく、哀愁を誘う。罪悪感が疼くが、いい気味だと思う自分もいる。
「ほら、行ったわよ」
「……ありがとう、フレイヤ」
物陰から出てきた私に、フレイヤは怪訝な表情を向けていた。
「いつの間にか、エマくんからエマになってるし、アンタはアンタで避けまくるし…もう、面倒だから聞かないわ。けど、まあ、協力した分の成果、きっちり見せなさいよね」
挑発するような笑み。私はそれに、笑顔で応える。
「うん、絶対一位とってみせる…!」
そして、私は学年二位をとった。一位は、普段勉強しないのに私の勉強を見るため勉強したフレイヤだった。めちゃめちゃ泣いた。
卒業式の日、
「いやー、卒業直前の試験で学年一位!主席卒業!めでたしめでたしね!」
「…………そうね、フレイヤは悪くないもんね」
「うん。あの後、なりふり構わず学園長の下に通い詰めての一位。まさに二人の勝利ですよね!学園長!」
「……ああ、とても充実した数ヶ月だった。…私の研究室にエマの私物もたくさん出来た」
「もう!ありがとうごさいます!二人とも!」
「じゃ、この辺は失礼しようかしら。…大切な話があるだろうし、またね!エマ!」
「うん、またね。フレイヤ!」
フレイヤは、こちらに頑張れと、口で伝えてさっていく。そう、この人に伝えなくては……。
「学園長、大切なお話があります」
ここに木漏れ日はない、陽光が二人を照らしている。
「……実はワタシもなんだ、エマ。……卒業生、筆記成績は第一位。…キミには是非、卒業後、この魔法学園の学園長である私の助手となってほしい。……ワタシはキミが欲しい。…返事を聞かせてくれるかな?」
いつかと同じ、でも少しだけ違う台詞。でも、表情はかなり違う、柔らかな微笑み。思えばあの日、彼女は緊張していたのだと、数ヶ月越しに気付いた。
それは私もだ。やっと返して、逃げ去るように走って、知らず彼女を傷つけた。だから、今は堂々と、こう返せる。
「保留でお願いします!」
「……………………え?…すまない、意味が分からない」
ぽかん、そんな表情だった。
「あの、私、実は実技試験は1位だったんですけど、魔物相手だとつい焦っちゃって…」
「…………なるほど」
「だから、しばらくは冒険者になって、魔物相手でも堂々と出来るように頑張ります!」
「…意味が分からない」
「一人前の冒険者くらいじゃないと学園長の助手なんて務まりませんから!」
「……………」
「あれ?学園長……?た、立ったまま、気絶してる…!」
「このおバカ!」
「え!?フレイヤ!?」
「この上のないバカねエマ!バカエマ!」
「三回も言わなくても…」
「いいから、救護室運ぶわよ…!」
「あ、待って、ここからなら、学園長の研究室が近いわ!合鍵なら私持ってる!」
「……このバカ!」
「なんで…!?」
理不尽にも怒鳴れながら、私達は学園長を研究室へ運んだ。フレイヤは中には決して入ろうとしなかったので、研究室から先は私一人で運んだ。魔力による身体強化を覚えててよかった。
卒業から数日後、冒険者ギルド前にて
「さあ、意外にも実家の許しが早く出たし、今日から私の冒険者生活が始まるのね!」
「…ああ、頑張ろう、エマ」
「学園長!?」
「……親御さんには許しを得ている。ワタシが同行すると言ったら、快く許可を出してくれた」
「学園長の働きかけだったんですか!?というか、学園はどうしたんです?」
「…休学した」
「学園長なのに!?」
「…いざという時のため、引き継ぎ資料は常日頃から準備してある。…職員規則にも則った正式な手続きだ」
「それ作ったの学園長ですよね?というか、学園長、冒険者登録出来るんですか?だって、貴方は伝説の…」
「…問題ない。…今のワタシは、一般エルフのガクエンチョーだ」
「一般エルフのガクエンチョー!?」
「…本名で登録することも考えたんだが、キミに名前を呼ばれると、つい………周囲を灰燼に帰してしまう気がして、な」
「初心者冒険者にあるまじき火力…」
「……すでに、キミの分の登録も済ませておいた」
「どういうことですか!?というか、パーティって、規則だと最低でも3人からじゃ…」
「…規則は変更済みだ。……今のところ、学園主席卒業者の居るパーティ限定ということにした」
「一番の無法者がルールを作っている!?」
「…ワタシが法だ。……ちなみにBランクまでなら一年、Aランクとなると三年の計画を立てている」
「これ冒険かなぁ?」
「…実地調査、フィールドワークを兼ねた完璧な計画だ。…安心してほしい。…週二日休み、年末年始祭日は休暇日に、実家への帰省は年に2度を計画している」
「勤務要件の話をしてます?」
「…実家帰省時はワタシも同行しよう」
「私の実家が聖地になっちゃう!」
「…では、はじめに私の研究室へ、向かうとしよう。…君用の装備は作成済みだ。…少々ドワーフの友に借りを作ってしまったが、流石の出来だ」
「…え?そのドワーフさんって……」
「…ワタシと共におとぎ話にも謳われるドワーフだ」
「初心者に伝説の装備を渡そうとしないでください!もう!なんなんですか!一体!」
「………そう言えば、あの時君は気絶していたな」
懐かしむように彼女は頷き、悪戯っぽく続けた。
「…すまない。目の前で逃げられると、つい、追いかけてしまう。…ワタシの悪癖だ。…許してくれるね?…ワタシの愛しいエマ」
私は全ての抵抗を諦めた。それは、太陽の前では影は無力で、その暖かさに身を委ねるしかない、そんな自然の法則のようだった。
「…ちなみに予算の関係で、道中、宿屋は全て1部屋、ベットは一つの予定だ」
「絶対ウソだ……」
―――完
百合じゃありませんが、長編も書いています。よろしければ、よろしくお願いします。
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