第2章 7人の管理人 忘却と偽りのキャンパス2
彩姫はどうすることもできず、ヌヌたちに簡単な指示だけを与えると、一人で管理人の手がかりを探していた。
その時、背後から声がかかった。
「彩姫。何してるの?」
振り返ると、ピーターが穏やかな表情で立っていた。
「何って....探してる人がいるの」
「誰を?一緒に探すよ?」
彩姫は少し間を置いて、冷たく言った。
「......やっぱり、この世界、何かがおかしい」
ピーターは首をかしげ、少し困ったように笑う。
「なんで......?幸せじゃないか。椿もいて、雪も笑ってて......」
彩姫の目は鋭く光った。
「それは"全部が本物なら"の話だよ」
その言葉は、あたかも氷の刃のように静かに、しかし確実に、空気を冷たく切り裂いた。
突然、彩姫の腕が強く掴まれた。
「...何すんの。離して」
ピーターは少し楽しげに笑いながら、彩姫の視線をじっと受け止める。
「どうして?今が一番楽しいとこだよ?
僕は君が元の世界に戻りたい気持ちが分かんないな」
「は!?何言って...」
その瞬間、彩姫の胸に違和感が走った。
この世界にいる恋も、心斗も、見知った性格のままだ。
なのに
ーーピーターだけは、どこか違う。
その微妙な振る舞い、柔らかな笑み、そして言葉の端々に漂う不可解さ。
彩姫はぎゅっと握られた腕に力を入れながら、冷静に考え込む。
「......この世界、やっぱりおかしい」
違和感は、彩姫の中でじわじわと確に変わりつつあった。
ピーターの態度は
単なる遊び心では片付けられないーー
何か、もっと深い意図が隠されていると。
違和感____________
「まさか…
ピーターが......
今回の依頼者なの......?」
彩姫は震える声で問いかけた。
だが、ピーターは何も答えず、ただそこに立っているだけだった。
「答えて!!」
叫んだその瞬間一ー
「お姉ちゃん」
背後から、ヌヌの声が響いた。彩姫は慌てて振り返ったが、そこに人の気配はなかった。
その瞬間、視界が暗闇に覆われる。
彩姫の体は意識を保てず、静かに地面に倒れようとしていた。
だが、寸前で、ゆっくりとした足取りが背後から近づく。
「......ごめんね」
ピーターは、彩姫をそっと抱き上げ、その腕に優しく支える。
彩姫は何も理解できぬまま、ただ抱かれたまま闇の中に身を委ねた。
その静かな呟きは、彩姫には届かない。
誰も、彼がひとりで抱えた想いに気づくことはなかった。
絵の中の世界一。
空はどこまでも晴れ渡り、柔らかな風が頬を撫でる。木々は生き生きと揺れ、太陽は優しくすべてを照らしていた。ここには争いも悲しみもなく、すべてが"理想”で満ちているように見える。
しかし、彩姫の心だけは違った。
この完璧すぎる景色に、胸の奥はひどく濁り、ざわつき、理想に馴染むことができない。